『世界を変える100人になろう』(社会貢献×キャリアデザイン)に参加してきた。
残念ながら「第1部のみ」の参加となった。第1部は、オープニングトークセッション/パネルディスカッションである。
第2部の「ワールドカフェ」は、定員に達したため残念ながら参加できなかった。もちろん、私は「社会起業家」ではないし、その予備軍の若者ではないので、参加したとしても有意義な議論をできたかどうかはわからない。
■「オープニングトークセッション/パネルディスカッション」の内容
イベント第1部の概要は以下のとおりである。
●タイトル:『世界を変える100人になろう』~社会貢献×キャリアデザイン~
●主催:「世界を変える100人になろう」実行委員会
●共催:アメリカン・エキスプレス・インターナショナル,Inc.、株式会社ダイヤモンド社
●日時:2010年9月15日(水)13:00~18:00 (開場12:30~)
●会場:表参道ヒルズ「スペース・オー」(表参道ヒルズ地下3F)
≪第1部≫13:00~15:00
●トークセッション「ソーシャルイノベーションの時代」
新時代を築くために、いま求められるソーシャルイノベーションとは何か。それを実現するための要素について、アカデミックな視点を交えてお話しいただきます。
米倉倉誠一郎(一橋大学イノベーション研究センター長/教授)
ロバート・サイデル(アメリカン・エキスプレス・インターンショナル,Inc [日本] 社長)
●パネルディスカッション「社会問題をビジネスの手法で解決する」
社会貢献に関わる4つの側面(行政、企業、NPO/NGO、社会起業家)
から代表者を招き、各々の立場から「社会貢献は仕事になるのか」、
そして具体的なケース解決について語っていただきます。
パネラー(50音順 敬称略)
佐藤大吾(NPO法人チャリティ・プラットフォーム 代表理事)
高山靖子(株式会社資生堂 CSR部長)
藤原 豊(内閣府参事官《産業・雇用担当》)
山本 繁(NPO法人NEWVERY 理事長)
モデレータ
米倉誠一郎(一橋大学イノベーション研究センター長/教授)
「トークセッション」では、米倉教授はなぜ日本のソーシャル・イノベーションの支援をするのが日本企業ではなくて、外資系企業の日本法人なのか(?)と半ば冗談で、会場の参加者に向けて疑問をもつように促していたが、それはそのとおりだろう。
米国企業のアメックスが日本で社会貢献のサポートをするのは、日本企業のJCBがフランスで社会貢献しているものという喩えは言い得て妙だ。もちろん、米倉教授もアメックスには協力しているので、そのような冗談がいえる関係ではあるのだが。
アメックス日本法人社長のキャリアが面白い。
大学卒業後はテレコム業界に就職、M.B.A.取得後はアメックスに転職、タイ法人の社長としてミャンマーやカンボジアもカバーしていたという。これには親近感を感じた。
サイデル氏は、タイ法人支社長時代に、米国や日本のような先進国とは異なる発展途上国(・・1993年当時はそのとおりだったろう)の「ワーク・ライフバランス」のスタイルに目を開かれた、と。
なお、アメックスの社会貢献については、同社のウェブサイトで紹介されている。
パネルでは、なんといっても実際に実践家として活躍している人たちのナマの発言は面白い。NPO会計については私は知らなかったが、BS(貸借対照表) という概念がないというのはオドロキだ。したがって、資本金という概念がないので、すべて売上げとして計上される PL(収益計算書)しかないのだという、ベンチャー経営者出身の佐藤大吾氏の発言はたいへん示唆に富むものであった。
ただし、後半のケーススタディ(?)のテーマ選択の意味がイマイチよく理解できなかった。
なぜ、「少子高齢化」問題をこの場でディスカッションするのか??
