「ツタのからまる」のはチャペルではなく、じつは空き家となった民家です(笑)
ペギー葉山の名曲 「学生時代」(1964年)の歌いだしのイメージがあって、どうしても「ツタのからまる」建物は洋館、つまり西洋風の建築物という根強いイメージがわたしのなかにある。しかも紅葉に色づく「秋の日の図書館」である。
じっさいに「学生時代」で歌われているのはチャペル、キリスト教の礼拝堂である。この歌に登場するチャペルはペギー葉山の母校である青山学院大学のものであるらしい。青学は、プロテスタント系のミッションスクール。メソジスト派である。
さらに日本でも有名な「アイビー・リーグ」(Ivy League)というものがある。アメリカ東部の名門私立大学の総称で、ハーバードやイェール、プリンストンなど6大学をさしている。ツタのからまる建物がある美しいキャンパスというイメージがついてまわるのだが、そんなこともあって、ツタというとどうしても欧米風のイメージが強いのだ。
だが、「ツタ」は日本語である。「蔦」という漢字があてられている。このように、北米だけでなく、日本を含めた東アジアに自生している植物なのだ。一説によれば、他の植物や岩に「つたって」伸びるから「つた」なのだとか。この語源が正しいのかどうかはわからない。
念のために『岩波古語辞典 補訂版』(大野晋他編、岩波書店、1990)で「つた」を引いてみると以下の記述がある。
つた【蔦】 蔓(つる)性の木質の多年草。秋の紅葉が賞美された。「這う--の別れし来れば」<万135>。「常盤木(ときはぎ)に這ひまじれる--の色など」<源氏総角>
なんと、『万葉集』や『源氏物語』にも用例があるではないか!
たしかに、「蔦屋書店」というのもあるし、そもそもこの屋号は江戸時代の出版人・蔦屋重三郎から取ったものであった。藤(ふじ)もそうだが、日本には蔓性の自生植物が多い。
「ツタ」は英語でアイビー(ivy)という、ということはつまり「ツタ」は日本語なのだが、どうしても欧米風のイメージが固定化してしまっているのは、もしかするとわたしだけではないのではないかと思う。
「つた」がからむのは、あくまでも洋館や洋風建築であって、日本家屋にからまる「つた」は記憶にない。いや、見たとしてもそれを「ツタ」と認識していないだけかもしれないが・・・。
固定観念というイメージはじつに怖いものだ。あらためてそう思った晩秋の一日であった。
<関連サイト>
ペギー葉山 学生時代 (YouTube)
・・歌われているのは一番の歌詞と三番の歌詞のみ
ペギー葉山の「学生時代」(歌詞)
・・発表は1964年(昭和39年)。とくに二番の歌詞に注目
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