(ワット・キャット お寺のネコ)
シャム猫だけでなく、そもそもタイではあまりネコを見たことがないんだよなあー。これじゃあブログが書けないぞ!?
■シャム猫のシャムとはタイのこと
シャムとはタイのことだ、といっても問題はない。
タイは1932年の立憲革命によって立憲君主制に移行し、その後実質的な独裁者となったピブーン元帥が国名をシャムからタイに変更した。だから、シャム=タイと考えてよい。
『日・タイ交流600年史』(石井米雄・吉川利治、講談社、1987)によれば、江戸時代から暹羅と書いて、"しやむろ"と読ませていたらしい。日本語のドンブリ(丼)は、地名のトンブリ(Thonburi)から来ている(?)なんて民間語源説もあるくらいだし、実際、戦国時代末期から安土桃山時代にかけての武将が愛した茶器スンガロク焼きはシャムから輸入されたものであった。
明治時代以降これがシャムになった理由は、私は英語の Siam のローマ字読みではないかと推論している。英語だと Siam の発音はサイアームで、これはおそらくタイ語のサヤームの音を比較的に忠実に写したものであろう。明治時代の日本人はどうやら Siam のローマ字読みから、シャムに落ち着いたのではないだろうか。
シャム猫は有名だが、タイが発祥地だということは、知る人はもちろん知っていることだろう。シャムの貴族が愛した高貴なネコ、シャム猫。本来ならロイヤル・ドッグではなくて、ロイヤル・キャットだったはずなのだ。
でも、私はシャム猫をタイで一回も見たことがないのだ。それだけじゃない、ネコはほとんど見たことがない。イヌはくさるほど道に転がっているのに・・・
シャム猫のほかにシャムで始まるものが何かないだろうか、バンコクでビール飲みながら日本人の友人と一つ一つあげていってみたことがある。
まず、シャム猫に、それからシャム双生児、ここまでは何とかなるな。シャムロックは?・・これは違うよ、これは三つ葉のクローバーのことだ、セント・パトリック・デイのアイリッシュのあれだ・・・うーん、これくらいしか思いつかないなあ、くやしい。
この会話が交わされてから1年以上たつ。ふと思いついて、インターネットの wikipedia で調べてみたら、英語の Siamese という形容詞ではじまるコトバはかなりの数があることがわかった。
Siamese most commonly refer to:(Siameseという形容詞が通常あてはまるのは):
The Thai language(タイ語)
The Thai people(タイ人)
Someone or something from Thailand (formerly Siam) (タイ・・以前はシャム・・からきた人やもの)
Siamese (cat) (シャム猫)
Siamese twins (シャム双生児)
Siamese may refer to: (このほかあてはまるのは)
Siamese Crocodile
Siamese mud carp
Siamese algae eater, a species of freshwater fish in the carp family, Cyprinidae.
Siamese Dream, a 1993 music album by The Smashing Pumpkins
Siamese fighting fish, a species of fish from genus Betta.
Siamese Fireback, a national bird of Thailand.
Siamese tigerfish
英語人でも基本的には、シャム猫(Siamese cat)とシャム双生児(Siamese twins)がまず頭に浮かぶのだなあ、と知って一安心。
でも英語を母語としていても、たぶん全部は思いつかないんじゃないのかな。
シャム双生児なんていうと、私が小学生の頃、「学研」の雑誌にこういうネタが大量に載っていたのを思い出す。1970年代前半はオカルト・ブームの真っ最中だったので、シャム双生児はフリークス扱いされていっしょくたにされていたのだ。あの当時はまだ現在みたいに人権感覚がなかったから。
耳で聞いただけの頃は、シャム・ソーセージだと思い込んでいたぐらいだからひどいものだ。ウィンナー・コーヒーのたぐいだと。
ウィンナー・コーヒーの意味は、大学に入ってから自分で飲んでみるまで知らなかったのだ。あーあ恥ずかし。でも、本当はヴィーナー(Wiener)と表記すれば、ウィーン風のとわかるのだが・・・罪作りなネーミング。
日本でも有名になった"ベトちゃんドクちゃん"はタイ人ではなく、ベトナム人である。ベトナム戦争の後期、米国による北爆で使用されたナパーム弾の枯れ葉剤の後遺症で生まれた。米国は原爆だけでなく、枯れ葉剤使用についても謝罪しなくてはならないのではないかね、オバマさん。
■タイにいるのはイヌばかり?
