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2014年3月29日土曜日

書評 『国際メディア情報戦』(高木 徹、講談社現代新書、2014)-「現代の総力戦」は「情報発信力」で自らの倫理的優位性を世界に納得させることにある


この本は現代人の必読書だ。つまらないビジネス書など読んでいるヒマがあったら、この本をじっくり熟読したほうがいい。それだけの価値がある本である。

現役のドキュメンタリー番組ディレクターである著者は、「国際メディア情報戦」について「まえがき」でこう書いている。ちょっと長くなるが引用文を読んでいただきたい。

情報戦というと、CIA やら MI5 やらの情報機関が水面下で暗躍する、「ごく一部の人しか知らない情報」をいかにゲットするかの戦いのことで、自分には直接関係ないと思ってはないだろうか。
しかし、世界は違う。
・・(中略)・・
重要な情報こそ外部に発信し、それを「武器」にすることが、国際社会で生き残るうえで不可欠になっている。「情報戦」とは、情報を少しでも多くの人の目と耳に届け、その心を揺り動かすこと。いわば「出す」情報戦なのだ。情報とは、自分だけが知っていても意味はない。現代では、それをいかに他の人に伝えるかが勝負になっている。
 ・・(中略)・・
本書では、それを「国際メディア情報戦」と名付けた。その戦いは、21世紀に入りさらに激しさを増し、国際社会のあらゆる面に広がっている。そのプレイヤーも、アメリカ大統領からPRエキスパート、国際テロリストまであらゆる層に広がっている。(P.4~6)

現代とは、「影響力競争」の時代なのである。それは、敵を叩くよりも、一人でも味方を増やす競争だ。「数の力」で敵を包囲し、敵を圧倒する戦いなのである。モノをいうのは広告宣伝ではなく、「PR」(パブリック・リレーションズ)である。「イメージ」のチカラである。映像とコトバによるイメージのチカラである。秘密情報を握るよりも情報発信する時代なのである。しかし虚偽情報や情報捏造は逆効果だけでなく、命取りになりかねない。

つまるところ、旧来の常識は完全に死んだのである。日本人は考え方を抜本的に転換しなくてはならないのである。これは国家レベルだけではなく、企業組織でも、個々人でも同様だ。学校内でも家庭内もそうだろう。

「イメージ」が「リアリティ」を凌駕する時代である。現代の「戦場」を制するのはイメージのチカラといって過言ではない。「グローバル世論」を形成するのは国家ではなく、目と耳をもった個々の人間だ。その一人一人の脳内に好印象を植え付け、自分の味方に変えることがカギになる。

ブランド戦略構築と同じロジックである。ビジネスパーソンなら「マインドシェア」をめぐる戦いという表現をつかってもいいだろう。味方づくりである。ファンづくりである。

いちど味方にしたら継続的に味方になってもらわなければ意味はない。サステイナブルでなければ意味はない。しかし、強力なイメージもあっという間に逆転されることもある。だからこそ「戦い」なのである。「情報戦」なのである。


米英を中心とする英語メディアによって世論形成がされるという現実

「国際メディア情報戦」の主戦場である「国際メガメディア」とは、端的にいって米英を中心とする英語メディアのことである。米英アングロサクソンを中心とする英語メディアによって世論形成がされるというのが世界の現実なのだ。

英国のBBC、米国のCNN、FOX、そして地上波のABCやNBCもまた。いいわるいではない、これが世界の現実だ。この流れのなかに中東カタールのアルジャジーラなどの新興勢力も含まれる。

そう、英語なのである。英語が支配的なグローバル言語なのである。たとえ一億人を越える使用者がいるといっても、残念ながら日本語はローカル言語に過ぎないのである。映像によるイメージだけではない。英語によって脳内に形成されるイメージのチカラもまた、きわめて大きな武器となるのである。

著者は現役のドキュメンタリー番組ディレクターだが、NHKの番組をもとに執筆した書籍デビュー作『戦争広告代理店-情報操作とボスニア紛争-』(講談社、2002)で明らかにしたように、ボスニアが国際世論を味方につけた最大のカギは、「民族浄化」(ethnic cleansing)というキャッチコピーの発見と英語化である。これが決定的な意味をもったのだ。

(『戦争広告代理店』(高木徹、講談社、2002) より)

「民族浄化」(エスニック・クレンジング)というコトバは一度でも耳にしたらけっして記憶から消えることがないほど強烈なコトバである。そして「民族浄化」というバズワードがタグやインデックスとなって、映像や音声イメージと結びつき脳内に刻みつけられ、そのコトバを聞くたびにイメージ記憶が想起されることになる。

