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2011年6月11日土曜日

梅棹忠夫の幻の名著 『世界の歴史 25 人類の未来』 (河出書房、未刊) の目次をみながら考える


 未完に終わった『世界の歴史 25 人類の未来』(河出書房)については、先日のNHK・Eテレで、ETV特集 「暗黒のかなたの光明~文明学者 梅棹忠夫がみた未来~」として取り上げられていた。

 この番組を見逃した人も少なくないと思うので、番組紹介の文章をそのまま引用させていただこう。

2011年6月5日(日) 夜10時30分
ETV特集 「暗黒のかなたの光明~文明学者 梅棹忠夫がみた未来~」

 大阪に国立民族学博物館を創設、日本の民族学研究の礎を築き、比較文明学者として数々の業績をなした梅棹忠夫(うめさお・ただお)が、昨年7月、90歳で亡くなった。梅棹は、大阪と生地京都を根拠地とし、世界中で学術探検を重ね、その知見をもとに戦後の日本社会に大きな影響を与えつづけた「知の巨人」だった。
 20歳からはじまった探検調査は60か国以上。著作は生涯で240冊に及ぶ。斬新な文明論を展開した『文明の生態史観』(1957)、情報産業を文明史に位置づけた『情報産業論』(1963)、ベストセラーとなった『知的生産の技術』(1969)など、その先見性に満ちた著作は、今も多くの人々に読み継がれ、新たな発想の源となっている。
 今春開催の「ウメサオタダオ展」(3/10-6/14国立民族学博物館)に向けて、梅棹の遺した資料が全面的に調査・整理された。その過程で、遺稿や映像、写真などの未公開資料も見つかり、その発想と活動の全貌を知ることができるようになった。
 また今回新たに発見されたのが、未刊行におわり、幻の書ともいわれる「人類の未来」の資料だ。そこには、半世紀近く前に、地球規模のエコロジーの視点から、人類の行く末について数々の予言がなされていた。そしてその先に人類にとっての「暗黒のかなたの光明」を模索する梅棹の姿があった。
 東日本大震災で、私たちの文明世界の価値観がゆらいでいるいま、番組では、梅棹忠夫と交流があった作家・博物学者の荒俣宏さんとともに、独自の文明論をもとにさまざまな予言をなした梅棹忠夫の未完の書「人類の未来」をめぐり、宗教学者の山折哲雄さんや他の識者との対話もまじえて、梅棹忠夫から投げかけられている問いかけを考える。

(*太字ゴチックは引用者(=わたし)によるもの)


 国立民族学博物館(みんぱく)の設立準備で超多忙のため書けなかった本の中身とは、いったいどんなものなのだろうか?

 内容についてみる前に、河出書房の「世界の歴史」シリーズの一冊として刊行される予定だったということに着目しておきたい。

 河出書房の「世界の歴史」シリーズは、企画力のすばらしさに、いまでも読む価値のあるものがあるとわたしは考えている。

 全部を読んだわけではなく、面白そうな巻だけ読んだのだが、わたしが読んだのはいずれも文庫版である。『世界の歴史 18 東南アジア』(河部利夫、河出文庫、1990)、『世界の歴史 22 ロシアの革命』(松田道雄、1990、単行本初版 1970)の二冊である。

 中央公論社の『世界の歴史』が戦後のこの分野ではパイオニアといってよいだろうが(・・その後、文庫化されている)、この時点ではまだ従来の枠組みである、西洋史と東洋史という区分に忠実であったといってよい。これに日本史(≒国史)をくわえて、世界の歴史を三分割するのは、明治時代以来の東大文学部(東京帝国大学)の歴史学の伝統である。

 これに対して、わたしが学んだ一橋大学では、「実学としての歴史学」であると強調され、そもそも西洋史、東洋史、日本史という厳密な区分を行ってこなかった。便宜上、わかれていないでもないが、中間領域で西洋でも東洋でもないビザンツ史などが精力的に研究されてきたし、相互乗り入れは当たり前であった。

 この河出書房版の世界史は、これまた東大の歴史学とは一線を画してきた京都大学の歴史学が執筆陣の中心にいる。

 このシリーズが面白いのは、先にタイトルを出した『世界の歴史 18 東南アジア』がはじめてまとまった一冊として登場したことに代表されることだ。東南アジア以外には、インドを中心とした「中洋」世界をまとまった枠組みとして提示したことにある。

