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『きのう何食べた?』(よしなが ふみ、講談社)の最新刊である第3巻が10月にでたので、さっそく買って読む。約1年ぶりである。
『きのう何食べた?』は、キャッチフレーズは「2LDK男2人暮らし 食費、月2万5千円也」。この「男二人暮らし」という設定がクセモノだ。
主人公は、現在44歳という年齢の割には外見が若々しい弁護士・筧史朗(かけい・しろう)と、同居人の美容師・矢吹賢二(やぶき・けんじ)41歳、いずれも独身である。ということはつまり同棲中のゲイ・カップル、というわけだ。
仕事を人生の中心に置かず、定時退社をモットーする弁護士の史郎は、最近の表現でいえば、"ワーク・ライフ・バランスを重視した人"といえようか。
先に帰宅する彼が帰宅途中で食材を買い物し、帰宅してから料理をつくり、ちょうど料理ができあがる頃、美容師の賢二が帰宅する、という具合な毎日。二人の食生活を軸にストーリーが展開する一話完結型のマンガ。いわゆる家族団らんものである。
食費月2万5千円は、かなり切り詰めているようで、まあこの範囲内でやり繰りすることは可能だが、それにしても兼業主婦のような生活ではある。
夕食には毎回必ずおかずが3~4品というのは、けっこう準備するのが大変なので、主人公の弁護士はそうとう手際がよいのだろう。
レシピはかなり本格的で、なかなか参考になるアドバイスも多いので、私もところどころに付箋を貼っている。
連載は講談社の「週刊モーニング」だから青年コミック誌で、女性マンガ家が男性誌で描くマンガは、柴門ふみもそうだが、男性でも違和感なく読めるものが多い。ボーイズ・ラブ系のマンガ家が青年コミック誌で描くというのもまた面白い。
月一回の連載のようなので、なかなか単行本がでないのは、困ったものだ。一年に一度の楽しみといういい方も可能ではあるが・・
料理マンガでは『美味しんぼ』が有名だが、グルメ探訪記者が主人公のマンガで美食ものである。あまり絵が好みではないし、自分が料理を作るマンガではない。
『クッキング・パパ』は、いわゆる男の料理というコンセプトがあまり好きではない。女だろうが男だろうが、料理は料理だと思っているので。重要なのは食材と手際の良さと愛情、だろう。
子供の頃、「少年ジャンプ」で連載されていた『包丁人 味平』は、修行最中の調理人を主人公にしたマンガで毎週愛読していたが、これはむしろ勝負の世界を描いたスポ根ものに近い内容であった。
『きのう何食べた?』は、普通の人(?)が主人公の、料理作りと家族団らんをテーマにしたマンガなので、自分でも料理を作る私が好きなマンガなのだ。何よりもマンガのタッチが私の好みだ。
同じ作者による『愛がなくても喰ってゆけます』も面白かったが、この作品は自分で料理作るのでなく、おいしいものを外に食べにゆく内容である。その意味では、『きのう何食べた?』のほうがいい。いや両方あったほうがいいな。よしなが ふみには次回作として期待したい。
主人公と同世代、というのも好きな理由の一つ。でも私はゲイではありませぬので誤解なきよう。
(2012年7月3日発売の拙著です)
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