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2009年10月19日月曜日

タイのあれこれ(9)-華人系タイ人の"キンジェー"(齋)について 





 今年(2009年)は10月18日から26日までの一週間、タイの華人系市民は"キンジェー"に入る。

 キンジェーのジェーは漢字の斎、斎戒沐浴の"齋"、潔斎の"齋"である。キンとはタイ語で食べるという意味。この二つをあわせてキンジェーで、肉食を断ち、菜食を行うという意味になる。

 英語では、キンジェーの一週間を Vegetarian Week とよんでいる。この期間中はバンコク市内でも至る所で、斎(ジェー)と漢字で書いたペナントがいたるところに張り出される。スーパーマーケットでもこの一週間は、齋(ジェー)フードコーナーが設置されることになる。

(「斎」と書いて「ジェー」と読む チャイニーズ・ベジタリアン)

昨年バンコクにいた私は、日頃の不摂生を解消するいいチャンスなので、華人系タイ人にならって自称"キンジェー・マラソン"を実施することとした。この期間中はだれから誘われても酒を飲まず、肉食を断ち、菜食に専念したのだ。



 成果といえば、体重はそれほど減らなかったが、体脂肪が20%を切って、カラダがえらく軽くなったことだ。人間40歳を越えると、意識的に節制することも重要だ。こういう努力があって、はじめて美味いものを食べる喜びも倍加するのだ。


仏教国だがタイ料理の食材には肉が多い

 タイは仏教国とはいえ、食材には意外と肉が多い。これはタイ料理が、ベースにあるインド料理だけでなく、移民として大量に流入した華人が持ち込んだ、中国料理の大きな影響を受けているためである。

 四方を海に囲まれ、しかも暖流と寒流のぶつかる、世界でも有数の漁場に恵まれた日本とは異なり、タイは熱帯に位置しているため、サカナの種類が極端に少ないのである。

 基本的に、タイ民族はメコン水系やチャオプラヤー水系沿いに、雲南方面から南下してきた民族なので、海の魚よりも川魚を好んで食べてきた歴史がある。タイ語で川をメーナームというが、メーは母、ナームは水、つまり"水の母は川"なのであって、母なる海なのではない。海水魚の漁師には南部のマレー系ムスリム住民が多い。

 現在でもスーパーマーケットの生鮮食料品売り場にはナマズがヒゲのついたまま売られている。タイ料理にはナマズ料理が多いが、これはなかなか美味い。ただし、川魚は泥臭いので香辛料が不可欠となるわけだ。メコン河の川魚スープはめちゃ美味い。

 また、ティラピアなどの淡水魚が売られている。ちなみに、ティラピアは国民のタンパク質不足解消のために頭を悩ませていた科学者・現ラーマ9世プーミポン国王に、同じく科学者の今上天皇が皇太子時代にアドバイスし、日本から稚魚を贈ったことが養殖の始まりである。これは知られざるロイヤル・ファミリー間の交流史のひとこまである。

 このように魚の種類が少ないタイでは、日本人が想像する以上に、タンパク質摂取のため肉類を食べる。ブタ肉、牛肉、鶏肉などなんでも食べる。作り置きのタイカレーなど汁物をご飯にかけるぶっかけ飯スタイルが多い。

 お坊さんも、お布施でいただいた料理のなかに肉類があっても食べることになっている。だから栄養たっぷりで、あまりやせているお坊さんを見ることはない。これは道に転がっているイヌも同様だ。

 タイでは、ドイツ企業と合弁の肉製品加工工場があり、ハム、ベーコンなどはドイツの技術指導を受けているのでなかなか美味である。これは以前にもブログで触れたことがある。

