2012年1月22日日曜日

岩波写真文庫から1958年にでた梅棹忠夫監修の 『タイ』 と 『インドシナの旅』は、『東南アジア紀行』をブログ版としたようなものだ



岩波写真文庫から1958年にでた梅棹忠夫監修の 『タイ』 と 『インドシナの旅』は、『東南アジア紀行』のブログ版のようなものだ。つい最近、この2冊を古書として入手することができた。

現在でも文庫版で読める『東南アジア紀行 上下』には、残念ながら写真が文庫カバーのカラー写真2枚しかない。『東南アジア紀行 上下』(梅棹忠夫、中公文庫、1979 単行本初版 1964) は、"移動図書館" 実行の成果!-梅棹式 "アタマの引き出し" の作り方の実践でもある』 を参照。

梅棹忠夫と大阪市立大学による「東南アジア探検」で撮影された写真の一部は、昨年(2011年)出版された  『ひらめきをのがさない! 梅棹忠夫、世界の歩き方』(小長谷有紀・佐藤吉文=編集、勉誠出版、2011) に収録されているが、調査探検のあとに国民への報告の一環として行われた講演会以外では、この岩波写真文庫での公開が数少ない例外であったようだ。

 『タイ』は正式タイトルは『タイー学術調査-』(梅棹忠夫=監修、大阪市立大学東南アジア学術調査隊=写真、岩波書店、1958)、『インドシナの旅』は『インドシナの旅-カンボジア・ベトナム・ラオス-』(梅棹忠夫=監修、大阪市立大学東南アジア学術調査隊=写真、岩波書店、1958)である。

いずれも総頁数は64頁の小冊子で、最初のページから最後のページまでびっしりと写真が収録されている。

写真につけられた簡潔なキャプションは、現代でいえばブログの文章そのものといっていいだろか。逆に言うと、現在のブログ記事の構造そのものといっていいだろう。

フィールドワークで写真を撮影し、その場で文章で簡単なコメントを書いておく。写真の情報量はきわめて多いので、写真を撮影することじたいが情報生産である。それを知的生産にまでたかめる第一歩が、写真にコメントする作業である。

「思想はつかうべきものである。思想は論ずるためだけにあるのではない」(「アマチュア思想家宣言」『思想の科学』1954年)と主張し、カメラで写真を撮るように思想を論ずるべきだと説いた梅棹忠夫の「思想」の実践そのものといっていいだろう。




これは、タイの首都バンコク近郊のクリーク(水路)の写真とその説明文だが、観光用ではないこういったクリークが1958年にはまだ存在したわけだ。

文字としての記録はもちろん重要だが、たとえモノクロでサイズの小さな写真であっても、画像のもつ情報量は文字とはケタ違いである。いまから50年以上前の東南アジアを写真でみると、変化していないものと、まったく変化してしまっているものとがわかってじつに面白い。

出版社が違うから難しいかもしれないが、中公文庫版の『東南アジア紀行』と岩波写真文庫の『タイ』と『インドシナ』を再編集して一冊本にしたらさぞ面白かろうに、と思ってしまう。どなたか試みていただけないだろうか?

とくに、ベトナム戦争によって破壊される前のインドシナ三国、高度成長で消えてしまうまえのタイの写真はきわめて貴重である。

50年前の名残をさがせばまったくないわけではないものの、やはりいったん消えてしまうと二度ともどっってくることはない。

昔の東南アジアを直接知っているわけではないのでノスタルジーではないのだが、このモノクロ写真はモノクロであるがゆえに、そういった感想を抱かせるものがある。




<ブログ内関連記事>

『東南アジア紀行 上下』(梅棹忠夫、中公文庫、1979 単行本初版 1964) は、"移動図書館" 実行の成果!-梅棹式 "アタマの引き出し" の作り方の実践でもある』
・・表紙カバーの写真2枚を掲示しておいた

書評 『ひらめきをのがさない! 梅棹忠夫、世界の歩き方』(小長谷有紀・佐藤吉文=編集、勉誠出版、2011)・・東南アジア関連の写真も

書評 『梅棹忠夫-知的先覚者の軌跡-』(特別展「ウメサオタダオ展」実行委員会=編集、小長谷有紀=責任編集、千里文化財団、2011)・・東南アジア関連の写真も

書評 『梅棹忠夫 語る』(小山修三 聞き手、日経プレミアシリーズ、2010)

書評 『梅棹忠夫のことば wisdom for the future』(小長谷有紀=編、河出書房新社、2011)

書評 『梅棹忠夫-地球時代の知の巨人-(KAWADE夢ムック 文藝別冊)』(河出書房新社、2011)

書評 『梅棹忠夫-知的先覚者の軌跡-』(特別展「ウメサオタダオ展」実行委員会=編集、小長谷有紀=責任編集、千里文化財団、2011)

梅棹忠夫の幻の名著 『世界の歴史 25 人類の未来』 (河出書房、未刊) の目次をみながら考える

書評 『まだ夜は明けぬか』(梅棹忠夫、講談社文庫、1994)-「困難は克服するためにある」と説いた科学者の体験と観察の記録

『東南アジア紀行 上下』(梅棹忠夫、中公文庫、1979 単行本初版 1964) は、"移動図書館" 実行の成果!-梅棹式 "アタマの引き出し" の作り方の実践でもある

書評 『回想のモンゴル』(梅棹忠夫、中公文庫、2011 初版 1991)-ウメサオタダオの原点はモンゴルにあった!

梅棹忠夫の「日本語論」をよむ (1) -くもん選書からでた「日本語論三部作」(1987~88)は、『知的生産の技術』(1969)で黙殺されている第7章とあわせ読むべきだ

梅棹忠夫の「日本語論」をよむ (2) - 『日本語の将来-ローマ字表記で国際化を-』(NHKブックス、2004)

企画展「ウメサオタダオ展-未来を探検する知の道具-」(東京会場)にいってきた-日本科学未来館で 「地球時代の知の巨人」を身近に感じてみよう!


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