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2022年8月8日月曜日

書評『壁の向こうの住人たち ー アメリカの右派を覆う怒りと嘆き』(A.R. ホックシールド、布施由紀子訳、岩波書店、2018)ー リベラル派の社会学者がフィールドワークで描き出した南部の右派の感情と対話の可能性

 
先日のことだが、アメリカ南部に生まれ育ったバーダマン氏による南部ものの著作数冊つづけて読んだ。この著者の語る南部はじつに魅力的で、すでに南部を離れて日本在住数十年になる著者のノスタルジー的感情に充ち満ちた内容であった。

だが、そんな南部もルイジアナ州のニューオーリンズは、2005年にハリケーン・カトリーナの大規模な被害を受けてしまった。その後、どうなっているか気になるものがあった。

そんななか、これは別口だが、『壁の向こうの住人たち ー アメリカの右派を覆う怒りと嘆き』(A.R. ホックシールド、布施由紀子訳、岩波書店、2018)という本があることを知って読み始めた。

UCバークレーの教授でリベラル派の社会学者が、南部の右派の人たちの感情と対話の可能性を探った本だ。基本的に社会学の専門書であるが、一般人が読んでも十分に面白いのは、「参与観察」の手法で現地の社会でフィールドワークを行い、南部に生きる人たちのナマの声を拾い上げているからだろう。

原題は、Strangers in Their Own Land: Anger and Mourning on the American Right, 2016 日本語に直訳すれば、『自分たちの土地の住む異邦人』となる。リベラル派からみたら、「異邦人」以外の何者でもないのが、ディープサウスの住民たちだ。



(参考)
Strangers in Their Own Land: Anger and Mourning on the American Right is a 2016 book by sociologist Arlie Russell Hochschild. The book sets out to explain the worldview of supporters of the Tea Party Movement in Louisiana.


■コアな共和党支持層であるディープサウスに生きる人びと

ホックシールド氏がフィールドワークの対象に選んだ地域は、メキシコ湾に面したルイジアナ州である。

この本を読んでいると、2005年以前に書かれたバーダマン氏の著作が、いい意味でも悪い意味でもノスタルジーの産物であることを、いやというほど思い知らされることになる。アウトサイダーでかつインサイダーという社会学者(あるいは人類学者)のホックシールド氏の視点が存分に発揮されているからだ。


ディープサウス(=深南部)は、もともと社会においてキリスト教の信仰が大きな意味をもつ地帯だが、フランス系住民が多数を占めるルイジアナ州もまた例外ではない。フランス系であっても、カトリックだけではない。福音派のプロテスタントも多いのである。

本書を読んでいると、トランプ現象はあくまでも「結果」であって「原因」ではないことがよくわかる。支持者たちの「感情」をすくい上げたからこそ、熱狂的なトランプ旋風が吹き荒れたのだ。著者は、社会学者デュルケムの古典的著作『宗教生活の基本形態』を援用して、そのありさまを描いている。


■「アイデンティティ・ポリティクス」化するアメリカ南部の「白人中高年層」

アメリカ南部の「白人中高年層」が、草の根保守の運動である「ティーパーティー運動」の担い手になったのはなぜか、その問いが出発点にある。

アメリカ南部の「白人中高年層」は、ある意味では「アイデンティティ・ポリティクス」化しているのである。「白人」でかつ「中高年層」というアイデンティティ。

まじめに地道に生きてきたのに、なぜ自分たちの親の世代を超える「アメリカン・ドリーム」とは無縁になってしまったのか。

1860年代の「南北戦争」で敗者となり、しかも1960年代の公民権運動や対抗文化運動(カウンターカルチャー)のなか、黒人や女性、LGBTのように自分たちの権利を声高に主張することが、はばかられるようになってしまった「白人中高年層」自分たちは、割を食っていると思っているという声に出せない感情。

そんな「感情」が生まれるのは、いったなぜなのか?