 チェンマイなど北部の名産品がソーセージであることは、知る人ぞ知る話であろう。

 こういう食生活を送っていては、カラダにいいハズはないだろう。しかもここ数年、ジャンクフードの食べ過ぎで、肥満体の人間も増えている。


年に一度のベジタリアン・ウィーク

 そこで信仰熱心な華人系市民だけでなく、カラダのことが気にかかるタイ人は、年に一回は菜食生活を送ることになる。

 近年では華人系タイ人だけでなく、一般のタイ人にもこの習慣が広がっているようで(・・といってもタイ人の1/4から1/3はなんらかの形で華人の血が入っているので純粋なタイ人という概念は実際的ではない。国王陛下自身、華人の血を引いている)、この期間中はいたるところで、黄色の齋(ジェー)の文字をみることになるわけだ。

(スーパーマーケットで売っている齋(ジェー)のソーセージ)


 齋(ジェー)の食材として、豆類のタンパク質やコンニャクから作った、"肉もどき"、"魚もどき"、といった商品が販売されている。7-11などのコンビニでは、齋(ジェー)のおかずパンも販売されている。

(コンビニで売っている齋(ジェー)の菓子パン)

 この時期の中華料理店では、齋(ジェー)の料理も提供される。注文する際に、確認してみるとよい。

 これは素菜料理とよばれており、中国の精進料理といってよいだろう。東京・三田の仏教伝道教会併設の中国料理レストラン菩提樹では、中国素菜料理を食べることができる。

 JR田町駅に近いオフィスで働いていた当時、何度も食べに行ったが、野菜と豆腐以外は、味も形もまったく肉魚料理そのもので、味も悪くないので、機会があれば試してみることをお奨めする。昼の定食セットだけでなく、夜の宴会も可能である。


インド系のベジタリアンとの違い

 ベジタリアンといっても世界でいろんなパターンがあるのだが、華人のベジタリアンはインド系のベジタリアンよりはるかに厳しいことが実感できた。

 インドにいくフライトでは、機内食がベジタリアンかノンベジタリアンか必ず確認されるが、私は基本的にベジを注文している。これは基本的に調査目的であるとともに、味もけっして悪くないからだ。牛が神聖な動物であるインドでは、牛乳やヨーグルトといった乳製品はベジタリアンとして許容される。しかし、華人の菜食では乳製品はいっさい御法度である。牛乳も鶏卵もいっさいダメなのだ。

 バンコクにいくフライトでは、サービス低下の著しいTG(タイ航空)は極力避け、空飛ぶ×××のSQ(=シンガポール航空)か、NH(=全日空)を利用していたのだが、とくに全日空でエコノミークラスを利用する際には、必ず事前に申請してベジタリアンに変えてもらっている。理由は、ベジタリアンにしておくとエコノミークラスでも特別扱いしてくれるからだ(!) 

 アジアのベジタリアン・フードについては、アジアを中心とした食文化をテーマにしているフォト・ジャーナリスト・森枝卓士の 『アジア菜食紀行』(講談社現代新書、1998)『週末はヴェジタリアン』(ちくま文庫、2002)が参考になる。

 ベジタリアンというとインドしか思い浮かばない人も、ぜひ中国素菜料理を一回は試してみてほしいと思う。


キンジェーといえば、なんといってもプーケット島なのだ

 キンジェーといえば、なんといってもプーケット島である。プーケットといえば大半の日本人(・・いや世界中の観光客)にとってはビーチ・リゾートだろう。

 ところが、プーケットには、華人系タイ人の奇祭があるのだ。プーケットの"ベジタリアン・フェスティバル"について紹介しておかねばなるまい。

(「キンジェー」期間中のプーケットの華人系奇祭 筆者撮影)

プーケット島は隣国マレーシアのペナン島と同様、もともと錫(すず)鉱山の開発で発展した島であり、華人系人口が比較的多い。中心都市プーケット・タウンは空港の反対側の南端の内陸部にある。

 奇祭といったが、基本は道教を信じる華人の最大の祭である。

 何がすごいといって、潔斎した男性信者たちが、頬(ほお)にナイフや、巨大な串や、想像を絶するさまざまな管の類を刺して、これでもかこれでもかと白装束を着た一般信徒の前を練り歩くのである。