いやいや、まだいっこうにネコについて語ってないぞ・・・。そもそも、タイではネコはあまり見ないんあだなあ。でも書いてみよう。
当時私が住んでいたバンコク市内ラチャダピセーク地区で、日曜日に散歩がてら地元のお寺(ワット)にいってみたことがある。
(ワット・キャット 白黒の寺ネコ)
ラチャダピセーク地区は日本人はまず皆無で、主流の潮州系ではなく、雲南系華人の多く居住する地域である。その寺は、地元のタイ人しか来ないお寺なのでガイドブックにはでてこないし、観光客は皆無である。ローカル・コミュニティにおけるお寺の位置づけについては、いずれ書くつもり。(* タイのあれこれ (16) ワットはアミューズメントパーク として執筆)。
そんなお寺で出会ったのが、この子猫ちゃんたち。上座仏教なのでなんという名前かわからないが、日本でいえば不動明王みたいな、真っ赤に彩色された憤怒の巨大仏像の足もとでスヤスヤ眠る子猫ちゃん。このコントラストが絵になっている。ちっちゃくて可愛いねー。
(ワット・キャット 茶色の寺ネコ)
たぶん捨て猫のようだ。仏教国のタイでは、生き物の処分に困るとお寺に捨ててしまうらしい。お寺なら、お坊さんだけでなく、イヌでもネコも誰かが食べさせてくれるからだ、と。実際、観光客が来るようなお寺でもネコはよくみかけるのである。
イヌもそうだが、南国タイでは、ネコはいつも寝ている。日差しがきついので、日影でじっと動かないでいれば、コンクリートも暑くならないからだろう。人間もプールサイドでは同じ事をしているわけだし。
■爆発的に人気がある日本のネコ
タイでは日本のネコが爆発的に人気がある。
といっても、生きたホンモノのネコではない。そう、ドラえもんにキティちゃん、それになんと招き猫、だ。
ドラえもんがマンガやアニメで、タイに限らずアジアでは絶大な人気を誇ることは、すでにこのブログでも取り上げている。
(♪ 大人も大好き ドラえ~もん
キティちゃんについては、あえていうまでもないだろう。キティちゃん人気はアジアにとどまらず、米国や欧州にまで拡大、蔓延(!)している状況だ。もはやとどまることを知らない勢いである。今後は世界各地で"ご当地キティ"が販売されていくことであろう。
(ゴールドの招き猫はタイのみならず東南アジアで大人気)
招き猫もアジア各地で急速に広がりつつあるが、とくにタイでの人気はすさまじい。もともとタイには女性なのか、オカマなのかわからないが旧来からある招き人形のナン・クワク(nang kwak)があるのだが、招き猫を店頭においた飲食やその他サービス、物販店も含めて非常に増えている。千客万来、という祈願のためであるのは日本とまったく同じ使用方法だ。
私もバンコクで現地法人のオープニング・パーティを開いた際、参加者への引き出物としてタイ側ゲストには招き猫を、日本からのゲストにはナン・クワクを差し上げた。いまでも黄金の招き猫を愛用していただいている会社も多く、私の選択が正かったことをうれしく感じている。
ただ、タイをはじめアジアでは、右手なり左手が電池で動くタイプのプラスチック製のゴールドの招き猫が大半である。ウラを見るとたいていが Made in China とある。日本では標準の、陶器の白い招き猫は残念ながらあまり見かけない。
恐るべし!日本のネコ。
サブカルチャーというものは、政府が上から押しつけるものではない、一般庶民が自分がいいと思うから飛びつくのだ。近年は日本発のものが多かったというのが真相だろう。
ただし、それだけではない感性レベルの共通性が日本人とタイ人のあいだにはあるようだ。ミニチュア好き、フィギュア好きなど、かなりの面が民族性に根ざしたものも多い。これはもっと突っ込んだ検証が必要だが。
とまあ、なぜかタイでは生きてるネコは、お寺でしか見たことがない。ましてや、シャム猫など一度も見たことのない私なのだった。
シャム猫は眼がブルーだというので、一番最初に掲載した眼がイエローの子猫ちゃんは、単なるクロネコ??なのかな。♪クロネコのタンゴ、タンゴ、タンゴ・・・どっちにしろ雑種だろうし。
まあいっか、自分はイヌ派だし。
<付記>
2009年の11月に半年ぶりにバンコクにいった際、やっとシャム猫を見ることができた!
とはいっても、BTS(=スカイトレイン)のラッピング広告である。
キャットフード Me-O の広告。タイだから、シャム猫というわけでもなさそうな・・・(2009年11月18日)
(トトロの「ネコバス」ならぬ「ネコ列車」)
その後、ついにタイでシャム猫を発見!(2010年10月24日) に書いたが、ついにタイ(=シャム)でシャム猫を発見した!
<付記2>
軍鶏と書いて「しゃも」と読む。闘鶏用のニワトリのことだが、この「しゃも」はシャムから来ているというのが定説らしい。シャムといわれていた当時のタイから日本に輸入されたので、「しゃも」と呼ばれるようになったのだと。
ニワトリが家畜化されたのは、現在の中国雲南省のタイ族居住地域のシプソンパンナーであることは、秋篠宮様などの調査研究によって明らかになっているが、闘鶏用のニワトリ自体がタイから伝わったことを知ると、なんだか感慨深いものを感じる。
本の紹介 『鶏と人-民族生物学の視点から-』(秋篠宮文仁編著、小学館、2000) 、そしてラオスのことなど も参照。
(2013年2月15日 記す)
PS 読みやすくするために改行を増やし、小見出しを加えた。写真を大判にしてさらに1枚追加した。 (2014年2月1日)
* タイのあれこれ (11) につづく
<ブログ内関連記事>
ついにタイでシャム猫を発見!(2010年10月24日)
・・タイ(=シャム)にはシャム猫がいた!
タイのあれこれ (8)-ロイヤル・ドッグ
ユーラシア大陸における「馬」は、東南アジアにおいては「象」に該当する
タイのあれこれ (26) タイ好きなら絶対に必携のサブカル写真集 Very Thai (とってもタイ)
・・「招き猫」人気が「招き人形」(ナン・クワク)を凌駕していることが説明されている
「タイのあれこれ」 全26回+番外編 (随時増補中)
三度目のミャンマー、三度目の正直 (4) ミャン猫の眼は青かった-ジャンピング・キャッツ僧院にいく (インレー湖 ③)
(2014年2月1日 情報追加)
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