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2009年5月28日木曜日

アッシジのフランチェスコ (1) フランコ・ゼッフィレッリによる



13世紀イタリアが生んだ聖フランチェスコについては、フランコ・ゼッフィレッリ監督の『ブラザーサン・シスタームーン(Brother Sun, Sister Moon)』(1972年)でよく知られている。

 イタリア中部ウンブリア地方のみずみずしく美しい自然、いっさいの所有からの自由を求める「清貧」。

 オペラ演出家でもあるゼッフェレッリの美しい映像は、ドノヴァンのフォーク調の穏やかな旋律の主題歌ともあいまって、見るたびに心を洗われてきた。ラストシーンは何度もDVDで繰り返してみているほどだ。

 映画制作当時のヒッピームーブメントの影響もあり、シンプルライフ志向のさきがけのような映画である。

 「カトリック青春映画」と銘打たれていたこともあるが、聖者伝というよりは青春映画といったほうが適切だろう。同じ監督によるオリヴィア・ハッセイ主演の 『ロミオとジュリエット』 (1968年)とともに忘れがたい青春映画の名作である。


一カ月かけてイタリア半島をつま先の先端まで回る

 1991年にイタリアを北はヴェネツィアから南はシチリアまで一か月かけて鉄道で回った私は、当然のことながらアッシジも訪れている。大学院留学中の夏休みを利用してのはじめてのヨーロッパの旅、Eurail Pass と Youth Hostel 会員証をフルに活用した旅であった。

 ニューヨークから、ロンドン経由ボンベイ行きの格安のエア・インディアを使ってロンドンへ。英国から大陸へはフェリーでフランスのカレーへ。オランダ、ドイツはさっと通り抜け、ウィーンから夜行列車でヴェネツィアへ抜けたところからイタリアの旅が始まる。

 ゲーテではないが、イタリアにすっかり魅了されてしまったのだ。結局イタリア全土を回ることにしたのは成功だったと思う。人生も旅も予定のコースを外れて寄り道を歩くのは楽しいことだ。

 アメリカで購入して持参したガイドブック 『Let's Go Europe』 はアメリカの大学生が取材して作ったもので、たいへん役にたつスグレものであった。その当時の『地球の歩き方』は、とくにイタリア編は、ニューヨークの紀伊国屋書店で立ち読みしたが、観察力の乏しい旅行者の投稿情報を載せすぎで、しかも内容は情緒的な記事が多くて実用性に乏しく、まるで役に立たない代物であった。もっともその当時イタリアは現在ほどの人気はなく、しかも男性でイタリアに関心があるものなどきわめて少なかったのも事実だが。

 また、現在では定番のガイドブック 『Lonely Planet』 も当時はそれほど普及していなかった。その当時はどちらかといって、バックパッカー向けの辺境地帯のガイドブックが中心だったように思う。

 パリのセーヌ川にかかるミラボー橋で 『Let's Go Europe』を読みふけっていたら、アメリカ人の学生から声をかけられたことがあったのを思い出した。同じガイドブックをつかっていることに郷愁を感じたのだろうか?

 当時はよく「アメリカ人か?」とかいわれたものだ。アメリカ人というのは人種概念ではないから、英語をしゃべっていればアジア系だろうがアメリカ人扱いされることもある。

 なお、『Let's Go Europe』 は、amazonをみたら、現在でも改訂版がでているようだ。学生の身分でBudget Travel するなら、いいガイドブックである。日本では入手しにくいだろうが、アメリカの大学 Bookstore なら置いてあるはずだ。もちろん amazon でも購入可能。



■北イタリアではユースホステル会員証に使いでがある

 さて、イタリアの旅はヴェネツィアから始まったのだが、予約なしでヴェネツィアに宿泊するのは現在でもまったく不可能である。そこで、列車で30分ほど西に行ったパドヴァのユースホステルに宿泊することにした。

 パドヴァはヴェネツィア共和国にとって後背地にある知的センターであったことは、塩野七生の読者なら知っているかもしれない。パドヴァ大学には、1453年のコンスタンティノープル陥落でビザンツ帝国の学者が大量に亡命してきており、その後も「それでも地球はまわる」といったガリレイや、血液循環で有名なウィリアム・ハーヴェイなどがおり、また世界でもっとも古い円系劇場型の解剖学教室が残っていて素晴らしい。

