「アタマの引き出し」は「雑学」ときわめて近い・・日本マクドナルド創業者・藤田田(ふじた・でん)に学ぶものとは?

◆「アタマの引き出し」つくりは "掛け算" だ : 「引き出し」 = Σ 「仕事」 × 「遊び」
◆酒は飲んでも飲まれるな! 本は読んでも読まれるな!◆ 
◆一に体験、二に読書、その体験を書いてみる、しゃべってみる!◆
◆「好きこそものの上手なれ!」◆

<旅先や出張先で本を読む。人を読む、モノを読む、自然を読む>
トについてのブログ
●「内向きバンザイ!」-「この国」日本こそ、もっとよく知ろう!●

■■ 「むかし富士山八号目の山小屋で働いていた」全5回 ■■
 総目次はここをクリック!
■■ 「成田山新勝寺 断食参籠(さんろう)修行(三泊四日)体験記 」全7回 ■■ 
 総目次はここをクリック!
■■ 「庄内平野と出羽三山への旅」 全12回+α - 「山伏修行体験塾」(二泊三日)を中心に ■■
 総目次はここをクリック!


「個」と「組織」のよい関係が元気をつくる!

「個」と「組織」のよい関係が元気をつくる!
ビジネス寄りでマネジメント関連の記事はこちら。その他の活動報告も。最新投稿は画像をクリック!



ご意見・ご感想・ご質問 ken@kensatoken.com にどうぞ。
お手数ですが、コピー&ペーストでお願いします。

© 2009~2024 禁無断転載!



2016年4月29日金曜日

「イフ」を語れる歴史家はホンモノだ!-歴史家・大石慎三郎氏による江戸時代の「改革」ものを読む


「歴史にイフはない」というよく知られたフレーズがある。だが、このフレーズにこだわって禁欲的になりすぎるのは、あまり生産的ではないと思う。

たしかに、時間の流れというものは、未来からやってきた時間が現在を通過したその瞬間に過去になっていくので不可逆であるのだが、「もしかしたらありえたかもしれない可能性」について考えることはきわめて意味のあることではないだろうか。

なぜなら、歴史というものには必然性はないし、あたかもブラウン運動のように、個々の事象が玉突き現象のような形でランダムウォークする複雑な動きの軌跡と捉えるべきだと考えているからだ。それは複雑系でいう「カオス」であり、確率論が支配する世界だといってもいい。

マイブームというわけでもないが、ここのところ江戸時代関連のものばかり読んでいる。そのなかでも、日本経済史の大石慎三郎氏の著作はきわめつけに面白い。

『徳川吉宗と江戸の改革』(大石慎三郎、講談社学術文庫、1995)『田沼意次の時代』(大石慎三郎、岩波現代文庫、2001)『将軍と側用人の政治 新書・江戸時代①』(大石慎三郎、講談社現代新書、1995)と続けて読んでみたが、それぞれ重複しているものも多いとはいえ、ひじょうに新鮮な印象を受けている。

とくに興味深いのは田沼意次(たぬま・おきつぐ 1719~1788)の取り上げ方。賄賂政治家としていまだに糾弾されつづけている田沼意次だが、経済関連の官僚政治家としての構想力の大きさと実行力には目を見張るばかりだ。

田沼意次が実行した政策は、間接税としての流通税の導入、国内通貨統一(・・江戸時代は金銀複本位制だった)、北方開拓とロシア貿易、印旛沼干拓などあるが、スケールの大きさと先見性にはあらためて驚かされる。しかしながら、失脚によって政策の多くが中途で挫折したのはきわめて残念なことだ。通貨統一は明治4年(1872年)の「円」の誕生によってようやく完結、印旛沼干拓工事はなんと「戦後」の昭和21年(1946年)まで再開されなかったのだ。

田沼意次にまつわる悪評は、ほぼすべてが「抵抗勢力」をバックにつけて登場した松平定信によるものだと考えられている。まことにもって「男の嫉妬」は恐ろしい限りだが、田沼意次が失脚することなく政策が完全に実行されていれば、一世紀以上早く「近代化」していた可能性があるという大石氏の見解にはうなづかされるのである。近代化が全面的な西欧化ではなかった可能性もあったかもしれない

「もし田沼意次が失脚していなければ・・・」について考えることはじつに面白い。そのようなことを書いている大石氏のことをさして、「イフを語れる歴史家はホンモノだ」と、わたしがいうのはそういうことだ。

歴史というものが直線的に進むものではなく、行きつ戻りつしながらジグザグに進んでいくものだ。これを十分に理解していれば、今後の日本についても過度の悲観論や楽観論をもつことが無意味なことも理解されることだろう。

わかっているつもりでいながら、じつは多くの人にとってよくわかってないのが江戸時代。もちろん、わたしも例外ではないが、だからこそ江戸時代について知ること、考えることは面白い。




著者プロフィール

大石慎三郎(おおいし・しんざぶろう)
1923年~2004。日本の歴史学者。専門は近世日本史。東京大学文学部国史学科卒業。学習院大学名誉教授。徳川林政史研究所長、愛媛県歴史文化博物館館長を歴任。近世農村史の研究から歴史研究に入り、その後、享保の改革を生涯の研究テーマとした。また、江戸時代が舞台となったNHK大河ドラマの時代考証を数多く担当した。著書多数。(wikipediaの記述に加筆)



<ブログ内関連記事>

What if ~ ? から始まる論理的思考の「型」を身につけ、そして自分なりの「型」をつくること-『慧眼-問題を解決する思考-』(大前研一、ビジネスブレークスルー出版、2010)」

If Your Cat Could Talk 「あなたのネコがしゃべれたら・・・

国立歴史民俗博物館は常設展示が面白い!-城下町佐倉を歩き回る ①

書評 『龍馬史』(磯田道史、文春文庫、2013 単行本初版 2010)-この本は文句なしに面白い!

書評 『歴史人口学で見た日本』(速水融、文春新書、2001)-「徹底的に一般庶民の観察に基礎をおいたボトムアップの歴史学」の醍醐味を語る一冊

世界史は常識だ!-『世界史 上下』(マクニール、中公文庫、2008)が 40万部突破したという快挙に思うこと

書評 『歴史入門』 (フェルナン・ブローデル、金塚貞文訳、中公文庫、2009)-「知の巨人」ブローデルが示した世界の読み方
・・「市場経済」と「資本主義」はイコールではない。封建社会がゆっくりと崩壊して資本主義社会が出現した点において、西欧社会と共通しているのは日本だけである、とブローデルは指摘している。江戸時代は、時代とともに市場経済が社会の隅々にまで浸透し、個人のチカラが増大した時代であった。



(2022年12月23日発売の拙著です)

(2022年6月24日発売の拙著です)

(2021年11月19日発売の拙著です)


(2021年10月22日発売の拙著です)

 
 (2020年12月18日発売の拙著です)


(2020年5月28日発売の拙著です)


 
(2019年4月27日発売の拙著です)



(2017年5月18日発売の拙著です)

(2012年7月3日発売の拙著です)


 



ケン・マネジメントのウェブサイトは

ご意見・ご感想・ご質問は  ken@kensatoken.com   にどうぞ。
お手数ですが、クリック&ペーストでお願いします。

禁無断転載!







end