2026年(令和8年)、新年の初読みは『ケルトとは何か』(原聖、講談社選書メチエ、2024)。昨年末に著者からいただいたので目を通すことに。
近代言語社会史を専攻し、現在もブルターニュやウェールズ、アイルランドなどで話されているケルト諸語に精通した著者にとって、本書は著者の「ケルト学」の総括であり、ここ20年で大きく進展したヨーロッパの「ケルト学」の最前線について書かれたものである。
ケルトといえば、独特の装飾模様や巨石文化、妖精の登場する童話の世界、そして日本でもファンの多いリバーダンスやヒーリングミュージックという連想が浮かぶ。
ヨーロッパ文化の古層をなすケルトは、日本でいえば縄文のようなものだという言説もまた、よく耳にするところだ。「キリスト教伝来以前」のヨーロッパと、「稲作伝来以前」の日本とのパラレルな関係。
ところが、わたしも含めた一般人の抱いているケルト文化は、著者によって無惨にも破壊されてしまう。
せいぜいさかのぼったところで16世紀から17世紀、その大半は19世紀に勃興したナショナリズムの波のなかで積極的に取り上げられるようになったのである、と。
いわゆる「伝統の創造」(invention of traditions)である。現代のケルト文化と古代文化とのつながりは、現在では疑問視されるようになっているのだ。
では、ケルト文化の根底をなすものは何かというと、著者自身の専門でもあるが言語なのだという。ケルト文化=ケルト諸語ではないのである。
日本の縄文とは違って、文字資料として残っているものが多いケルト諸語を解析すると、いろいろなものが見えてくるようだ。DNA研究を踏まえた最新の学説も紹介されており、ケルト学最前線としても面白い。
というわけなので、「ケルト」に寄せる思いを破壊されたくない人は読まないほうがいいかもしれない。逆に「ケルト」について予備知識のない人が読むと、有用かもしれない。
事実関係とその解釈の記述がたんたんとつづくが、その内容は偶像破壊的ですらある。
学問というものは、ある意味では無慈悲なものだ。だが、学問上の研究成果を踏まえていない言説は、しょせん願望の投影に過ぎないのである。
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目 次はじめに第1章 近代が生んだケルト文化第2章 ケルト美術と考古学第3章 文芸と民俗のなかのケルト第4章 民族起源の伝説と史実第5章 ケルト諸語の言語学第6章 社会のなかのケルト諸語おわりに参考文献索引著者プロフィール原聖(はら・きよし)1953年、長野県生まれ。東京外国語大学卒業。一橋大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。女子美術大学芸術学部教授を経て、女子美術大学名誉教授。専門は近代言語社会史。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)
【付録】ケルト諸語による地名と通称との対応
●エール(=アイルランド)●アルバ(=スコットランド)●カムリー(=ウェールズ)●ブレイス(=ブルターニュ)●ケルノウ(=コーンウォール)●エリャン・ヴァンニ(=マン島)
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