「アタマの引き出し」は「雑学」ときわめて近い・・日本マクドナルド創業者・藤田田(ふじた・でん)に学ぶものとは?

◆「アタマの引き出し」つくりは "掛け算" だ : 「引き出し」 = Σ 「仕事」 × 「遊び」
◆酒は飲んでも飲まれるな! 本は読んでも読まれるな!◆ 
◆一に体験、二に読書、その体験を書いてみる、しゃべってみる!◆
◆「好きこそものの上手なれ!」◆

<旅先や出張先で本を読む。人を読む、モノを読む、自然を読む>
トについてのブログ
●「内向きバンザイ!」-「この国」日本こそ、もっとよく知ろう!●

■■ 「むかし富士山八号目の山小屋で働いていた」全5回 ■■
 総目次はここをクリック!
■■ 「成田山新勝寺 断食参籠(さんろう)修行(三泊四日)体験記 」全7回 ■■ 
 総目次はここをクリック!
■■ 「庄内平野と出羽三山への旅」 全12回+α - 「山伏修行体験塾」(二泊三日)を中心に ■■
 総目次はここをクリック!


「個」と「組織」のよい関係が元気をつくる!

「個」と「組織」のよい関係が元気をつくる!
ビジネス寄りでマネジメント関連の記事はこちら。その他の活動報告も。最新投稿は画像をクリック!



ご意見・ご感想・ご質問 ken@kensatoken.com にどうぞ。
お手数ですが、コピー&ペーストでお願いします。

© 2009~2024 禁無断転載!



2024年5月1日水曜日

書評『アメリカは自己啓発本でできている ー ベストセラーからひもとく』(尾崎俊介、平凡社、2024)ー 自己啓発書で読むアメリカと日本の大衆文化

 


著者は、「自己啓発書」という分野に目覚め、その分野を主たる研究テーマにして10年というアメリカ文学の研究者。きわめて奇特な人である。

わたしも著者が執筆した学術論文(!)には、『超訳アンドリュー・カーネギー 大富豪の知恵』『フランクリン 人生を切り拓く言葉』を製作した際には、お世話になっている。 

本書は、そんな著者が一般読者向けに書いた、軽いエッセイ風の読み物である。

自己啓発書好きな人よりも、自己啓発書なんてと思っている人向けの内容だ。とはいえ、著者自身のテイストが全面的に反映している内容なので、違和感を感じる箇所もないわけではない。 



■自己啓発書はアメリカの大衆文化であり、日本の大衆文化でもある

自己啓発書は、まさにアメリカのポピュラー・カルチャー(=大衆文化)そのものだ。そして、日本の大衆文化でもある

自己啓発書が盛んに出版され読まれているのは、アメリカと日本くらいだと著者はいうが、その意味でも日米はよく似た面をもっているといってよい。 

著者は、自己啓発書を大きく分けて2つに分類している。「自助努力系」と「引き寄せ系」である。 

前者の「自助努力系」は、フランクリンの『自伝』以来の正統派の自己啓発書で、アンドリュー・カーネギーの『自伝』もまたそのカテゴリーに分類される。そして、この分野での現時点での集大成とも言うべき存在がコヴィー博士の『7つの習慣』である。 

こちらのカテゴリーは、わたしとしても大いに読むことを薦めたい。人事管理の世界でいう「自己啓発」は、この意味に近い。 

ところが、20世紀になってからの主流は「引き寄せ系」である。これは「スピリチュアル系」とかなりの程度かぶるのだが、「はあ?」という感じのものやトンデモ本も含めてじつに多種多様だ。

「引き寄せ」現象そのものまで否定するつもりはない。というのも、自分自身が経験しているからだ。とはいえ、この手の内容は、まあ話半分で聞き流しておく分には無害というべきかもしもしれない。 

先にもみたように、狭義の自己啓発書はアメリカ生まれの大衆文化というべきだが、日本で受け入れられたのは、もともと日本文化にその素地があるからだろう。

『学問のすすめ』や『自助論』といった形で、明治時代という激動期からその歴史が始まる。 本書でもスポーツ系の自己啓発書として元テニスプレイヤー松岡修造の「日めくり」が取り上げられているが、前近代からの修行や修養の歴史をもつ日本ならではといえるかもしれない。

著者はまったく言及していないが、わたしは「修養書」とされてきた『言志四録』もまた、広義の自己啓発書ととらえて問題ないと考えている。 



■夢を実現するために「引き寄せ」てしまう力

著者は「あとがきに代えて」で玉川学園の創始者である小原國芳のことを取り上げ、教育者として理想の学園建設という大きな夢を実現させた人物であり、小中学校を玉川学園で過ごした著者はその感化を受けていると述べている。 

なるほど、そういうことか、と。夢を実現するためにさまざまな人を引き寄せてしまう力、それは情熱のもつ力といってもいいが、そんな人と直接身近で全人的に接したことがあればこそ、なのだろう。 

一般向け読み物としての性格のためか、「~であろう」という推論にもとづく記述が多いのが気になるものがある。また、スウェーデンボルグがフランクリンに影響を与えている、そんな誤解を与えかねない記述が気にはなる。フランクリンは、むしろフリーメーソン系の自己修養系である。

とはいえ、自己啓発書というカテゴリーが好きな人も、批判的な人も読むとなにかしら得るものがあるのではないだろうか。

少なくとも「教義の自己啓発書」について研究してきた著者の貢献は、少なからぬものがあるといっていいだろう。 


画像をクリック!



目 次
はじめに 
1 自己啓発思想の誕生 ― ベンジャミン・フランクリン『自伝』 
2 引き寄せ系自己啓発本の誕生 
3 ポジティブであること 
4 「お金持ちになろう!」アメリカの成功哲学 
5 年長者が人生を説く父から息子への手紙 
6 日めくり式自己啓発本 
7 スポーツ界の自己啓発本 
8 自己啓発本界のトホホな面々 
小原國芳先生のこと ー あとがきに代えて 
年表 
アメリカ・日本の自己啓発本 
参考/引用文献

著者プロフィール
尾崎俊介(おざき・しゅんすけ)
1963年、神奈川県生まれ。愛知教育大学教授。専門はアメリカ文学・アメリカ文化。著書に『ハーレクイン・ロマンス ― 恋愛小説から読むアメリカ』(平凡社新書)、『S先生のこと』(新宿書房、第61回日本エッセイスト・クラブ賞)などがある。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものに加筆)



<ブログ内関連記事>





・・玉川学園とその創始者・小原國芳のこと


(2023年11月25日発売の拙著です 画像をクリック!

(2022年12月23日発売の拙著です 画像をクリック!

(2022年6月24日発売の拙著です 画像をクリック!

(2021年11月19日発売の拙著です 画像をクリック!

(2021年10月22日発売の拙著です 画像をクリック!

 (2020年12月18日発売の拙著です 画像をクリック!

(2020年5月28日発売の拙著です 画像をクリック!

(2019年4月27日発売の拙著です 画像をクリック!

(2017年5月19日発売の拙著です 画像をクリック!

(2012年7月3日発売の拙著です 画像をクリック!


 



ケン・マネジメントのウェブサイトは

ご意見・ご感想・ご質問は  ken@kensatoken.com   にどうぞ。
お手数ですが、クリック&ペーストでお願いします。

禁無断転載!








end