(「キンジェー」期間中のプーケットの華人系奇祭 筆者撮影)

また、鋭利な刃物に舌をつけて鮮血を流しながら練り歩いている信者もいる(・・写真はあまりにもショッキングと思われるのでこのブログでは紹介しませんので悪しからず)。これらが延々と練り歩くのだが、みなトランス状態に入っているので、痛みを感じていないようだ。

 なかには、串を頬にさしたまま、全身に巻き付けた爆竹に火を付けて、大音響を発して白煙を出しながら練り歩く者もおり壮観である。この人たちに比べたら、日本の誇る(?)過激パフォーマンス集団"電撃ネットワーク"も児戯に等しいといわざるをえない。

(「キンジェー」期間中のプーケットの華人系奇祭 筆者撮影)

 串刺しは圧倒的に若い男性信者が多いが、なかには若い女性信者もいる。若い女性が頬に穴をなんか開けてしまっていいのだろうかと心配になるが、一般に女性のほうがシャマン的要素が強いので、本格的な修行者なのだろう。

 観客は圧倒的に華人で、観光バスを仕立ててマレーシアから来ている人たちもいるが、それ以外の観光客は比較的少ない。もちろん緊急事態に備えて、練り歩く信者の後にはパトカーと救急車がついていく。

 キンジェー期間中は、潔斎で身を清めるため、肉食断ちの菜食に加え、飲酒もセックスも禁止である。これは世界中どこでも同じだろう。日本でも神事に臨む際は、少なくとも前夜から潔斎しなくてはならない。

 こんな奇祭を見に行くのは、伊達や酔狂以外の何者でもないだろう。私は、昨年のキンジェー期間中に、バンコクからプーケットに飛んで(・・フライト時間は1時間強)、週末をこの奇祭をみるためだけに滞在した。その間、一回もビーチにはいかず、プーケット・タウンのコロニアル様式の建築物を写真を撮りながら歩き回った。

 関心がある人は、プーケット・ベジタリアン・フェスティバルのオフィシャル・サイト(英語・タイ語)もあるので、参考にするとよいだろう。

 しかし、なぜ菜食期間中にこのようなことをするのかよくわからないが、似たような奇祭は台湾でも童乩(タンキー)として行われている。写真家・加藤敬による写真集 『童乩(タンキー)-台湾のシャーマニズム』(平川出版社、1990)で紹介されているものとよく似ているので、同系統のものなのだろう。

 文献もあまりないので詳しいことはよくわからないのだが(・・これは私が専門研究者でないため文献を探しきれていないのも理由である)、共産化された大陸中国ではすでに失われた道教の信仰が、東南アジアの華人世界にはまだまだ息づいていることは明かである。

 一説によれば、プーケットのキンジェーの練り歩きがもっとも過激であるときく。


タイにける華人系の影響力の大きさ

 タイについてはこのように、華人の世界については、その影響力について無視できないものがある。

 東南アジアでは、現地への同化に唯一成功したのがタイの華人である。日本人が仕事で接するタイ人は、かなりの程度まで華人系が多い。そんなときに、華人の風習一般について知識があると、相互理解も深まるというものである。

 バンコクの華人系タイ人社会には、プーケット華人のような奇祭は存在しないが、キンジェーという菜食の習慣は共通している。

 もちろん、中秋に月餅(げっぺい Moon Cake)を贈る慣習などは、タイに限らず華人世界では全世界共通であることはいうまでもない。


タイのあれこれ (10) につづく



                     



PS 読みやすくするために改行を増やし、写真を大判にしキャプションを付け加えた。またリンクもアップデートしておいた。ただし、本文には手を入れていない。 (2014年1月21日)




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(2014年1月21日、31日 情報追加)







(2012年7月3日発売の拙著です)







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