「民族浄化」というコトバの普及とともに、「ボスニアは"善人" セルビアは"悪人"」というイメージが完全に定着しまった。これをひっくり返すのは容易なことではない。それくらい映像とコトバによって形成されたイメージの影響力は強力なのである。


日本はいま「国際メディア情報戦」のまっただなかにいる

著者が「終章 倫理をめぐる戦場で生き残るために」で指摘しているように、「現代の総力戦」はメディアの力をつかって自らの倫理的優位性を世界に納得させることにある。テレビ、新聞雑誌、ハリウッド映画、オリンピックまで含めた「国際メディア総力戦」なのである。

日本にとって、「いまそこにある危機」とは中韓「反日」連合との戦いだ。だが、「メディアの力をつかって自らの倫理的優位性を世界に納得させる」という点においては、現時点においては劣勢にあることは否定できない。厳しい戦いを強いられている。この意味は本書を通読することで、いやというほど知ることになろう。

第二次世界大戦後にホロコーストが「人道に対する罪」として確立した。事後法は遡及不可能という批判はあるが、これが米英を中心にした英語世界、ひいてはグローバル世界全体の「価値観」だ。その他の類似の行為もまた「人道に反する行為」とみなされる。事実そのものの提示も重要だが、人に訴えるチカラが強いのは」イメージであり、それはパーセプションの問題なのだ。

その現実を踏まえたうえで、いかに日本の味方を一人でも多く増やしていくか。世界中でいかに一人でも日本のファンを増やすかという競争をしなくてはならないのだ。相手を叩くだけでは最終的に勝つことはできない。「自らの倫理的優位性を世界に納得させる」ことが重要なのである。

現在ではテレビの国際放送が「国際メディア情報戦」の中心であるが、もちろんインターネットもそのなかに含まれるし、旧メディアであるラジオや新聞雑誌やパンフレット、そして書籍も含まれる。

いや、英語ではなく日本語によるなにげない個人的な「つぶやき」もまた「情報発信」である。ブログやツイッター、フェイスブックなどのSNSにおける発言はデジタル情報であり、シェアをつうじていとも簡単に「拡散」される。そういう意識が重要である。国民すべてが「国際メディア情報戦」の担い手なのだ。その自覚が必要なのだ。

ふたたび繰り返すが、この本は現代人の必読書である。必ず読んでいただきたい。もし読んでいなければ、『ドキュメント 戦争広告代理店』『大仏破壊』もあわせて読んでほしいと思う。

日本と日本人が国際社会のなかで生き残るためのマインドセットと武器を手に入れるために。




目次

まえがき
序章 「イメージ」が現実を凌駕する
第1章 情報戦のテクニック-ジム・ハーフとボスニア紛争
 1 アメリカを動かし、世界を動かす
 2 「民族浄化」の誕生
 3. 敵には容赦しない
 4 日本ではなぜPRが根付かないか
第2章 地上で最も熾烈な情報戦-アメリカ大統領選挙
 1 1992年のウォー・ルーム
 2 ピンチをチャンスに変えたオバマ 
第3章 21世紀最大のメディアスター-ビンラディン
 1 ビンラディンの「基地」と「雲」
 2 スター記者を狙え
 3 アルカイダから届いた番組企画書
第4章 アメリカの逆襲-対テロ戦争
 1 ブッシュ政権に呼ばれた「広告界の女王」
 2 ビンラディンのカリスマを破壊する
 3 物語としてのビンラディン殺害
第5章 さまようビンラディンの亡霊-次世代アルカイダ
 1 アルジェリア人質事件
 2 ボストンテロ事件
 3 オープンソース・ジハード
第6章 日本が持っている「資産」
 1 日本の強みをどうPRするか
 2 情報戦どころではない
 3 なぜ東京は勝てたか
終章 倫理をめぐる戦場で生き残るために
あとがき

著者プロフィール

高木 徹(たかぎ・とおる)
1965年、東京生まれ。1990年、東京大学文学部卒業後、NHK入局。ディレクターとして数々の大型番組を手がける。NHKスペシャル「民族浄化~ユーゴ・情報戦の内幕」「バーミアン 大仏はなぜ破壊されたのか」「情報聖戦-アルカイダ 謎のメディア戦略-」「パール判事は何を問いかけたのか-東京裁判・知られざる攻防-」「インドの衝撃」「沸騰都市」など。番組をもとに執筆した『ドキュメント 戦争広告代理店』(講談社文庫)で講談社ノンフィクション賞・新潮ドキュメント賞をダブル受賞。二作目の『大仏破壊』(文春文庫)では大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。






