(真珠の「耳」飾りの少女 と 真珠の「首」飾りの少女)
先週のことだが、残暑がつづく平日の午後、時間をぬって上野公園でフェルメールの「はしご」をしてきた。
まずは、東京都立美術館、そして国立西洋美術館。
それぞれの美術館でフェルメールの代表作である「真珠の「●」飾りの少女」を一点ずつ展示している。
「真珠の「●」飾りの少女」と書いたのは、ひじょうに似ているタイトルでまぎらわしいが、東京都立美術館で展示されているのが「真珠の「耳」飾りの少女」、そして国立西洋美術館で展示されているのが「真珠の「首」飾りの少女」。
いずれも名作だが、「真珠の「耳」飾りの少女」は映画化もされているので、知名度は高いと思う。だが、モデルとなった少女も違い、基本的に異なる作品なので、できれば両方見ることが望ましい。こんな機会はなかなかないからだ。
フェルメールの作品が目玉ではあるが、美術展そのものは大きな枠組みのなかで企画されているので、いちおう説明しておこう。いずれも公式サイトから引用する。
■リニューアルオープン記念「マウリッツハイス美術館展 オランダ・フランドル絵画の至宝」
会期: 2012年6月30日~ 2012年9月17日
内容: 待望のフェルメール「真珠の耳飾りの少女」来日中! 2012年夏、東京都美術館のグランドオープンを飾るのは、「王立絵画館」の名で世界的に知られるオランダ・マウリッツハイス美術館のコレクションの数々です。
http://www.tobikan.jp/museum/2012/mauritshuis2012.html
■ベルリン国立美術館展 学べるヨーロッパ美術の400年
会期: 2012年6月13日(水)~9月17日(月・祝日)
会場: 国立西洋美術館 企画展示室
内容: 真珠の首飾りの少女」はその一部
http://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2012berlin.html
今回は、時間も限られているし、オランダ絵画全般に関心があるわけではなく、しかも西洋美術史を古代から現代までお勉強するつもりもヒマもないので、「真珠の耳飾りの少女」と「真珠の首飾りの少女」の二点に絞り込んで、あとの作品はざっと流した。
さきにも書いたが、「真珠の耳飾りの少女」は映画化もされているので、フェルメールの作品のなかでも、もっとも有名なものだろう。
この少女のまなざしが、この絵を見たあとものちのちまでつよく印象が残る。色彩の豊かさと光の使い方もさることなが、見る人にとって忘れがたい作品であることは間違いない。
「真珠の耳飾りの少女」の視線は鏡を向いていて、見る人は彼女の視線のなかにはないようだ。自分の首にかけた首飾りに魅入っているようで、その様子を第三者的にたまたま見てしまったという印象を受ける。
写真もそうだが、絵画作品も、被写体(・・描かれた人物)とそれをカンバスのうえに描いた画家との関係性が知らず知らずのうちに表現されるものである。
そして、さらにその絵画を鑑賞する人との関係性も形成され、絵画鑑賞という奥行きのある行為ができあがるわけだ。
「真珠の耳飾りの少女」はその意味でも、かなり特別な作品なのである。
今回リニューアルされた東京都立美術館の建物の前には、金属製の球体のオブジェが置かれていることに気がついた(写真下)。記憶が定かではないが、これは以前はなかったと思う。
美術展の企画者の意に反しているかもそれないが、展示の目玉である2つの「真珠の●飾りの少女」を見るためだけでも、上野公園にいく価値はあるといっていい。
ともに9月17日が最終日である。お早めに。
(東京都立美術館の建物の前に置かれた球体のオブジェ)
<関連サイト>
『真珠の首飾りの少女』については、Girl with a pearl earring- Trailer にて。
http://www.youtube.com/watch?v=zg4P-u8tu-8
・・フェルメールの世界を映像美として味わいたかったらこの映画を見るのがいちばん。
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