この写真をみて「桜餅のような八重桜」ということにピンとくる人は、おそらく関西人が多いでしょう。ただ単に、甘味好きや食いしん坊かどうかとは違います。
なぜなら、関西では、桜餅といえば「道明寺」(どうみょうじ)のことを指しているから。関西人が「桜餅」と聞いてアタマのなかで連想するのは間違いなく「道明寺」のことです。
関東でいう「桜餅」は、ドラ焼きのようにアンコを包んだ形態なので、「桜餅のような八重桜」といってもピンとこないかもしれません。
まずは、関西の「桜餅」、言い換えれば「道明寺」について簡単にみておきましょう。まずは下の写真を見てください。
(桜餅道明寺、上方風桜餅 wikipedia日本語版掲載の写真)
どうです、よく似てるでしょう! しかも、見るからにうまそうですね!
おなじく桜の葉を塩漬けにしたものでくるんであっても、関西と関東では真逆といっていいほどの違いがあるのが桜餅です。わたしは道明寺の桜餅のことをいつも無意識に桜餅といっているので、関東ではどうも話が通じないことがあるようなのです。
では、関東の「桜餅」です。
(桜餅長命寺、江戸風桜餅 wikipedia日本語版掲載の写真)
こちらも「桜餅」は「桜餅」ですが、関東の長名寺は小麦粉でつくった薄皮であんこをくるんだものです。関西と関東では、同じ桜餅といってもぜんぜん違うものであることがわかると思います。じつは関東の桜餅を「長名寺」ということは今回はじめて知りました。
では、なぜ関西の桜餅は「道明寺」というのでしょうか?
むかしから不思議に思っていましたが、あるとき思い立って調べてみたら答えはきわめて簡単なものでした。答えは、道明寺粉からつくった餅だから道明寺という、というもの。
ではなぜ道明寺粉とは何でしょうか?
道明寺粉とは、もち米を水洗いし水に浸しておいてから蒸し上げ、干して乾燥させたものです。米粉の一種ですね。しかも、もち米のつぶつぶが残っているので、粒あんともあわさって、じつによい食感です。関東の「お汁粉」(しるこ)に対して関西では「ぜんざい」が好まれるのと同じかもしれません。つぶつぶ感といったものでしょう。
「道明寺」というのは大阪の藤井寺市にある真言宗のお寺の名前です。もち米を乾燥させたものを干し飯(=ほしいい)といいますが、その干し飯を荒挽き粉にしたものが道明寺粉というわけです。道明寺粉は千年前から存在するのだそうですが、干し飯といえば 『伊勢物語』の東下りの場面にも登場する「かれいひ」という携帯食です。
では、関西の桜餅と関東の桜餅の境界線はどこにあるのでしょう? 日本では、関西と関東にしか住んだことがないので、その中間のどこかであるのは確かなのですが・・・
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(2014年6月18日 情報追加)
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