チベット・スピリチュアル・フェスティバル 2009 が、連休中の5月1日から5日間、新宿の常円寺にて開催された。私は初日のみ参加してみた。
内容だが、南インドで再興したタシルンポ寺から来日したチベット仏教僧たちによる、声明、チャム(チベット密教僧による仮面舞儀礼)、砂曼荼羅(マンダラ)作成などである。
タシルンポ寺は、ダライラマについで重要なパンチェンラマの寺、私は1995年にチベット(中国)にいった際に参拝しているが、今回来日のタシルンポ寺は、チベットから脱出した僧侶が再興したもののほうである。
チャム(チベット密教僧による仮面舞儀礼)は静止画像では見たことがあるが、ライブをみたのは今回が初めての経験であった。プロの舞踊家による舞踊ではなく、修行を積んだ密教僧が仮面をかぶり、雅楽のような装束を着て、静かに、また激しく舞う、これは純然たる仏教儀礼なのである。
チャムについては、『モンゴルの仮面舞儀礼チャム-伝統文化の継承と創造の現場から-(ブックレット アジアを学ぼう)』(木村理子、風響社、2007)がもっとも簡単に入手できる文献であり、大いに参考になる。チャムは、モンゴルを含む中央アジアに広がる「チベット仏教文明圏」で行われている。
チベットには1995年に訪問したが、このときはラダック(インド)、ブッダロード(インド)、ネパールをあわせて40日間の旅をした。まだ、モンゴルやブータン、ブリヤート(ロシア)などは訪問していないが、北京のチベット仏教寺院の雍和宮(ようわきゅう)はこれまで2回参拝している。
清朝皇帝はチベット・モンゴル統治政策のため、チベット仏教を大いに利用したため、首都のど真ん中に大規模なチベット仏教寺院が存在するのである。18メートルの木彫り弥勒菩薩立像(一本の木からくりぬいたもの!)は圧倒的だ。
その観点からいうと、現在の中国共産党によるチベット統治策はいささか稚拙の感なきにしもあらずである。清朝時代の版図を維持したいのなら、前王朝の政策を徹底研究すべきであろう。抱き込み政策としては完全に失敗している。清朝皇帝は自らチベット仏教に帰依していた。
もっとも漢民族でかつ宗教を否定する政権である以上、この政策はとりようもない。いまだ清朝の正史が編纂されていないことは、現政権がいまだ確立したものとなっていないことを意味するのだろうか。チベット独立は難しいが、せめて自治権の拡大は認めてしかるべきである。
昨日7日からは、大チベット展という形で、信州の善光寺大門の西方寺でも開催されている。善光寺といえば、昨年の北京オリンピックの聖火リレー出発点となるはずだったのを、若い僧侶たちの反対によって、結果として辞退に至ったことは記憶に新しい。チベットで苦しんでいる仏教徒のことを考えればとして当然のことなのだが、その地でチベット関連のイベントが開催されることは、今年が7年に一回の御開帳ということもあいまって、たいへん意義深い。善光寺御開帳についてはあらためて書くつもり。
チベット・スピリチュアル・フェスティバルは、参加するのは今回が初めてである。AFR-Tokyo (American Forces Radio:横田基地米軍放送)の I'm Hisano Yamazaki with What's Happening outside the Gate という告知放送で知り、ウェブサイトで検索した次第。日本で開催されているイベントをこういう形で知って参加する日本人はあまりいないだろうなあ。
高校時代から当時FENといっていた米軍放送は聴いているが、まあこの国は、米国の「属国」状態から完全に脱していないわけで。とはいえ、現在のチベットよりは、はるかにマシな状態だ。
「チベット密教僧による「チャム」牛と鹿の舞」と題して、YouTube にビデオ映像をアップしました。ご覧あれ(2009年11月18日)
PS 読みやすくするために改行を増やした。(2014年8月21日 記す)
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