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2010年2月15日月曜日

書評 『『薔薇族』編集長』(伊藤文学、幻冬舎アウトロー文庫、2006)-意図せざる「社会起業家」による「市場発見」と「市場創造」の回想録




著者である伊藤文学氏が39歳のときに創刊した雑誌『薔薇族』

 1971年に誕生したこの雑誌の編集長であり、出版元の経営者であった著者が、二度の廃刊を挟んだこの雑誌の歴史と、読者とともに歩んだ35年間を振り返った回想録的なノンフィクションである。

 初版の単行本は2001年の出版、著者は妻も子もあるノンケ(=ゲイではない人をさすゲイの世界の隠語)だという。

 私自身はゲイではないので、その世界には詳しくないのだが、はるか以前の大学時代、友人から聞いて、はじめてこの『薔薇族』という雑誌が存在することを知った。本屋の店頭で初めて手にとって見たときは、本当に驚いたものだった。世の中にはこんな雑誌があるのか、こんな世界が存在するのか、と。『薔薇族』はゲイ(・・・当時はホモといっていた)を対象とした月刊誌であった。

 だから、失礼ながら興味半分で眺めた、といっても間違いではない。

 ところで、私はこの本をビジネス書として読むことを、ひとつの読み方として提案したい。

 『薔薇族』は、いわば「ライフスタイル・ビジネス」でもある。個人の性的ライフスタイルを軸にして市場をセグメントし、娯楽を中心とした情報発信と啓蒙活動だけでなく、読者どうしの交流活動の「場」を誌面で提供した。

 現在では、こういった性格のビジネスは、媒体を活字メディアである雑誌からインターネットに移行しているが、読者(=お客様)と一緒につくりあげてゆくビジネスの本質には変わりはないといえる。

 著者は、偶然のきっかけから、性の悩みのなかでも特殊な分野であったホモセクシュアルの世界を知り、ニッチマーケットであった処女地(・・・なんだかこの文脈で使うのはへんな感じだが)を発見した。悩みに対するソリューションを提供するという形で市場を発見し、創造したのである。
 
 そして、試行錯誤を続けて手探りで模索しながら、読者とのインターラクションをつうじて、というより読者とともに、ゲイ(=ホモ)を日陰の存在から、日のあたる明るい世界へと解放する手助けをし、「市場拡大」に多大な貢献をしたことになったのである。

 伊藤氏の推定では、100人に6~7人の割合で、ホモセクシュアルの性向の持ち主がいるということだ。

 最初から意図したわけではないだろうが、月刊誌発行を続けてゆくうちに「ソーシャル・ビジネス」としての性格が増大し、ある意味では「社会起業家」のような仕事をしてきたといえるだろう。たとえ、そもそもの初発の動機が金儲けであったとしても。

 だから、ネット時代となった現在でも、温故知新の意味で読んで損はないのだ。消費者を一般大衆して一括りにして考えることが、もはや不可能となって久しい。細分化されたセグメントごとに、ターゲットを絞り込むことが当たり前となった現代において、この書を「市場発見」と「市場創造」のケーススタディとして読むことも可能である。

 もちろん、どんな読み方も可能であり、私の読み方はあくまでも一例に過ぎない。本というのは多様な読み方があっていいものなのだから。


<初出情報>

■bk1書評「意図せざる「社会起業家」による「市場発見」と「市場創造」の回想録」投稿掲載(2010年2月9日)





<書評への付記>

「社会起業家」と「ソーシャル・ビジネス」、そして「意図せざる結果」

 社会起業家(social entrepreneur)というのは、近年は日本でも市民権をえてきたコトバだが、日本人は少し狭く考えすぎているように思われる。純粋ということが大好きな日本人はクソマジメすぎるのではないかな? 社会起業家がみんな聖人君子である必要はない。

 社会起業家は、社会という冠コトバがついているが基本的に起業家であり、企業経営者としての経営感覚がないとつとまらないことに注意を促したい。

 創業動機については、京セラ創業者の稲盛会長がよくクチにする「動機善なりや?」というコトバが有名だが、いわゆる「貧困ビジネス」のような、善意を装っているが明らかに動機不善な事業は論外として、それほど深刻に捉えることはないだろう。

 本書の著者・伊藤文学氏(1932-)のように、まず事業家の直感で採算が取れると踏んだうえで、金儲け目的で始めた人の方が事業として成功する可能性は高いし、結果としてゲイ(=ホモセクシュアル)の人たちの社会的地位の向上に大きく貢献することになったのである。これを社会起業家といわずして何というのだろうか。