 この時はこういった歴史的遺産を見ることができなかったが、2006年に15年ぶりに再訪した際に、パドヴァ大学内部だけでなく、ゲーテが訪れた植物園、ジオットの壁画で有名なスクロヴェーニ礼拝堂も見ることができた。15年目にして懸案事項が解決されたわけである。

 Youth Hostel 会員証は、北イタリアでは非常に使いでがあったことを記しておく。

 イタリアではかなり古くて趣のある建築を買い取ってユースホステルとして利用しているものも少なからずある。パドヴァのユースもそうであった。早朝、霧が立ち込める中、先着順でチェックインを待っていたことを思い出した。円形の筒のようなくすんだ色をした建物であったように記憶している。

 フィレンツェでも、シエナだったか覚えていないが、海岸沿いの小さな町で、壁にフレスコ画が残る御屋敷に泊まれたのも、ユース会員権のおかげであった。



アッシジは世俗的な傾向の強いイタリアのなかでは例外的な存在

 えらく遠回りしてきたが、そろそろアッシジに行かないといけない。

  『Let's Go Europe』には、アッシジは世俗的な傾向の強いイタリアのなかでは例外的で、女の子も男性の視線を気にすることなく安心して過ごせる町だと書かれていたが、まさにそのとおりだった。

 イタリアは全般的に男は男らしさを、女は女らしさを過度に強調して見せる傾向があり、地中海世界というか、ラテン的な特性が全面にでている国である。ファッション雑誌の『LEON』なんか持ち出さなくても周知のとおりだ。

 そんななかにあって、アッシジは、かなり趣の異なる町なのである。

 小高い丘の上にある町で、石畳の坂道が多いのはイタリア共通だが(・・マラリアを避けるために丘の上に町が作られたとあったのを読んだことがある。イタリアのスーパーマケットでは日本の蚊取り線香を売っていた)、有名な「宗教都市」でありながら陰鬱なところのまったくない、修道士も含めほがらかな雰囲気に満ちた町であった。フランチェスコ教会にある、ジオットのフレスコ画ともども強い印象に残っている。

 その後の大地震でフレスコ画も損傷を受けたというニュースを聞いたが、修復は完了したようで安心している。先日も大きな地震があり被害も大きかったようだが、シチリアにストロンボリという活火山もあるイタリアは地震国である。ゼッフィレッリ監督も、撮影中18回も地震に見舞われたのだ!と自伝に書いている

 アッシジ(Assisi)は実際の発音はアッスィージに近いので若干異なるのだが、日本人が日本語でアッシジと発音するとき、音が共通しているので、何かしら薬師寺(やくしじ)を連想させるのも、日本人にはしたしみやすいのかもしれない。


フランコ・ゼッフィレッリ監督の『ブラザーサン・シスタームーン』(1972年)

 『ブラザーサン・シスタームーン』が、時のローマ教皇インノケンティウス3世に布教を認められるシーンをハイライトとして終わるが、これは実はきわめて重要なシーンなのである。

(『ブラザーサン シスタームーン』のシーンから)

「組織」としてのローマカトリック教会を修復するために、その当時の時代状況のなかで異端すれすれであったフランチェスコを、教会内部に抱き込むことで一般信徒たちの離反を防いだ、という組織運営上の大決断であったのだ。

 このことは、中世史家である堀米庸三の名著 『正統と異端-ヨーロッパ精神の底流-』(中公新書、1964)が、教皇とフランチェスコ会見を「一つの世界史的な出会い」(P.181)と表現している。高校時代に読んでから約20数年ぶりに読み返して確認した。この本は残念ながら絶版。(*)

(*) その後、2013年に中公文庫から復刊された。ブログ記事で書評を書いているので、上記のリンク先をご覧いただきたい。 (2014年2月16日 記す)

 音楽については、最初はシンガーソングライターのレナード・コーエンと作業したがしっくりこないのでやめて、最終的にドノヴァンに依頼したと監督は回想している。結果としてこれは成功だったといえよう。

 ユダヤ系カナダ人のコーエンにはイエス・キリストを主題にした曲もあるが、むしろユダヤ神秘主義であるカッバーラー、禅仏教やチベット仏教に傾倒した人なので、曲は作れてもカトリックのゼッフィレッリ監督にしっくりはこなかった、というのもうなづける話だ。