 『世界の歴史 19 インドと中近東』(岩村忍・勝藤猛・近藤治、河出文庫、1990)というタイトルに注目していただきたい。

 インドはアジアではあるが、日本や中国、韓国をふくんだ東アジア世界とは異質の世界である。梅棹忠夫が『文明の生態史観』で指摘したように、そこは西洋でも東洋でもない「中洋」としかいいようのない世界なのだ。「インド世界」はむしろその西側に位置する、いわゆる中近東に近いことは、歴史をみれば明らかなのである。その意味では、現在にいたるまで『世界の歴史 19 インドと中近東』の価値は減じてない。

 『世界の歴史 22 ロシアの革命』(松田道雄、1990 単行本初版 1970)も同様だ。松田道雄氏はロングセラー『育児の百科』(岩波書店)の著書で有名な京都の小児科医。まことに得難いロシア革命史が書かれたものである。まさに企画力の勝利であろう。1970年という時点でイデオロギー的に偏向のないロシア革命史を叙述することがいかに困難であったか、現在からは想像もつかないことだ。

 このほか、会田雄次による『世界の歴史 12 ルネサンス』宮崎市定による『世界の歴史 7 大唐帝国』などがラインアップに並んでいる。

 こんなラインアップだったから、もし『世界の歴史 25 人類の未来』が出版されていたら、間違いなくベストセラーになっただけでなく、ロングセラーになったのではないだろうか?

 なお、『梅棹忠夫-地球時代の知の巨人-(KAWADE夢ムック 文藝別冊)』(河出書房新社、2011)に収録された、元河出書房編集者の小池信雄氏による「幻のベストセラ-『人類の来来』-暗黒のかなたの光明」によれば、京大動物学を代表する今西錦司が、『世界の歴史 1 人類の誕生』が梅棹忠夫との共著になることに難色を示したので、きゅうきょ梅棹忠夫に相談したところ、『人類の未来』というアイデアが瓢箪から駒としてでてきたということだ。

 今西錦司と梅棹忠夫は師弟関係であったとはいえ、「狩猟と遊牧」をめぐる考えには違いがでていたためだという。なにやら、民俗学の世界の柳田國男と折口信夫の関係をほうふつとさせるものがある。梅棹忠夫が影響を受けたのは柳田國男のほうである。

 『世界の歴史』シリーズが、『人類の誕生』ではじまり、『人類の未来』で終わる。もし『人類の未来』が完成していたなら、間違いなくベストセラーになっていただろう。じっさい、刊行がまだかまだかと読者からのクレームが多く出版社に寄せられたという。

 『人類の未来』とは、そのような本になるはずの本だったのだ。

 では、『梅棹忠夫-地球時代の知の巨人-(KAWADE夢ムック 文藝別冊)』(河出書房新社、2011)から、『人類の未来』の「目次(案)」を紹介しておこう。写真版で収められている手書きメモによる目次だが、一部には判読できない文字もある。わたしなりに分かちがちにしておいた。

河出書房 『世界の歴史』 第二五巻

「人類の未来」 梅棹忠夫

プロローグ

第Ⅰ部

第1章 地球的家庭論
 -住宅問題
 -家族とセックス
 -女性の未来
 -有限系としての地球の発見
第2章 文明との競走
 -子々孫々の消滅
 -秩序の崩壊
 -現代の認識
 -情報の時代
第3章 増えることはいいことか
 -人口爆発
 -光合成能力の限界
 -交通戦争
 -遺伝子工学
 -戦争の功罪
 -ヒューマニズムに対する疑問

第Ⅱ部

第4章 欲望とエントロピー
 -地球は打出の小槌ではなかった
 -資源の浪費
 -資源の涸渇
 -廃棄物の処理
 -欲望の解放
 -物と空間の占拠
 -文明の意味
第5章 目標のない環境工学
 -有限性の発見
 -地球のシミュレーション
 -システム・エコロジー
 -大気の進化
 -雪と水 
 -人口氷河
 -地球の実験
第6章 進歩と永遠
 -永遠性の否定
 -永続観怠(?)の基礎
 -進歩という幻想
 -予定調和はなかった
 -科学の本質
 -破滅の諸類型