著者のホックシールド氏は、人間のもつ「感情」に着目する。「感情の社会学」ともいうべき分野を開拓した現代アメリカを代表する社会学者の一人である。


■ルイジアナ州の「いま」-高度成長期の日本の地方都市と似ている

南部ルイジアナ州は、バーダマン氏の著作では「古き良き南部」が現在に生き続ける土地として、ノスタルジーの対象として描かれている。サザン・ホスピタリティ、美しい自然環境の恵みである海産物をふんだんにつかったケイジャン料理。

だが、現在のルイジアナ州は、所得水準では下から2番目の低さである。そんな環境だからこそというべきか、メキシコ湾の原油掘削基地であることから始まって、石油化学産業の一代集積地帯にもなった。この産業化の流れは、第2次世界大戦後に急速に進展した。

ノスタルジーの世界は、いまや過去の世界のことなのだ。英語版のカバーにうっすら描かれているのが、石油化学産業のコンビナート群である。現実世界に生きる人は、観光産業とは違う。ノスタルジーの世界に浸って生きているわけではない。

石油産業と石油化学産業の集積には、功罪の両面がある。

現地で雇用を創出してきたが、一方では深刻な環境汚染を引き起こしている。ミシシッピ川河口の沼地には有毒化学物質を含んだ汚染水が垂れ流しとなり、自然環境が破壊されて漁業に大きなダメージがもたらされただけでなく、地盤の陥没が発生、住環境にも大きな問題が生まれている。

読んでいると、まるで高度成長期の日本とそっくりではないかと思ってしまう。水俣病もそうだし、イタイイタイ病など、日本の各地で発生した公害病だ。福島第一原発の事故で汚染された状況も、そのなかに加えるべきだろう。

しかしながら、住民たちは環境汚染問題には目をつぶる。現実社会での問題解決に向かわずに、キリスト教への深い信仰に救いを求め、ラプチャー(携挙)を希求する福音派の信者たち。

連邦政府による対策は、過剰な介入であるとして拒否する。環境問題に関心がないわけではないのだが、環境よりも経済を最優先する。自分たちが豊かでなくても、自由主義経済を指示し、小さな政府を志向する。

こういうマインドは、東西両岸のリベラル派から見たら理解不能のようだ。「見えない壁」がつくられ、「分断」が解消不能なものとされ、対話が不能となっている。マスコミの主流であるリベラル派からみたら、おなじ国に住みながら「異邦人」となっているのである。
 
ある意味では、アタマでっかちのリベラル派に対して、自分たちの感情と価値観を重視する人たちなのであろう。この点は、じつは日本もまたおなじである。もしかすると、世界中どこでも似たような状況があるのかもしれない。


■「Cool Head, But Warm Heart」で対話を続けることが大事

本書は、リベラル派の社会学者がフィールドワークで描き出した南部の右派の「感情」と、対話の可能性を探った内容の本だ。
  
社会学者としての視点と、人間としての共感、この2つがあわさって対話が可能であることが示されている。言い換えれば、分析的知性と感情である。

19世紀英国の経済学者アルフレッド・マーシャルの有名なことがある。「Cool Head, But Warm Heart」というものだ。経済学者は、冷静な分析的知性と、暖かい共感の心を持ち合わせなくてはいけないと説いたものだ。

このフレーズは、経済学者以外にもあてはまることを著者は示している。もちろん、学者や研究者などの専門家だけではない、誰もがこのマインドセットを持ち合わせたら、対話は十分の可能なのである。

たとえ、自分とは意見を異にしても、対話の扉を閉ざしてはいけない。


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目 次 
まえがき
第1部 大きなパラドックス
 第1章 心に向かう旅
 第2章 「いいことがひとつ」
 第3章 忘れない人々
 第4章 候補者たち
 第5章 「抵抗する可能性が最も低い住民特性」
第2部 社会的地勢
 第6章 産業ー「米国エネルギーベルトのバックル」
 第7章 州ー地下1200メートルの市場を支配する
 第8章 説教壇とメディアー「その話題は出てこない」
第3部 ディープストーリーを生きる
 第9章 ディープストーリー
 第10章 チームプレイヤ- ー忠誠第一
 第11章 信奉者-黙ってあきらめる
 第12章 カウボーイー平然と受けとめる
 第13章 反乱ー主張しはじめたチームプレイヤー
第4部 ありのままに
 第14章 歴史の試練ー1860年代と1960年代
 第15章 もはや異邦人ではないー約束の力
 第16章 「美しい木があるという」
謝辞
付記A 調査方法について
付記B 政治と環境汚染ーTOXMAPからわかったこと
付記C 右派の共通認識を検証する
訳者あとがき
参考文献/原注


