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2017年11月5日日曜日

東京で日本美術関連の美術展の「はしご」を3館(2017年11月4日)ー 『ゴッホ展』(東京都美術館)・『北斎とジャポニスム』(国立西洋美術館)・『江戸の琳派芸術』(出光美術館)


昨日(2017年11月4日)、東京都内で日本美術関連の美術展の「はしご」を3軒ではなく3館実行。

まずは、上野公園から。『ゴッホ展-巡りゆく日本の夢 Van Gogh & Japan 』(東京都美術館)、2館目はおなじく上野公園内の『北斎とジャポニスム-HOKUSAI が西洋に与えた衝撃』(国立西洋美術館)、そして日比谷に移動して3館目『江戸の琳派芸術』(出光美術館)で締め。

3館も「はしご」すると、軽く1万歩を軽く超えていた。 美術館内の移動は徒歩によるものだから、当然のことながら、かなり歩くことになる。



『ゴッホ展』は、朝の9時半の開館直後であったが、ものすごい 人の数に驚く。ほんと日本人はゴッホ好きが多いのだなあ、と。自分はゴッホそのものよりも、ゴッホが多大な影響を受けた浮世絵がどんなもので、どんな風に影響を受けているのかを知りたかったのだ。

でも、画集でも見たことがなかったゴッホの作品多数を見れたのはよかった。やはり画集やネット画像とホンモノは全然違う。油絵のタッチは側面から見るとよくわかる。ゴッホは、浮世絵に見せられて多大な影響を受けているが、あくまでも油絵を描いているのである。


美術館めぐりのメインは、『北斎とジャポニスム』。こちらも外国人も含めて観客多し。日本の「開国」後に葛飾北斎が西洋美術界に与えた多大な影響を、具体的な作品をつじて探る試み。あらためて北斎について再認識させられる好企画。

画狂人・北斎といえば、ダイナミックな構図の『冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏』が日本だけでなく世界的にも有名だが、もっとも影響を与えたのは、じつは『北斎漫画』なのである。

一般庶民の生態や動植物、その他森羅万象を観察してスケッチした『北斎漫画』という構図集が、さまざまな絵画や彫刻、その他もろもろの美術品や工芸品に幅広く模倣され、創作をインスパイアしてきたという事実。「ありのまま」を描くということ自体が、当時の西洋の美術家たちには衝撃だったのだという。

北斎は「民衆派」として、19世紀の「共和派」が持ち上げたらしい。北斎の影響関係は、21世紀の現在、研究が進むにつれてさらに発見の範囲が広がっているようだ。

ポスターには、後ろ向きで腰のくびれに両手をあてたドガの踊り子と、北斎漫画の後ろ向きの相撲取りのスケッチが併置されているが、こういう影響関係は指摘されて初めてわかることだ。こんな例が、展示されている作品だけでも多数に上るのである。セザンヌもモネもゴーガンも、そしてもちろんゴッホも。

解説によれば、北斎は人体の骨格や筋肉の付き方を接骨から熱心に学んでいたのだという。同時代の西洋美術家が解剖学の知見を取り入れていたのと対比できることだ。

また動植物や自然描写も西洋の美術家たちは北斎から大きな影響を受けている。面白いのは、北欧の画家たちは、日本的な自然描写をすんなりと受け入れたらしい。もともと自然に親しむ傾向の強い北欧では、親和性が高かったようだ。

『図録』(3,000円)が欲しいところだが、大型すぎて参照するには便利ではないので、『ミニ図録』(1,300円)を購入(下図)。こちらなら机上において、いつでも眺めることができるので便利だ。研究用には、論文も収録されている『図録』を購入するとよいだろう。

(ミュージアムショップで購入可能な『ミニ図録』)

『ゴッホ展』と『北斎とジャポニスム』の2つの美術展を見て感じるのは、日本人がゴッホやその同時代の「印象派」などの西洋美術をいち早く受け入れたのは、もともと日本人の感性を油絵や彫刻で表現したものだから、ある意味では当然なんだなあ、と。

時代が立てば立つほど、日本と西洋のインタラクションが深まってきたわけだが、19世紀の西洋の美術家たちが受けた衝撃は、現代人には想像しにくい。あらためて考えてみる必要がありそうだな。

展示品のなかにフランスの海軍将校として来日した作家ピエール・ロティの『お菊さん』(マダム・クイザンテエム、1887年)があったが、すでに100年以上たった現在は、フランス人はマンガやアニメをつうじて日本と日本人のことはよく知っている。フランス人にとっての日本も、日本人にとってフランスも、もはやエキゾチズムの対象ではない。生活レベルに浸透し合っている。

明治時代以来の日本の洋画家たちはフランスを模倣し、同時代のフランスの美術家たちは日本を模倣していた。そして、両者は根本的な個性のちがいは残しつつ、融合していく方向へ向かうのだろうか?



浮世絵だけが江戸の芸術ではない。締めは『江戸の琳派芸術』でいってみる。

「琳派」というのは尾形光琳の系譜に連なる日本美術界の王道ともいえる存在。京都の尾形光琳の没後に、江戸で酒井抱一(さかい・ほういつ)や鈴木其一(すずき・きいつ)といった画家たちが継承して発展させたものが「江戸の琳派」。

王朝美を極限まで追求した「琳派」は、日本美術の極点といってもいいんじゃないかな。17世紀の俵屋宗達、18世紀の尾形光琳、19世紀の酒井抱一と鈴木其一というのがその系譜だ。

『江戸の琳派芸術』は、「八つ橋屏風」など出光美術館が所有するものを中心にしているが、そうでない屏風絵のなかに「はっと息をのむ」ような作品があった。酒井抱一の「青楓朱楓図屏風」(1818年 個人蔵)だ。大胆な構図に、鮮やかなまでの色彩のコントラスト。すばらしい!

庶民的な浮世絵版画が日本国内では消耗品として扱われていたのに、西洋では美術品として受け入れられただけでなく、現在に至るまで熱心なコレクターが存在する。

一方、大名や大寺院など裕福な発注者が作成を依頼した屏風絵は、西洋ではかならずしも人気が高いわけではない。もちろん、屏風絵は高価だからそう簡単にコレクションできるものではないこともその理由であろう。そもそもが「複製芸術」である浮世絵版画とのちがいである。ただし、「琳派」のデザインは西洋にも影響を与えている。日本では美術と工芸は分かちがたく結びついている。

美にかんする意識、つまり美意識というものは、そんなものかもしれないな。日本以外では屏風絵を目にすることはあまりないだろう。そもそもゴールド好きな西欧世界では、おなじく金箔のゴールドさは、際だったちがいとは認識されにくいのかもしれない。

現代に生きる日本人としては、浮世絵も屏風絵も、ともに日本的美意識が表現されたものとして受け取っている。だが、美術館で見るには、浮世絵版画はサイズが小さすぎるのが難点だ。

ともあれ、美術展は単独で鑑賞するのもよし、あるいは時間の限られた海外旅行者のように「はしご」で楽しむのもまたよし、かな?






<関連サイト>

『ゴッホ展-巡りゆく日本の夢 Van Gogh & Japan 』(東京都美術館)
・・2017年10月24日~2018年1月8日

『北斎とジャポニスム-HOKUSAI が西洋に与えた衝撃』(国立西洋美術館)
・・2017年10月21日~2018年1月28日

『江戸の琳派芸術』(出光美術館)
・・2017年9月16日~2017年11月15日




<ブログ内関連記事>

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・・浮世絵だけがアイーチストたちをインスパイアしたのではない!


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