第Ⅲ部

第7章 分配の矛盾
 -地域と統合性
 -資源分布の不平等
 -生態史観
 -国家の時代
 -生態系の摩擦
第8章 地球国家の挫折
 -戦争の意味
 -弾道兵器と核
 -航空機と航空路
 -地球人の夢
 -大流行病時代
 -統合と分離
第9章 コスモ・インダストリアリズム
 -ホモ・エコノミクスの虚妄
 -能率の問題
 -産業主義
 -経済による地球の再編成
 -地球経済による精神の退廃

第Ⅳ部

第10章 人間存在の目的
 -なぜ「人類」でなければなければならないか
 -目標設定の諸段階
 -人種の意味
 -進化史的存在としての人類
第11章 不信システムとしての文化
 -国民文化の形成-
 -反訳の可能性
 -価値体系の摩擦
 -不信
 -「見知らぬ明日」
 -文化の責任
 -歴史は意味をもつか
 -記憶の悲哀
第12章 できのわるい動物
 -人間の構造
 -情緒の生理
 -エソロジー
 -人間改造の可能性
 -教育は救済になり得るか
 -宗教の終焉

エピローグ
 -エネルギーのつぶし方
 -理性対英知
 -地球水洗便所説
 -暗黒のかなたの光明


 こうやって詳細の目次を書き写してみると、1970年の時点で、現時点で問題になっていることは、ほぼすべて論じ尽くしていることがわかる。しかも、かなり暗い未来図である。

 じっさいに書き下ろされることがなかったとはいえ、SF作家の小松左京ををはじめとするそうそうたる知性とは、そうとうな量の取材とディスカッションを行っており、アタマのなかではすでに構想はできあがっていたようだ。しかし、国立民族学博物館(みんぱく)設立準備という超多忙のため、それにもまして、あまりにも暗い展望にモチベーションを喪失した(?)ということもあったのかもしれない。

 そもそも国立民族学博物館の前身であった大阪万博のテーマは、「人類の進歩と調和」というものであったが、このテーマに反旗をひるがえしたような岡本太郎の「太陽の塔」だけでなく、かげの功労者であった梅棹忠夫じしんも疑問を抱いていたのである。岡本太郎を万博のチーフ・プロデューサーとして推奨したのは梅棹忠夫たちであるという。

 ETV特集によれば、梅棹忠夫は、「科学や知的探求は、人間の業(ごう)であるから制御できない」という意味の発言を1970年の時点でしていたという。自然科学者として出発しながらも、老荘思想の徒であった梅棹忠夫の思想の根源からすれば、当然の結論からもしれない。

 思えば、1970年頃は梅棹忠夫のような発言はけっして異様ではなかった

 有吉佐和子が『複合汚染』(有吉佐和子、新潮文庫、1979、初版1975年)で描いている化学物質による複合汚染という「公害問題」は、まさに日常茶飯のことであったのだ。当時でたローマクラブによる暗い未来図など、進歩がうたわれる反面でかなり暗い未来図が提示されていた時代であった。

 その当時、東京都練馬区に住んでいたわたしは、ひどい煤煙で鼻をダメにしただけでなく、毎日のように「光化学スモッグ注意報」が出て、電光掲示板が小学校の校庭にあるような劣悪な環境で生きていた。しかも、中国の核実験による放射能の雨も浴びている。

 ETV特集は、文明論の観点から、「3-11」以後の日本を考えるための、きわめて重要な視点にみちみちた1時間番組であった。再放送があったらぜひ見るべきだ。

 昨年(2010年)に90歳でなくなった梅棹忠夫氏は、番組では触れられていなかったが、1986年に66歳のときに完全失明し、文字どおりその後の24年間を「暗黒のなか」に生きる人となってしまった。

 失明にいたるまでの経緯とその後については、自分自身を対象にした科学的記録ともいえる『夜はまだ明けぬか』(講談社文庫、1994 単行本初版 1989)に詳しいが、「暗黒のなかの光明」は、「見えない両目」で、おぼろげながらも見ていたのかもしれない。