 そもそも低音がウリの歌手だから「青春映画」にはふさわしくないし、フランチェスコの単純さとは異なる精神性を追求している。

 とはいえ、レナード・コーエンは私のもっとも好きな歌手である。いまも彼のCDかけながらこの文章を書いている。

 アッシジのフランチェスコを扱った映画は多数製作されている。イタリア人の映画監督によるものを挙げておく。


 ネオレアリスモの監督ロベルト・ロッセリーニの『神の道化師 フランチェスコ(Francesco, Giulare di Dio)』(1950年、脚本はフェデリコ・フェリーニ)は、ローマでの教皇との会見からアッシジに戻るシーンから始まり、布教のために弟子たちが各地に散っていくシーンで終わる。 

 イタリア人にとってはフランチェスコについて改めて説明する必要がないから、エピソードを集めたオムニバス形式にしたのであろう。

 さらにもう一つ、同じくイタリア人のリリアーナ・カヴァーニ監督の『フランチェスコ(Francesco)』(1989年)であるが、長くなったので、続きは次回としよう。

 (つづく)



<アッシジのフランチェスコ 総目次>

アッシジのフランチェスコ (1) フランコ・ゼッフィレッリによる  
アッシジのフランチェスコ (2) Intermesso(間奏曲):「太陽の歌」   
アッシジのフランチェスコ (3) リリアーナ・カヴァーニによる  
アッシジのフランチェスコ (4) マザーテレサとインド 
アッシジのフランチェスコ (5) フランチェスコとミラレパ 


<参考>

『ゼッフィレッリ自伝』(フランコ・ゼッフィレッリ、木村博江訳、創元ライブラリー、1998)





PS 読みやすくするために改行を増やし、小見出しを加えた。写真を大判にしあらたな写真も挿入した。リンク先も修正を行った。 (2014年2月16日 記す)

PS2 <総目次>を挿入した。(2022年2月20日 記す)


<関連サイト>

St Francis Before the Pope 
・映画 『ブラザーサン シスタームーン』(1972年、フランコ・ゼッフェレッリ監督)のラストに近いシーンで、アッシジのフランチェスコがバチカンでインノケンティウス3世に謁見し「抱き込まれる」シーンに注目! 

brother sun sister moon (YouTube)
・・英国のシンガソングライター、ドノヴァンの歌う主題歌 

Donovan - On This Lovely Day [from Franco Zeffirelli's "Brother Sun, Sister Moon"] (1972)
・・ドノヴァンによる挿入歌


<ブログ内関連記事>

アッシジのフランチェスコ 総目次 (1)~(5)

書評 『正統と異端-ヨーロッパ精神の底流-』(堀米庸三、中公文庫、2013 初版 1964)-西洋中世史に関心がない人もぜひ読むことをすすめたい現代の古典

書評 『ラテン語宗教音楽 キーワード事典』(志田英泉子、春秋社、2013)-カトリック教会で使用されてきたラテン語で西欧を知的に把握する

レナード・コーエン(Leonard Cohen)の最新アルバム Old Ideas (2012)を聴き、全作品を聴き直しながら『レナード・コーエン伝』を読む

書評 『マザー・テレサCEO-驚くべきリーダーシップの原則-』(ルーマ・ボース & ルー・ファウスト、近藤邦雄訳、集英社、2012)-ミッション・ビジョン・バリューが重要だ!
・・アッシジのフランチェスコの精神を現代に活かす

書評 『修道院の断食-あなたの人生を豊かにする神秘の7日間-』(ベルンハルト・ミュラー著、ペーター・ゼーヴァルト編、島田道子訳、創元社、2011)
・・現代でも清貧と霊性を求めて修道院での断食が行われる

書評 『バチカン株式会社-金融市場を動かす神の汚れた手-』(ジャンルイージ・ヌッツィ、竹下・ルッジェリ アンナ監訳、花本知子/鈴木真由美訳、柏書房、2010)
・・いまもむかしも巨大組織バチカン内部は・・・

600年ぶりのローマ法王退位と巨大組織の後継者選びについて-21世紀の「神の代理人」は激務である
・・新教皇はフランシスコ一世。「清貧」を旨としたアッシジのフランチェスコの精神を体現することを考えてのことである

映画 『マーガレット・サッチャー-鉄の女の涙-』(The Iron Lady Never Compromise)を見てきた
・・映画のなかで、サッチャー首相の就任式で「アッシジのフランチェスコの祈り」を朗読するシーンがある。

(2014年2月16日 情報追加)



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