著者プロフィール
A.R. ホックシールド(Hochschild, Arlie Russell)
1940年、米国ボストン生まれの社会学者。カリフォルニア大学バークレー校名誉教授。フェミニスト社会学の第一人者として、過去30年にわたり、ジェンダー、家庭生活、ケア労働をめぐる諸問題にさまざまな角度から光をあてて、多くの研究者に影響を与えてきた。早くから感情の社会性に着目し、1983年には本国で著書『管理する心』(世界思想社)を発表、感情社会学という新しい研究分野を切り開いた。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものに加筆修正)

Hochschild seeks to make visible the underlying role of emotion and the work of managing emotion, the paid form of which she calls "emotional labor." For her, "the expression and management of emotion are social processes. What people feel and express depend on societal norms, one's social category and position, and cultural factors." https://en.wikipedia.org/wiki/Arlie_Russell_Hochschild


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2022年8月7日日曜日

書評『マインド・コントロール』(紀藤正樹、アスコム、2017)ー この実用書を教科書にして「対カルト教育」を高校で行うべきだ

 
「統一教会問題」についての第一人者ともいうべき、いま旬の人である弁護士の紀藤正樹氏の本を読んでみた。 『マインド・コントロール<決定版>』(アスコム、2017)である。2020年8月で第3刷ということは、つまり緊急増版ということなのだろう。  

「安部元首相暗殺事件」は、さまざまな分野で思わぬ波紋を拡げているが、なかでも容疑者が目の敵にしていた統一教会というカルト宗教がらみの話が、「政治と宗教」というテーマにかかわるものとして収拾がつかなくなってきた。 

政治屋どもは、「霊感商法という違法行為を行うカルト宗教だという認識はなかった」としらを切り、「知っていたがそれがなに?」と、いけしゃあしゃあと言いのける。 

統一教会問題が最近なりをひそめていた(ように見えたと錯覚していた)のは、知らないうちに改名していたからか! 改名を認めたのが政権与党であることを知れば、政治屋どもの腐敗ぶりは目に余ると言わざるをえない。 

統一教会がそんな宗教ビジネス組織であることは、国民レベルで「常識」のはずだろう。これほどマスコミで取り上げられたカルト宗教は、1995年にサリン事件をおこしたオウム真理教以外にはないからだ。 

その意味では、この本に書いてあることは、いっけん「常識」の延長線上にあるように思える。

だが、さすがに統一教会のみならず、さまざまなカルト宗教の被害者救済にあたってきた当事者だけに、その経験と知見は大いに傾聴すべきだと感じた。机上の空論ではなく、実際知がにじみでているからだ。 

なかでも「第4章 「脱マインドコントロール」の手法」は、一般市民はよく読んで理解しておくことが、きわめて重要だと感じる。生半可な知識はケガのもと。かえって大きな問題を生み出しかねないからだ。 


■高校で「対カルト教育」を行うことが重要だ! 

「対カルト教育」は、高校で終えている必要がある。各種の詐欺商法対策もふくめて必須の知識というべきだろう。 

高校を卒業して地元で就職し、親子関係や友人関係をそのまま維持する場合は、まだ逃げ道がある。地元に「居場所」があるからだ。相談相手もいるからだ。 

だが、地方出身者が親元を離れて大学に入学する場合は、カルト宗教に対する免疫がないため、いとも簡単にからめとられてしまうことが少なくないのだ。大学に入ったものの、「居場所」を見いだせない孤独な学生がターゲットになりやすい。 

統一教会が「原理研」というかたちで大学キャンパスにはびこっていたことは、1980年代に大学生活を送った人なら知らないはずはない。霊感商法問題や集団結婚がマスコミの話題になる、はるか前のことだ。 

統一教会のことを知ったのは大学に入学してからだ。知り合いに「原理研」に入った者がいて、なんとか脱会させようと説得したこともあった。そのからみで知ったのだ。 

報道によれば、2022年現在でも「原理研」の活動は続いているという。驚くべきことだ。手法がよりソフィストケートされているらしい。

わたしの場合は、統一教会以外のキリスト教系カルト宗教に取り込まれた家族のことを、子ども時代に家族ぐるみの付き合いをつうじて直接知っていたこともあって、ある種の「免疫」があった。だが、こんなケースは一般的ではないだろう。