おそらく大学生や20歳台の若者が大半を占めるであろう参加者たちにとって、「少子高齢化」問題は問題として、いったいどこまで認識されているのだろうかと強く疑問に思った。
私自身、「少子高齢化」を問題にするというセンスがまったく理解できないので、パネルの後半は、正直いって退屈なセッションであった。「少子化」は個人の選択の問題であり、問題にするなら「高齢化」とは切り離して考えるべきだろう。だがそれは行政の問題が大きなウェイトを占めるはずなのだが。
若者が取り組むべき社会貢献テーマはもっと他にあるはずではないのだろうか?
■「社会貢献でメシを食う。」ためのキャリアデザインについての私見
参加者は全員、『社会貢献でメシを食う。』(竹井善昭、米倉誠一郎=監修、ダイヤモンド社、2010)という新刊書をお土産としていただいた。
すでに「ダイヤモンドオンライン」で連載中から読んでいたので、本の内容はあらかた知っているのだが、あらためてこの場で簡単に紹介しておこう。
このタイトルはたいへんよい。これは声を大にしていっておこう。
とかく理念だけで語られがちな社会貢献だが、このように形而下の表現で語られると観念論ではなく、地に足の着いたものとなるのがいい。
まあ、ソーシャル・ビジネスと社会貢献的色彩をもった営利事業との境界線はきわめて曖昧なものだから、本を読むよりもまず実践が必要なのではないだろうか・・・
とはいっても、あまりシビアな話ばかりしていると、若者は怖じ気づいてしまうのかな?
キャリアデザインという観点からいえば、若者はまず企業に就職して、組織で仕事を動かすということを、肌身をつうじて体験しておいたほうがいいと私は考えている。その間、プロフェッショナルとしての能力を磨きながら、同時にプロボノなどの形で社会貢献の方面で経験を積むのが、身分的にも安定しているし、一石二鳥といえるのではないだろうか。
ソーシャル・ビジネスに跳び込むのは、それからでも遅くないはずだ。
「急がば回れ」という知恵を若者に教えてあげるのが、年上の人間の役目だろう。あせるな(!)と。
<ブログ内参考記事>
書評 『チェンジメーカー-社会起業家が世の中を変える-』(渡邊奈々、日本経済新聞社、2005)
・・シャーシャルビジネスの事例
書評 『ブルー・セーター-引き裂かれた世界をつなぐ起業家たちの物語-』(ジャクリーン・ノヴォグラッツ、北村陽子訳、英治出版、2010)
・・"Patient Capital" というソーシャルファンドについて
書評 『国をつくるという仕事』(西水美恵子、英治出版、2009)-真のリーダーシップとは何かを教えてくれる本-
書評 『この世でいちばん大事な「カネ」の話』(西原理恵子著・装画・挿画、理論社、2008)
・・グラミン銀行についても触れている
「信仰と商売の両立」の実践-”建築家”ヴォーリズ-
書評 『『薔薇族』編集長』(伊藤文学、幻冬舎アウトロー文庫、2006)-「意図せざる社会起業家」による「市場発見」と「市場創造」の回想録-
成田山新勝寺「断食参籠(さんろう)修行」(三泊四日) (4) 間奏曲-過去の断食参籠修行体験者たち
・・幕末当時は発展途上国であった日本で、主力産業であった農業分野における、農業経営に軸を置いた開発コンサルタントの元祖二宮尊徳について
アマルティア・セン教授の講演と緒方貞子さんとの対談 「新たな100年に向けて、人間と世界経済、そして日本の使命を考える。」(日立創業100周年記念講演)にいってきた
・・同じくベンガル生まれの経済学博士のセン教授は、問題意識を共有
<関連サイト>
bk1の書評サイトに「書評フェア:社会起業家たち」の一冊として、その他の関連本とあわせて紹介されています。
PS
なお、この投稿で 450本目 となった。
感想は陳腐ではあるが「継続はチカラなり」。次の目標は 500本目。一歩一歩着実に歩みを進めていきたい。
(2012年7月3日発売の拙著です)
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