2011年4月5日火曜日
「祈り、かつ働け」(ora et labora)
「祈り、かつ働け」(ora et labora)とは、カトリックのベネディクト修道会で中世以来つかわれているモットーだ。ラテン語である。ora と韻を踏んでいるので覚えやすい。
ここでいう「祈り」とはキリスト教の神に対する祈りだが、「祈り、かつ働け」というモットーは、いまの日本でこそ、もっとも必要なコトバではないだろうか?
フェイスブックやツイッターでは、諸外国から「Pray for Japan」(日本のために祈ろう)の声が、画像が、映像がどんどん贈られてくる。ありがたいことだ。わたしも自分のプロフィール画像には、フェイスブックでもツイッターでも、「Pray fro Japan」バッジを付けている。
だが、「3-11」からすでに 3週間もたっている。まもなく1ヶ月になろうとしているのだ。時間が立つのは実に早い。まさに tempus fugit (時は飛ぶ=光陰矢のごとし)である。
さすがに、もう「祈る」ばかりの時期ではないだろう。
多くの企業のウェブサイトやメルマガのは「一日も早い復興をお祈りします」と、それこそ「免罪符」以上の意味をもたない "無難な"表現が並んでいるが、それよりもほかにすることがあるのではないか?
「祈り、かつ働け」(ora et labora)というフレーズを思いだそう。
いま必要なのは、「祈る」だけではない。そう、「働く」ことなのだ。そしてここで言っている「働く」とは、カラダを動かして働くことを意味している。
私は、カトリックでもキリスト教徒ではない。ごくごくフツーの日本人としてお寺にも神社に参拝する。カトリックの修道士や修道女のように、絶対神への信仰をもちあわせていない。
だが、認めようが認めまいが、「3-11」以後の世の中は、価値観も含めてすべてがひっくり返ってしまったのだ。
「3-11」からの最初の一週間から10日ほどのあいだに、いままで見えていなかったものがすべて見えてしまった。そんな経験をもった人も少なくないはずだ。
大地震によってもたらされたのは、大地に刻まれた断層だけではない。
大津波によって流されてしまったのは、人命や家屋だけではない。
「3-11」以前では当たり前であった常識が、いまやまったく通用しなくなっていることに、一刻も早く気がつかなければならない。
そのことに一刻も早く気がつき、次の行動に移すことが、すべての日本人に求められている。私はそう確信している。
ところで、「祈り、かつ働け」(ora et labora)は、英語だと "Pray and Work" となる。"Play and Work" ではないので念のため。とかく日本人は r と l の音と聞き分けにくいし、発音しわけるのも難しいから(笑)。
やや冗談めいた言い方で恐縮だが、修道士や修道女でなければ、一日も早く "Pray and Work" から "Play and Work" の日常に回復したいという気持ちはみな同じだろう。
実際は、すでに「非常時」に突入しているので、いままでと同じ「日常」を原状回復することは難しいが、いずれにせよ、Work(仕事)抜きにしたら、祈る(pray)にせよ、遊ぶ(play)にせよ、何ごともなりたたない、ということだ。
「働く」ことをつうじて、「3-11」という、この「大転換」の意味を考え続ける必要がある。私も、このブログをつうじて考えていることを、引き続き書いていきたいと思う。
書き続けることは、生き続けることでもあるから。
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ベネディクト派の修道院は、カトリックの修道院のモデルとなったものである。カトリックの修道院は「ベネディクト会則」によって規定されている。
「働くことが・・につながる」という命題は、マックス・ウェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』ばかりが有名だが、ヨーロッパにおける原点は実はここにある。
日本については、ヨーロッパとはまったく関係なく、同様の倫理が養われてきたことは、山本七平の一連の著作に詳しい。
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(2017年5月18日発売の拙著です)
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