だからこそ、「対カルト教育」は、高校生本人だけでなく、親子で学習すべきなのである。高校卒業までに「教育というワクチン」を打って「免疫」をつけなくてはならない。

高校生を子どもにもつ親にとっては必読書であると言っておきたい。もちろん教師も必読であることは言うまでもない。

日本国憲法で保証された「信教の自由」とのからみで、子どもたちに自分のアタマで考えさせることが必要だ。 




目 次
プロローグ 「マインド・コントロール」は決して他人事ではない! 
第1章 「マインド・コントロール」とは何か? 
第2章 「霊感商法」のマインド・コントロールの手口 
第3章 「カルト」のマインド・コントロールの手口 
第4章 「脱マインド・コントロール」の手法 
エピローグ 「マインド・コントロール被害」を減らすための提言

著者プロフィール
紀藤正樹(きとう・まさき)
1960年生まれ、弁護士。大阪大学法学部卒業後、同大学院修士課程(憲法専攻)修了。 法学修士。 1990年 第二東京弁護士会に登録。 92年から、日本弁護士連合会消費者問題対策委員会委員幹事を務め、「宗教と消費者部会」「電子商取引部会」の担当副委員長を歴任。(講演依頼プロフィールより)


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2022年8月6日土曜日

書評『山手線で心肺停止!ーアラフィフ医療ライターが伝える予兆から社会復帰までのすべて』(熊本美加、漫画=上野 りゅうじん、講談社、2022)ー 健康診断でまったく問題がなくても・・



著者は、ある朝、山手線の車内で突然意識を失い、転倒して顔面を強打、その時点で「心肺停止」したという。 

幸いなことに、奇跡的に一命を取り留めたものの、「高次脳機能障害」になる。心肺停止期間中に一時的に血流が停止して脳内に血液が循環しなかったからだ。 

そんな壮絶な体験とリハビリを体験した医療ライターによる、体験記と教訓が本書の内容である。

健康診断でまったく問題がなくても、なんらかの兆候はあるはずだという。 

心肺停止ではないが、数年前に突然足が動かなくなって前方に転倒して顔面を強打したことがある。

もしかすると、血流に問題があったかもしれないと疑っているので、著者のことはけっして他人事とは思えなかった。大いに気をつけなくては! 

ちょっとでも気になる人は、読むことを薦めたい。 




目 次
第1章 医療ライターなのに見逃した「胸の痛み」
第2章 人工心肺からの蘇りと脳のダメージ
第3章 高次脳機能障害と診断され、リハビリ病院へ
第4章 社会復帰に向けて、自宅リハビリがスタート
第5章 再びの救急搬送、備えておいてよかったこと



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2022年8月5日金曜日

書評『疑惑の作家「門田隆将」と門脇護』(柳原滋雄、論創社、2021) ー ファクトベースで行われた実力派ノンフィクション作家の検証

 
『疑惑の作家「門田隆将」と門脇護』(柳原滋雄、論創社、2021)という本を読んだ。  ジャーナリストによる実力派ノンフィクション作家の検証本である。その執拗なまでの「ファクト」への迫り方に、執念に似たものを感じた。 

門田隆将(かどた・りゅうしょう)氏は、実力派のノンフィクション作家である。だが、現在ではすっかり右派の論客(?)となってしまった。 著者にいわせれば、さらにフェイクニュース垂れ流しの「デマ屋」に堕してしまったことになる。

たしかに、門田氏のツイッター内容は「新型コロナ感染症」が蔓延し始めた2020年最初まではわたしも見ていたが、その後はまったく見なくなって久しい。 トランプ元大統領の「不正選挙」主張の垂れ流しなど、読むに堪えない内容になっていたからだ。

そんな門田隆将は、もともと「週刊新潮」の記者だったらしい。それがタイトルに登場する門脇護(かどわき・まもる)である。本名である。

この門脇氏が、殺人事件犯人にかんする誤報と名誉毀損の数々を起こしていたことが、著者によって掘り起こされている。 

「週刊新潮」に25年在籍したが最終的に編集長になれなかったのは、そのためであるらしい。そして、50代以降は門田隆将のペンネームでノンフィクション作家となって成功したことで、門脇護の封印に成功していたわけだ。この著者がほじくりだすまでは。 


