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2011年11月29日火曜日

書評 『国債クラッシュ-震災ショックで迫り来る財政破綻-』(須田慎一郎、新潮社、2011)-最悪の事態をシナリオとしてシミュレーションするために


すべてを「想定内」に!-財政破綻のシミュレーション小説とその解説を読んで自分のアタマのなかでシミュレーションしてみる

 『国債クラッシュ-震災ショックで迫り来る財政破綻-』(須田慎一郎、、新潮社、2011)という本が、「3-11」から 3ヶ月たった今年の6月に出版されています。金融問題が専門のジャーナリスト須田真一郎氏が書いた本です。

 内容は、第1部がシミュレーション「2012年日本国債クラッシュ」第2部が 解説「国債暴落」危機の真実になっています。この二つを順番に読むことで、アタマのなかで「最悪の事態」をシミュレーションする構成になっています。

 タイトルになっている「日本国債クラッシュ」とは、日本国債の国債価格の暴落、つまり長期利回り上昇によってもたらされる日本経済破綻のことを指しています。詳細な説明は書籍のほうにゆずりますが、具体的な数値で言えば、日本国債の長期利回りが 2% を越えたらクラッシュし、猛烈な「円安」に反転する恐れがあり、それを回避するためには消費税 "実質" 20%も覚悟しなければならないという議論です。

 現在は「超円高」ですが、これは日本経済のファンダメンタルが良好なためではなく、あくまでもユーロや米ドルなど日本円以外の通貨安の状況があるために相対的に価値が上昇しているに過ぎません。輸出政策においての「通貨安戦争」の敗者になっているのが現在の日本だといえるでしょう。

 日本が財政破綻(=デフォルト)したら日本国の信用も低下することになり為替は一気に「円安」に針が振れることになります。「超円高」が、突然「円安」に転換したらどうなるか? これを日本経済全体、金融機関や企業、そして個人の生活で考えてみようというのが本書の趣旨です。

 おそらく、バブルが崩壊してからタイムラグをおいて生活実感として感じられたのと同様、「国債クラッシュ」による「円安ショッック」を実感するには時間がかかるでしょうが、エネルギーを中心に輸入物価の高騰や公的サービスの縮小による不利益は想像を絶するものになると考えられます。

 シミュレーション小説の設定は 2012年10月ですので、もうすでに1年を切っています。2012年内に「日本国債暴落」が発生するかどうかについては、わたしは可能性としては小さいと考えています。

 ただし、これは計算可能な「リスク」というよりも、政治的な「不確実性」にかかわる話ですので、現時点でははなんともいえません。というのも、国債を扱っている債券ディーラーは、日本政府の動きをモニターして判断材料としているようですから、いかなるキッカケで日本国債に「売り」指令が出るかわからないからです。

 このままの状況が続けば、いまから3年後の2015年以降にはアウトの可能性があるということは、すくなくともアタマの片隅には置いておきたいものです。欧州各国とは違って、国債の引受先の 9割以上が日本国民である日本国債は絶対に問題ないという議論もありますが、何事にも限度というものがあります。わたしは、「国債クラッシュ」の可能性は「近未来」には起こりうる話だと考えます。

 「日本国債クラッシュ」を回避するためには財政健全化が必要ですが、それが経済成長の芽を摘んだのでは本末転倒。しかし、このままでは「国債クラッシュ」への道が進行してしまう恐れがあってじつに悩ましい。国民に増税を受け入れる覚悟ができ、政策として実施されるのか、それとも政治的迷走のなかで意志決定が先送りにされ、手をこまねいている内に財政破綻(=デフォルト)してしまうのか。

 財務官僚や経済官僚、政治家やといった政策立案と政策実行の「当事者」ではない一般の日本国民が行わねばならないことは、ミクロ的には「最悪の事態」を想定して個人生活や個人資産を守ることに努めるとともに、マクロ的な「最悪の事態」を回避するために、増税などの覚悟を国民の一人として受け入れることでありましょう。  

 現時点での可能性がたとえ小さなものであっても、中期的(=3年から5年)、長期的(=5年から10年)にはどうなるかわからないわけですから、すくなくともアタマのなかでシミュレーションだけはしておきたいものです。

 ハッキリしているのは、財政破綻した結果ハイパーインフレとなったとしても、人間は生きているし、生きていかなければならないということです。これはすでに破綻した夕張市などの自治体をみていれば理解できることです。

 「最悪の事態」をイマジネーションすることによって、「想定外」を一つでも減らしておくのが、その時になって狼狽しないためには不可欠ですね。こういうときには、いわゆる「専門家」ほど当てにならないのは、「3-11」でわれわれがいやというほど見たとおりです。ただし「杞憂」しすぎるのも禁物でしょう。

 世の中はなるようにしかならないというのもまた事実です。これは個人の信念や願望とはまったく関係ありません。

 そうなったらなったで、勇気をふるって生きる道をさぐる。最終的にはこういうことになるのかもしれません。エリック・ホッファーが言うように、あてにならない希望ではなく、確実な勇気をもって。






目 次 

はじめに 震災でいよいよ現実味を増す「最悪のシナリオ」
第1部 シミュレーション「2012年日本国債クラッシュ」
第2部 解説「国債暴落」危機の真実
あとがきにかえて


著者プロフィール

須田慎一郎(すだ・しんいちろう)

1961年東京生まれ。日本大学経済学部を卒業後、金融専門紙、経済誌記者などを経てフリージャーナリストとなる。民主党、自民党、財務省、金融庁、日本銀行、メガバンク、法務検察、警察など政官財を網羅する豊富な人脈を駆使した取材活動を続けている。週刊誌、経済誌への寄稿の他、「サンデー!スクランブル」、「ワイド!スクランブル」、「たかじんのそこまで言って委員会」等TVでも活躍(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。



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自分のアタマで考え抜いて、自分のコトバで語るということ-『エリック・ホッファー自伝-構想された真実-』(中本義彦訳、作品社、2002)



 



(2012年7月3日発売の拙著です)







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