この問題の詳細を知るため、『ルポ プーチンの戦争-「皇帝」はなぜウクライナを狙ったのか』(真野森作、筑摩選書、2018)を読んだ。
毎日新聞の現地特派員が足で稼いだ詳細な現地報告を1冊にまとめたものだ。400ページ近くもある大冊だが、フットワークの軽さと、新聞社に入ってから身につけたというロシア語を駆使しての取材力に驚嘆した。
内戦で破壊されたウクライナ東部の戦闘地域だけでなく、クリミア半島も、ウクライナ危機の一環として発生した「マレーシア航空機撃墜事件」についても現地で取材を行っている。
これらの事件は7年近くたった2021年現在、すでに忘れかけられている事件かもしれないが、事件発生当時の衝撃を思い起こす必要がある。けっして終わった問題ではないからだ。2021年4月現在、ロシアとウクライナの双方が国境付近で大規模な動員を行っており、ふたたび一触即発の危険が高まっている。
現在の日本では、ロシア東欧の情報は、もっぱら英米の英語メディア経由のものが多いが、これは大きな問題だ。英語情報のバイアスに敏感になることはもちろん、英米系メディアに頼らない独自の取材は、じつに重要だ。
だから、紛争地に入るジャーナリストを「自己責任」などといって斬り捨ててならない。むしろ国民はこぞってジャーナリストたちを応援すべきなのだ。
「ウクライナ危機」の2014年以降、ロシアをめぐる状況が大転換したことは記憶にとどめておくべきだろう。 その意味では、現在進行形の事象を探索したルポは、時間がたつと貴重な現代史の証言となる。
この本のことを知ったのは、一橋大学合気道部の後輩からだ。著者の真野森作氏は、その後輩の後輩にあたる。直接の面識はないが、合気道部OBとして、じつに頼もしい存在だ。今後の活躍に期待したい。
目 次序章 戦争がはじまった第1章 謎の覆面部隊第2章 親露派の武装占拠第3章 マレーシア航空機の撃墜現場第4章 タタール、蹂躙された歴史第5章 親露派支配地域の人々第6章 裏切られた戦争終章 皇帝プーチンの戦略
著者プロフィール真野森作(まの・しんさく)1979年、東京都生まれ。一橋大学法学部第三課程(国際関係)卒業。2001年、毎日新聞入社。北海道報道部(札幌、苫小牧)、東京社会部、外信部、ロシアでの語学留学を経て、2013年10月から2017年3月、モスクワ特派員として旧ソ連諸国を担当した。(出版社サイトより)
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(2020年12月18日発売の拙著です)
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