<参考>

タリバーンによる「人類の文化遺産」バーミヤン仏教遺跡の破壊について

アフガニスタンを事実上制圧しているイスラーム原理主義集団タリバーンが、「人類の文化遺産」バーミヤンの仏教遺跡の破壊を開始したと報道されている。考えただけで激しい怒りを感じる。このように不寛容なタリバーンに対しては、武力行使を含めた国際的制裁が必要ではないか。武力行使が仏教の理念に反することは十分わかっているが、とはいえ、このような文化破壊が公然と行われるのを座視していいのだろうか?
同じアジアでも、東南アジアの状況はまったく異なる。事実上のイスラーム国インドネシアには、世界の三大仏教遺跡の一つであるボロブドゥール立体曼荼羅があるが、ジャワ島民はこれを破壊するどころか、ジャワ島の誇りとして旗に描いているぐらいだ。アフガニスタン隣国のイスラーム国パキスタンですら、観光資源ともなりうるガンダーラの仏教遺跡を保護している。
イスラームは本来的に寛容なはずである。オスマン帝国がかつてそうであった。しかしながら、タリバーンは違う。イスラームの国際的イメージをはなはだしく悪化させているタリバーンの行為は、イスラーム法に照らしてまったく問題がないといえるのだろうか。
国連ユネスコの破壊中止勧告のほか、ニューヨークのメトロポリタン美術館やインド政府が磨崖仏を引き取ってもかまわないと申し出ているらしい。タリバーンには、イスラーム法の厳密な解釈にとらわれることなく、柔軟な交渉をおこなってもらいたい。イスラームの国際イメージを取り返しのつかないまでに悪化させることは、自らの命運に跳ね返ってくることを認識しなくてはいけない。それとも、イスラーム原理主義者には因果応報なんて観念は存在しないのか(2001年3月3日)。
(出典: つれづれなるままに(2001年3月3日)







<ブログ内関連記事>

ファクトよりもイメージで動くのが人間のさが

書評 『陰謀史観』(秦 郁彦、新潮新書、2012)-日本近現代史にはびこる「陰謀史観」をプロの歴史家が徹底解剖

「史上空前規模の論文捏造事件」(2002年)に科学社会の構造的問題をさぐった 『論文捏造』(村松 秀、中公新書ラクレ、2006)は、「STAP細胞事件」(2014年)について考える手助けになる

「セルフブランディング」と「セルフプロデュース」、そして「ストーリー」で「かたる」ということ-「偽ベートーベン詐欺事件」に思う


イメージの記憶と想起のメカニズム

書評 『脳の可塑性と記憶』(塚原仲晃、岩波現代文庫、2010 単行本初版 1985)

書評 『受験脳の作り方-脳科学で考える効率的学習法-』(池谷裕二、新潮文庫、2011)記憶のメカニズムを知れば社会人にも十分に応用可能だ!


「情報ダダ漏れ時代」の「情報戦」

書評 『ウィキリークスの衝撃-世界を揺るがす機密漏洩の正体-』(菅原 出、日経BP社、2011)

書評 『グローバル・ジハード』(松本光弘、講談社、2008)-対テロリズム実務参考書であり、「ネットワーク組織論」としても読み応えあり

映画 『ゼロ・ダーク・サーティ』をみてきた-アカデミー賞は残念ながら逃したが、実話に基づいたオリジナルなストーリーがすばらしい

バカとハサミは使いよう-ツイッターの「軍事利用」について

書評 『バチカン近現代史-ローマ教皇たちの「近代」との格闘-』(松本佐保、中公新書、2013)-「近代」がすでに終わっている現在、あらためてバチカン生き残りの意味を考える
・・「反共」という「敵を叩くアンチ」から「倫理的優位性」の主張への転換


情報発信力を鍛える

書評 『ことばを鍛えるイギリスの学校-国語教育で何ができるか-』(山本麻子、岩波書店、2003)-アウトプット重視の英国の教育観とは?

書評 『言葉でたたかう技術-日本的美質と雄弁力-』(加藤恭子、文藝春秋社、2010)-自らの豊富な滞米体験をもとに説くアリストテレス流「雄弁術」のすすめ

書評 『外国語を身につけるための日本語レッスン』(三森ゆりか、白水社、2003)-日本語の「言語技術」の訓練こそ「急がば回れ」の外国語学習法!
・・外国語に翻訳しやすい日本語を意識して書くこと、これが外国語上達の「急がば回れ」でかつ「もっとも確実」な方法である




(2012年7月3日発売の拙著です)





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