 強靱な精神力がそうさせたのであろう。安直な希望ではなく、自らを奮い立たせてきた勇気によって。





PS 梅棹忠夫執筆予定の『世界の歴史 25人類の未来』は残念ながら未完に終わってしまった幻の著作だが、その構想を可能な限り再現しようとした試みとして 『梅棹忠夫の「人類の未来」-暗黒のかなたの光明-』(梅棹忠夫、小長谷有紀=編、勉誠出版、2011)として出版されている。このブログでも 2012年1月8日付けの「書評」で取り上げているので、ぜひご参照いただきたい。 (2016年2月9日 記す)。






<ブログ内関連記事>

書評 『梅棹忠夫の「人類の未来」-暗黒の彼方の光明-』(梅棹忠夫、小長谷有紀=編、勉誠出版、2012)-ETV特集を見た方も見逃した方もぜひ


書評 『梅棹忠夫 語る』(小山修三 聞き手、日経プレミアシリーズ、2010)
・・最晩年の放談集。日本人に勇気を与える元気のでるコトバの数々

書評 『梅棹忠夫のことば wisdom for the future』(小長谷有紀=編、河出書房新社、2011)

書評 『梅棹忠夫-地球時代の知の巨人-(KAWADE夢ムック 文藝別冊)』(河出書房新社、2011)

書評 『梅棹忠夫-知的先覚者の軌跡-』(特別展「ウメサオタダオ展」実行委員会=編集、小長谷有紀=責任編集、千里文化財団、2011)

書評 『日本人は爆発しなければならない-復刻増補 日本列島文化論-』(対話 岡本太郎・泉 靖一、ミュゼ、2000)
・・大阪万国博覧会(ばんぱく)から国立民族学博物館(みんぱく)へ。志半ばでともに中心になって推進していた盟友の民族学者・泉靖一が斃れたあとをついだのが梅棹忠夫である。その泉靖一との対談記録で、フランンスで民族学を勉強した岡本太郎が議論をバクハツさせる! 岡本太郎が「太陽の塔」をつくった意図は、じつは梅棹忠夫とも共有していたことが『人類の未来』を貫くトーンからもみてとれる。チーフ・プロデューサーとしての岡本太郎を推薦したのは梅棹忠夫たちである。万博のテーマ館に民族資料を展示するアイデアは岡本太郎によるもので、自ら手がけたという。『行為と妄想』(梅棹忠夫)を参照。


マンガ 『20世紀少年』(浦沢直樹、小学館、2000~2007) 全22巻を一気読み

「生誕100年 岡本太郎展」 最終日(2011年5月8日)に駆け込みでいってきた

書評 『複合汚染』(有吉佐和子、新潮文庫、1979、初版1975年)

書評 『苦海浄土-わが水俣病-』(石牟礼道子、講談社文庫(改稿版)、1972、初版単行本 1968)
・・1970年前後はこういう時代であったのだ。いまの中国のようなものだ


*本日(2011年6月11日)は、「3-11」から3ヶ月。最初の約100日が終わろうとしている。しかし...


梅棹忠夫関連(追加)

梅棹忠夫の『文明の生態史観』は日本人必読の現代の古典である!

梅棹忠夫の幻の名著 『日本探検』(1960年)が、単行本未収録の作品も含めて 2014年9月 ついに文庫化!

書評 『まだ夜は明けぬか』(梅棹忠夫、講談社文庫、1994)-「困難は克服するためにある」と説いた科学者の体験と観察の記録

書評 『人間にとって科学とはなにか』(湯川秀樹・梅棹忠夫、中公クラシック、2012 初版 1967)-「問い」そのものに意味がある骨太の科学論

書評 『梅棹忠夫の「人類の未来」-暗黒の彼方の光明-』(梅棹忠夫、小長谷有紀=編、勉誠出版、2012)-ETV特集を見た方も見逃した方もぜひ

企画展「ウメサオタダオ展-未来を探検する知の道具-」(東京会場)にいってきた-日本科学未来館で 「地球時代の知の巨人」を身近に感じてみよう!
・・「「発見」というものは、たいていまったく突然にやってくるのである」(梅棹忠夫)

(2014年11月5日 情報追加)




(2012年7月3日発売の拙著です)







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