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2009年8月5日水曜日

書評『国をつくるという仕事』(西水美恵子、英治出版、2009)ー 真のリーダーシップとは何かを教えてくれる本




真のリーダーシップとは何かを教えてくれる本

 『国をつくるという仕事』は、元世界銀行南アジア担当副総裁が書いた、貧困撲滅のための戦いの現場体験を描いた回想集。

 「思い出の国、忘れ得ぬ人々」というタイトルで、雑誌『選択』に連載されているときから愛読していた。こうやって単行本としてまとめられ一書となったことは喜びに堪えない。ぜひ多くの人に読んでほしい。


 世銀副総裁の回想といっても、功成り名遂げた人の回想録とはまったく性格を異にする。

 世界銀行のミッションは「貧困なき世界をつくること」、このミッション実現のため、各種のプロジェクトへの融資をつうじて、当該国の民衆の自立のために必要な支援を行うのがその仕事である。加盟国の国民すべてが株主であり、また受益者でもある。
 金融機関として、市場から安く調達した資金を、金融市場が効率的に機能しない発展途上国で、低利の長期融資を実行する。

 著者が責任者としてカバーした担当地域は南アジア、すなわちインド、パキスタン、スリランカ、バングラデシュ、モルディブ、アフガニスタン、ネパール、ブータン、その多くが第二次大戦後、独立を勝ち得た"若い"国々である。


 「国づくり」の中で置いてきぼりにされたのが国民、その中でも大多数を占める貧困層である。貧困問題の解決を行わない限り、ほんとうの「国づくり」からはほど遠い。なぜなら、貧困は人間から希望を奪い、国民としての参加意欲を削いでしまうからだ。

 一部の特権階級が潤うだけでは、国全体としてのチカラが生まれてこない。貧困を撲滅するために行われてきた国際援助が、本来の意図に反して政治家の汚職、腐敗の温床となってきたこともまた事実である。


 世銀は援助機関ではなく、あくまでも金融機関であり、貸し倒れリスクを最小にしなければならない義務がある以上、融資を実行するに当たっては、さまざまなリスク、とくに長期的なカントリーリスクに対する厳しい目も必要とする。

 著者は、マスコミの評価、その国の政治家の説明は決して鵜呑みにせず、自ら農村やスラムに足を踏み入れ、ホームステイし民衆と語らい、貧困問題とその解決策が、かならず「現場」にあることを、つねに確認してきた人である。


 「国をつくるという仕事」は、あくまでも草の根の国民の立場に身をおき、私利私欲を離れた立場から一般民衆のために奉仕するよきリーダー、よき統治(ガバナンス)があってこそ実現する。

 よきリーダーの補佐役を行うのが世銀であり、また著者自身の役割であると認識、問題を直視したうえで、ときには政治家を叱咤し、民衆のリーダーの熱い思いと行動に何度も涙してきた。経済学博士である著者自身が、経済学でいう "Cool head but warm heart" (アタマはクールでココロは暖かい)人なのだ。


 草の根の民間人であれ、一国の最高指導者であれ、よきリーダーの特質とは言行一致していること、あくまでも一般の民衆のために奉仕することを念頭においている人のことだ。

 本書を読んでいて何よりも強く印象に残るのが、ブータンの前国王ジグミ・シンゲ・ワンチュク雷龍王4世である。あるべき理想のリーダー像を示して素晴らしいの一語に尽きる。

 しかしながら、著者はブータンの抱える最大の政治問題である、ネパール系ブータン人難民についても多くのページを割いて言及している。けっしてブータン礼賛には終わらせないところに著者のバランス感覚をみる。


 そしてまた著者は、現場で得てきた貴重な経験を、自らが属する世銀の組織にフィードバックし、ビジョンを共有し、ミッションを組織の隅々にまで浸透させるための「組織文化改革」をやり抜いた。できればこの点をもっと詳述してほしかったとも思う。

 本書は、発展途上国や南アジアに関心をもつ人にも、貧困問題に関心のある人にも、ビジネスパーソンにも、社会起業家にも、ぜひ読むことを薦めたい。

 あるべきリーダシップや、あるべき組織のありかたを考える際に、必ず大きなヒントを与えてくれるはずである。


 
■bk1書評「真のリーダーシップとは何かを教えてくれる本」投稿掲載(2009年8月3日)


<書評への付記>

この本と関係するある講演会について記しておく。


第24回 東京財団フォーラム
┗┛─────────────────────────────
「世界の貧困を考える」をテーマに、途上国における「開発」が持つ問題点や矛盾、さらには「貧困」に対して国際社会や日本はどのような理念を持って何をすべきかなどについて考えます。

【日時】4月15日(水)18:30~20:00
【会場】日本財団ビル2階 大会議室
【テーマ】「世界の貧困を考える」
【スピーカー】西水美恵子 元世界銀行南アジア地域担当副総裁
【モデレーター】加藤秀樹 東京財団会長
http://www.tkfd.or.jp/event/detail.php?id=129

 会社やめてから初めて参加したイベントがこれである。
 現在、カリブ海の英国領バージン諸島に住んでいる西水氏が、たまたま来日した際の講演会に参加したのであった。
 この本はその会場にて2割引で購入したものだ。

 営利目的のビジネス活動と、社会目的の事業活動が、同じ方向に向けて収斂(しゅうれん)していく・・・そういう予感がする。
 あえて社会企業と名乗らなくても、営利のみを目的としたビジネス活動は存在余地がなくなっていくだろう。
 ビジネスパーソンには社会の視点を、社会起業家にはビジネスマインドを。目指す方向は同じである。

 社会生態学者と自称していたピーター・ドラッカーや、マーケティング論の碩学フィリップ・コトラーといったビジネス思想家(business thinker)たちが、非営利組織の経営についての思索と研究を進めていったのは、ある意味、必然的な流れといえる。ただしここでいう非営利組織(Non-profit Organization)は、日本語で言うNPOよりも範囲は広い。

 "青い"理想を語ることは、決して"青く"ない、方法論さえきちんと伴ってさえていれば。そういう時代にやっとなってきたのだ。

 西水美恵子氏は、シンクタンク・ソフィアバンクのフェローの肩書きで日本にも関与している。参考として付記しておく。

(以上)



<関連サイト>

『国をつくるという仕事』公式サイト (英治出版) 

(2014年3月1日 項目新設)


<ブログ内関連記事>
                    
「組織変革」について-『国をつくるという仕事』の著者・西水美恵子さんよりフィードバックいただきました
・・ブログに書いたこの書評に対する著者本人からフィードバックをいただいたこと

書評 『チェンジメーカー-社会起業家が世の中を変える-』(渡邊奈々、日本経済新聞社、2005)-「社会起業家」というコトバを日本に紹介した原典となる本

書評 『ブルー・セーター-引き裂かれた世界をつなぐ起業家たちの物語-』(ジャクリーン・ノヴォグラッツ、北村陽子訳、英治出版、2010) ・・"Patient Capital" というソーシャルファンドについて

『世界を変える100人になろう』(社会貢献×キャリアデザイン)に参加してきた

(2014年8月18日 情報追加)


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