 私自身も仕事柄いろんな経営者を見てきたが、成功理由や動機は後付けでもいいと思う。重要なのは、事業を軌道にのせることと、顧客を裏切らずに事業経営を続けることである。

 ニッチ市場を発見し、その市場を大きく拡大させた著者は、本質において実に志の高い人であったことがわかる。この意味で、あえて「社会起業家」による「ソーシャル・ビジネス」の事例(ケース・スタディ)として紹介する理由である。

 伊藤文学氏のコトバをいくつか拾っておこう。いずれも著者の伊藤文学氏が、自らの体験のなかから生まれてきたコトバであるだけに、血の通ったホンモノのコトバだ。いくつか紹介しておきたい。

 社会的には歯牙(しが)にもかけられぬエロ本のおかげで会社の経営が安定し、出版社としての健全性を取り戻すことにもつながったのは何とも皮肉な話だ。ぼくにしてみればエロ出版によって品性を疑われようとも、ビジネスで人間性を疑われるようなことだけはしたくなかった。
 ぼくに出版理念があるとしたら、これに尽きるのである。(P.18)

 親父が口癖のようにぼくに言っていたことがある。
「出版の仕事は、机がひとつ、電話が一本あればできるのだから、絶対に事務所なんか借りるな。社員を使うな。ひとりでやれ。社員を使えば人のために仕事をするようになる」(P.15)


 なお、ゲイ(=ホモセクシュアル)関連の市場規模がいかに巨大なものとなっているかについては、『ゲイ・マネーが英国経済を支える!?』(入江敦彦、洋泉社新書y、2008)を紹介しておこう。なんと英国のゲイ関連市場は18兆円!規模というのだからオドロキだ。「バークレイズ銀行やIBMといった巨大企業が注目し、閣僚やメディアの仕掛け人も生まれはじめた」と出版社による紹介文にある。

 「京都人の秘密もの」のエッセイで有名な京都・西陣出身の著者は、自らゲイであることをこの本のなかでカミングアウトしており、英国人のパートナーとのツーショット写真を公開している。

 ビジネスパーソンであれば、偏見で目を曇らせることなく、ゲイ市場についてもありのままとして捉えてみるべきだろう。

 "経営の神さま"松下幸之助翁ではないが、「素直な心」でもってね。「素直な心」は虚心坦懐に、ということだが、とはいっても、まあしかし、これが難しいんだなあ~。

 幸之助翁はかつて「従業員の雇用を作りだし、納税することが最大の社会貢献」というような内容のコトバを発言しているが、まさにその通りだろう。大企業経営者としては素晴らしい倫理観の表明である。社会生態学者と自称していたピーター・ドラッカーも「企業にとっての利益追求は、自動的に社会的責任の遂行を意味する」と述べていることを付け加えておく。

 動機が善なりといえども、結果として事業活動をつうじて不善をなしてしまう者がいる。一方、動機が善ならざるものであもあっても、結果として事業活動をつうじて善をなす者がいる。

 何よりも事業は軌道に乗せることが社会貢献の第一歩であり、たとえ崇高な理念をもって出発しても事業を破綻させて従業員を路頭にまよわせるようでは社会貢献どころではない。

 事業経営につきものの「行為の意図せざる結果」についても、じっくりと考察を深めたいものだ。
   




PS 読みやすくするために改行を増やした。また<ブログ内関連記事>を新設した。(2014年4月8日)。


<関連サイト>

月刊 『薔薇族』編集長 伊藤文學の談話室 祭
 
     
<ブログ内関連記事>

書評 『チェンジメーカー-社会起業家が世の中を変える-』(渡邊奈々、日本経済新聞社、2005)-「社会起業家」というコトバを日本に紹介した原典となる本

書評 『ブルー・セーター-引き裂かれた世界をつなぐ起業家たちの物語-』(ジャクリーン・ノヴォグラッツ、北村陽子訳、英治出版、2010) ・・"Patient Capital" というソーシャルファンドについて

『世界を変える100人になろう』(社会貢献×キャリアデザイン)に参加してきた

松下幸之助の 「理念経営」 の原点- 「使命」を知った日のこと

「かなまら祭」にいってきた(2010年4月4日)-これまた JAPANs(複数形の日本)の一つである

タイのあれこれ (19) カトゥーイ(=トランスジェンダー)の存在感
・・「かなまら祭」におけるゲイの存在感は大きい

(2014年4月8日 項目新設)






(2012年7月3日発売の拙著です)








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