Merry Christmas and a Happy New Year !!!
新年にはまだ早いですが、皆様のご多幸を願って「季節のご挨拶」(Season's Greetings)として送ります。クリスマスにつきものの赤い実のついたセイヨウヒイラギを添えて。
ところで、なぜ赤い実のついたヒイラギがクリスマスにつきものなのでしょうか? しかも、赤い実がつくのは、ふつうの家庭でも生垣として植えられているヒイラギではなくてセイヨウヒイラギであることを知ってますか?
こういうときに役に立つのが 『イメージ・シンボル辞典』(アト・ド・フリース、山下共一郞他訳、大修館書店、1984)。西欧世界のイメージについては、個々の項目については的確な知識を得ることができる辞典です。
ではさっそく、「holly ヒイラギ」の項を見ておきましょう。そもそも holly という名称じたい、holy なものであることを連想させますね。聖なるヒイラギ(holy holly)。重要なポイントをあげておきます。
1. 常緑樹の1つ。ヨーロッパでこの属は、地質年代初期にはもっと豊富であった。(・・後略・・)
2. 一年の後半、とくに冬至を表す。
a. サトゥルナリア祭(Saturnalia)で、サトゥルナリアの棍棒はヒイラギで、一年の後半を表す。ローマでは、サトゥルナリア祭のとき、ロバをヒイラギで殺して生贄とした。
b. ケルトの緑の騎士との関連: 緑の騎士はヒイラギの騎士で、(夏至の「新年」に)冬至の新年から支配したオークの騎士(ガーウェイン)に代わる。(・・後略・・)
c. クリスマス: 初期のキリスト教徒はクリスマスを表すために、サトゥルナリア祭のヒイラギをそのまま使った。ヒイラギは常緑樹なので永遠の生命を表す。歓待を表す。とげがあることから懺悔を表す。ヒイラギはオークよりも貴重なものとされる。ヒイラギはTと対応し十字架刑と関連する。赤い実はキリストの血、死にいたる愛を表す。オークに関連をもつ聖ヨハネ(祝日:6月24日)を、ヒイラギに関連をもつキリスト(クリスマス)が追う(・・後略・・)
ざっとこんな感じでしょうか。この記述から読み取れるのは、ヒイラギを飾るのは、キリスト生誕日というクリスマス以前の信仰のうえに乗っかったものであること、古代ヨーロッパにおいてヒイラギはオーク(=落葉樹の楢、常緑樹の樫)と対をなす存在であったこと、などです。
ヒイラギのもつ象徴性については、まさにそのとおりだというべきでしょう。ヒイラギの棘の存在は日本でも同じようにみなされてきました。魔除けとしての機能ですね。
ただし、日本に在来のヒイラギは棘棘の出た葉っぱの形がよく似てますが、セイヨウヒイラギ(Ilex aquifolium)とはまったく別種の植物です。日本のヒイラギ(Osmanthus heterophyllus)はモクセイ科モクセイ属に属します。
とくにケルトにかんしては、ヒイラギが関係する冬至や夏至だけでなく、収穫祭であるハロウィーンや、メーデーの起源など枚挙に暇(いとま)がありません。
そう考えると、クリスマスはかならずしもキリスト教のものだとも言い切れないのかもしれませんね。
ではあらためて、メリー・クリスマス!
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