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"本との闘い"の日々の最新報告である。
あまりにも量が多くて、部屋の中で廃棄すべき本の選別作業もできないので、当面使用する予定のない本や、書類はストーレージに収納することとした。少しでも部屋の使用可能面積を増やさねばならない。
東京都心とは違って、近郊の千葉県では、中古の貨物コンテナを使用したストーレージが多い。
私がいま住んでいる地域でも、道路沿いの一等地にコンテナを二段に積み上げた簡易型の貸倉庫がいたるところにある。景気がよければ、本来はいわゆるロードサイド・ショップとして物販や飲食サービスなどに利用されたはずの一等地も、こう景気が悪くては、それは不可能な話だろう。
東京都心でも、猫の額のような土地を駐車場として仮利用しているケースが多いが、近郊地域では駐車場だけでなく、比較的まとまった広さの土地では、コンテナ利用した貸倉庫として、法人や一般に貸し出されている。
東京都心の貸倉庫は、テナントの確保できないオフィスビルが内部を改装してストーレージとして貸し出すケースがあると聞いているが、土地代の安い近郊では、コンテナを利用したタイプが圧倒的に多い。
貸倉庫は、トランクルームとは似ているが、まったく異なるモデルのビジネスである。トランクルームは顧客の荷物を保管業者が責任をもって預かるサービスだが、貸倉庫はいわば場所貸しに専念するもので、荷物の保管責任は顧客の側にある。
貸倉庫は、中古の貨物用20フィート・コンテナを使用面積に応じて、そのまま使用したり、あるいは二分割(・・この場合は約4畳)、または四等分(・・この場合は約2畳)して、中仕切りを入れて、最低限の自然空調設備をつけて内部を改造し、入り口にシャッターを設置したものである。
海上輸送用の貨物コンテナは全世界で規格が統一されているので(・・例外はJR貨物のコンテナ。旧国鉄は明治時代に英国規格の狭軌 narrow gauge を採用したので、レール幅に合わせた、世界標準より小型のコンテナを使用せざるをえない)、コンテナ置き場の設計も設置も比較的簡単なのだろう。この規格化をさして物流の世界ではコンテナリゼーション(containerization)という。
コンサルティングの仕事で、海上貨物輸送の世界を垣間見る機会があったので若干の知識があるのだが、この20フィート・コンテナ一個分を物流の世界では、1TEUとよんでいる。TEUとは、Twenty Equivalent Unit の略で、たとえば大型の40フィート・コンテナの容量は、2TEUと計算する。
タイの工業団地では、私がもっとも数多く訪問していたのは、関連企業の工場があったアユタヤの Hi-Tech Industrial Estate であるが(・・世界遺産からは離れている)、この工業団地では、日系企業の現地工場では、工場敷地内には NYK(日本郵船)や MOL(大阪商船三井)など海運会社のカラフルな海上輸送用コンテナが積み上げてあった。
輸出用の貨物は、ex factory 段階でそのままコンテナに入れてあるのかと思ったら、後に機会があって聞いてみたところ、ストーレージとして使用しているとのことであった。実際に在庫収納場所として、部下に命じて見積もりを取らせた際に、この事実を知ったのである。
こういう話を知っていたので、日本でもコンテナがストーレージとして使用されていることを知っても特に驚きはなかった。低コストで合理的な行動だと思うのである。
ちなみに今回私が賃貸契約をしたコンテナは、現在の自宅からクルマで5分ほど走った交差点のすぐ近くという、本来なら郊外型レストランで採算がとれそうな好立地である。
2畳分のスペースで、コンテナ一階が月額約1万円、二階は6,000円と価格差がある。一階ならコンテナの前にクルマを横付けにしてそのままコンテナへの荷物の出し入れが容易に行えるが、二階だと階段を使用しなければならないのでたいへん不便だ。この価格差は十分に説明可能だろう。
経営コンサルタント時代、いまから20年ほど昔のことだが、一時期しばらく土地活用コンサルティングに従事していたことがあった。先に記した海上輸送とほぼ同時の仕事である。その頃は、小さなものではロードサイドの土地有効活用提案と事業シミュレーション、大きなものではJR西日本の京都駅改造にともなう、百貨店誘致にかんする商圏調査なども行った(・・昔は京都の商業中心は四条河原町だったのだが、いまでは京都駅の集客力も高い。隔世の感である)。
その頃にくらべると(・・バブル期の前後であった)、日本の経済構造は激変、人口減少状態のもとでは、コンテナ・ストーレージといった土地利用も一過性の形態とはならず、恒久化する可能性も小さくはない。
顧客の立場からいえば、景気が回復したら原状回復して更地にしてコンテナ撤去、という不安が小さいので、安心してストーレージとして使用できるのはメリットである。ほかに有効な土地利用方法がない以上、コンテナ・ストーレージの供給はまだまだ続くだろう。
土地オーナーからみたら、固定資産税が払える程度の賃貸収入があれば、何もしないで放置しておくよりかはましだ、といった程度の考えだろう。必ずしも本意ではないだろうが。
ストーレージは専門業者が管理しており、いわばチェーン化して管理運営を行っている。
ストーレージを使用する顧客としては、本当はモノ自体を減らさなければならないのが筋なのは、いうまでもないのだが。
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