■実力派ノンフィクション作家としての作品

わたしが読んだ門田隆将氏の作品は下記の3冊である。 山口県光市で起きた一家惨殺事件で一人生き残った若い男性を主人公にした『なぜ君は絶望と闘えたのか 木村洋の3300日』(新潮社、2008)を読んで、この作家のことを知った。これは素晴らしい作品だった。 

その後、「3・11」の福島第一原発の事故を最前線で対応した東京電力のエンジニアを主人公にした『死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の500日』(PHP研究所、2012)を読んだのは、前著の記憶があったからだ。この本もすばらしい作品だった。これはその後、映画『Fukushima50』の原作となった。  

そして、新型コロナ感染症のパンデミックが始まった年に出版された『疫病 2020』(産経新聞出版、2020)を読んだ。かなり早い段階にでたノンフィクションとして、この作品も読んだ。もちろん、医学の専門家によるものではないが、2020年時点で状況を俯瞰するには好著であった。  


「盗用疑惑」は、最高裁でクロ判定がでた作品もある

ところが、わたしが読んだことのない作品で、かなりやらかしているらしいことがわかった。 日航機墜落事故(1986年)を描いた『風にそよぐ墓標 父と息子の日航機墜落事故』(集英社、2010)での「盗用疑惑」は、最高裁でクロ判定が出ている。

つまり、門田隆将氏は遺族が書いた著書からリライトして無断借用していたのである。 この件では、最高裁まで争って門田隆将氏の敗訴となっている。そうだったのか、と。 それは知らなかった。

このほか、山本七平賞受賞の『この命、義に捧ぐー台湾を救った陸軍中将根本博の奇跡』(集英社、2010)でも、参考文献からのリライトしたうえでの無断借用が多数にのぼることが徹底検証されている。

これは巻末の「パクリ疑惑対照表」にまとめられている。この対照表をみたら一目瞭然だ。 最高裁でクロ判決がでた2015年以降、集英社からは1冊も出せていないのは、ある意味では当然だろう。 


■学生時代はリベラル派だった

精力的な執筆によって、実力派ノンフィクション作家としてのブランド確立に成功した門田隆将氏だが、現在の姿は冒頭に記したとおりである。

朝日新聞を執拗に攻撃する門田氏は、もともと学生時代はリベラル派であったらしい(笑)本多勝一を尊敬して中国に行っている。 

作家と作品はイコールではないし、一をもって十を判断するのは公平ではないが、ノンフィクション作家の門田隆将氏の作品にかんしては、是々非々で臨むべきであろう。すばらしい作品もある一方、盗用疑惑に充ち満ちた作品もある、ということを。 

基本的に著者は「門田隆将」こと門脇護氏に対しては厳しい姿勢で臨んでいるが、比較的公平な態度は貫いているといえよう。もちろん、この本じたいも批判的に読むことが必要だ。






目 次
"デマ屋" としての同一人格 ー 「門田隆将」と門脇護 
第1章 最高裁から「盗用作家」の烙印押された前歴
第2章 門田隆将の来歴「週刊新潮」時代の門脇護
第3章 「右派論壇のヒーロー」から「ネトウヨ」への凋落
第4章 「デマ屋」が放ったアメリカ大統領選挙の無数のデマ
第5章 門田隆将ノンフィクションの虚構
第6章 馬に喰わすほどある “言行不一致” 語録集
第7章 山本七平賞受賞作の「大量パクリ疑惑」対照表(角川文庫・37カ所) 
あとがき
主要参考文献

著者プロフィール
柳原滋雄(やなぎはら・しげお)
1965年、福岡県生まれ、佐賀県育ち。早稲田大学卒業、編集プロダクション勤務、『社会新報』をへてフリーのジャーナリスト。政治・社会分野を主な取材対象とする。著書に『カンボジアPKO体験記』『ガラパゴス政党 日本共産党の100年』『沖縄空手への旅』など。(本書奥付より)


