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2015年7月22日水曜日

書評『モリナガ・ヨウの土木現場に行ってみた!』(モリナガ・ヨウ、溝渕利明=監修、アスペクト、2011)ー 独特の細密イラストによる「関係者以外立ち入り禁止」の「現場」探訪フィールドワーク


独特な細密イラストで有名なモリナガ・ヨウ氏による全ページがラーの土木現場の探訪フィールドワーク。土木現場は、特別な許可がない限り「関係者以外立ち入り禁止」なので、こういう企画ものはありがたい。

最近では土木女子略してドボジョなる存在も増加中とはいえ、圧倒的多数は土木男子(・・そんな表現はない)の世界である。

現場監督から作業員にいたるまで男の世界、働くのも男なら、そんな土木現場に関心をもつのも圧倒的多数は男子であろう。なぜそうなのかと問われても答えるのはむずかしいが、わたし自身も男子なので、どうしても土木や巨大構築物には関心が高い。

このルポは「土木学会誌」に連載されたものなので、その関係者でもない限り、単行本化されないと知ることはできないたぐいのものだ。けっして系統的な構成ではないが、著者自身の関心と取材のしやすさから首都圏を中心に、日本全国の土木建設プロジェクトを回っている。

身近な道路工事から、山奥のダムまでカバーする範囲は広い。面白いのは、生コンの材料であるセメントの工場や、鉄筋コンクリートに使用される鉄筋の工場まで見学していること。こういう知られていない世界を知るのは面白い。

監修者の溝渕利明氏も取材に同行しており、各編にある対談形式の取材後記が業界関係者の視点を語っているので面白い。「第2部 土木工事の基礎知識」も、土木にかんする基本的な疑問に答えてくれるのもありがたい。日本語の「土木」というコトバは歴史を負ったものなので、なかなか味わい深い

写真のほうがわかりやすいという印象もなくはないが、イラストだからこそ描き込めるという利点もあるし、なによりも著者自身の感想がイラストで表現されているのが、メカを描いても人間味豊かな味わいをだしているのがいい。

土木であれ何であれ、「現場」にはすべてがつまっている。「現場」に始まり「現場」に終わる。「現場」こそ面白いのだ。





目 次
   
はじめに
第1部 土木工事現場見学
 01 JR新宿駅南口  東京都
 02 JR中央線 三鷹・立川間  東京都
 03 副都心線  東京都
 04 首都高速大橋ジャンクション(地上)  東京都
 05 首都高速大橋ジャンクション(地下)  東京都
 06 地下式LNGタンク  愛知県
 07 円山川・出石川の災害復旧  兵庫県
 08 セメント工場  神奈川県
 09 創成川アンダーパス  北海道
 10 大保ダム  沖縄県
 11 御前山ダム  茨城県
 12 石神井川の整備  東京都
 13 幌富バイパス  北海道
 14 島根原子力発電所(その1)  島根県 
 15 島根原子力発電所(その2)  島根県
 16 千歳川の樋門と改築工事  北海道
 17 鉄筋工場  岡山県
 18 羽田空港D滑走路  東京都
 19 圏央道 高尾橋  東京都
 20 コンクリート製品工場  栃木県
 21 新東名高速道路 猿田橋-吉原ジャンクション  静岡県
 22 小塚山トンネル  千葉県
 23 虎杖浜トンネル付近の改良工事 北海道
第2部 土木工事の基礎知識
 1. 土木って何
 2. 土木は文明とともに生まれた
 3. 土木を代表する構造物
 4. これからの土母奥を支えるのは!?
おわりに

著者プロフィール
モリナガ・ヨウ(もりなが・よう)
1966年東京生まれ。早稲田大学教育学部地理歴史専修、漫画研究会在籍。ルポイラストを得意とする。立体も年に数体作る

監修者プロフィール
溝渕利明(みぞぶち・としあき)
1959年生まれ。岐阜県出身。名古屋大学大学院工学研究科土木工学専攻修士課程修了、博士(工学)。大学卒業後鹿島建設株式会社に入社、技術研究所勤務。明石海峡大橋海中基礎建設工事等数多くのプロジェクトに参加。1993年から3年間広島支店温井ダムJV工事事務所勤務。2001年に鹿島建設を退社。法政大学に転籍。2004年に教授となる。専門は、コンクリート材料、施工法、非破壊検査技術など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。

  

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