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2022年8月3日水曜日

最初の単著出版から10年で10冊の出版を達成! ー この10年を振り返り、あらたな10年へ

 
はじめての単著『人生を変えるアタマの引き出しの増やし方』(こう書房、2012)が出版されたのは2012年7月。それからまる10年が経過した。  

この10年間で合計10冊を出版することができた。ただし、台湾で出版された中文繁体字版2冊と文庫化1冊を含む。 




本というモノは、自分にとってはトゥームストーン(tombstone)だと思っている。墓碑銘(epitaph:エピタフ)が刻まれた石版のようなものだ。 

本は書いているときは現在形として苦しいが(・・うまく書けたときは楽しいが)、いったんできあがってしまうと過去形となる。 
 
本は、文字情報のかたまりであるが(・・画像情報もある)、書籍というかたちのモノとしても存在する。

出版物というモノが1つふえるたびに、人生は確実に終わりにむかっていく。 

「あらたな10年へ」と書いたが、10年後生きているかどうかは自分にはわからない。神のみぞ知る。 

「朝(あした)に紅顔ありて 夕べに白骨となる」。これが世の定めだ。「無常」である。自分も世界も、つねに変化の相のもとにある。 

「心技体」が三位一体でそろっているのは、せいぜいあと数年だろう。 だが、やれるところまではやってみたいと思う。「撃ちてし止まん」。倒れるまで歩き続ける。 

今後もご贔屓のほど、よろしくお願いします。 



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2022年8月2日火曜日

40数年ぶりにスピルバーグ監督の映画『ジョーズ』(1975年)をDVDで視聴 ー すでに古典ともいうべき作品は夏の定番?


40数年ぶりにスピルバーグ監督の映画『ジョーズ』(1975年)をDVDで視聴。124分。この前に『激突』(1971年)をひさびさに見たら、この映画も見たくなったのだ。 

はじめて見たのは、日曜映画劇場か金曜ロードショーかまったく記憶にないがテレビでだった。 ものすごく流行った映画だったからね。この映画を知らない人はいないだろう。 

とはいいながら、映画のディテールなどぜんぜん覚えてなかった。冒頭とラストしか覚えてなかった。泳いでる女性が襲われる冒頭のシーン。あの恐怖感をあおる音楽で盛り上がるやつ。それとラストシーンのちょっと前。まあ、人間の記憶力なんて、そんなものかもしれないな、と。 




余談だが、当時はたしか中学生だったから、この映画のおかげで、動物のアゴは jaw だが、人間のアゴは chin ということを知った。 Jaws と複数形になるのは、上アゴと下アゴの2つがあるから。 

さて本題に戻るが、意外と前半が面白いと感じたのは、実社会でいろいろ苦労してきたからだろう。夏しか稼げない島の経済が最優先の市長と、安全確保が第一の警察とのコンフリクトなど、「経済か安全か」という二項対立をめぐっての「あるある」系の話なので、そうだよなあと納得するわけだ。 

後半は打って変わって、偏屈者の漁師とサメ研究者と警察隊長の3人によるサメの狩りとなる。これはメルヴィルの『白鯨(モビー・ディック)』ヘミングウェイの『老人と海』のテイスト。もちろん、エンタメ色ははるかに濃厚であるが。 

今回ひさびさに視聴してみて、いちばん大きな収穫は、こういうものだ。

ハリウッド映画で海だから、てっきり西海岸のカリフォルニアが舞台だと思い込んでいたのだが、そうじゃなかったのだ。 

アミティ島というのは架空の島だが、東海岸のマーサズ・ヴィニヤード(Martha's Vineyard)で撮影が行われたということ。直訳すると「マーサのぶどう園」となるが、東海岸では有名な別荘地で保養地。『白鯨』でも有名な、鯨で有名なナンタケッlト島にも近い島。 

DVDならではの特典も大いに参考になる。

スピルバーグ自身は、『ジョーズ』は『激突』とおなじコンセプトだと認識している。つまり、人間が追い詰められる恐怖感を描きたかったようだ。そんな話を2000年時点で語っている。さすが苦労して自分が手がけた作品は、細かい点まで記憶にあるわけだ。 

半世紀以上のキャリアをもつ映画人だけに、さまざまなジャンルの映画を製作しているが、初期スピルバーグの大胆不敵な作風には、あらためて感嘆している次第。 

どんな人でもそうだが、20歳代だからできること、30歳だから40歳代にかけての全盛期、50歳代以降の成熟期と、それぞれキャリアの段階に応じて変化がある。初期には、初期ならではの素晴らしさがあるものだ。 

わたしも、かつて米国滞在中に2年連続でカリブ海でダイビングしたことがあるが、サメには遭遇しなくてほんとに良かったと、あらためてこの映画をみながら思った。 




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・・マーサズ・ヴィニヤードに住む金持ファミリーの話もある


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