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2015年1月12日月曜日

「近代化=西欧化」であった日本と日本人にとって、ヒツジのイメージはキリスト教からギリシア・ローマ神話にまでさかのぼって知る必要がある

(「良き羊飼い=キリスト」 4世紀ローマ wikipediaより)

「近代化=西欧化」であった日本と日本人にとって、ヒツジは西欧イメージと密接に結びついている。

ヒツジは、中国大陸から中近東にかけてのユーラシア、さらには西欧に至るまで当たり前のように存在するのだが、日本に定着したのは明治維新による「近代化=西欧化」の時期以降のことにすぎないからだ。

だから、どうしてもヒツジから連想するイメージは西欧的なものとなりがちだ。まずは羊毛生産とと皮革生産のために飼育が始まったのであり、マトンやラムなどの食肉として意識されるようになってから、そう年月がたっているわけでもない。

日本国内の飼育地はアメリカの影響の強い北海道が中心であり、輸入元はもともと英国の植民地であったオーストラリアやニュージーランドである。したがって、どうしてもアングロサクソン圏の連想が強い。概して家畜というものは、動物園でも見かけることもあまりない。

さらにいえば、かつては日本の食卓でも一時期はよく食べられたマトンは、臭いがキツイという理由で本州ではほとんど目にすることがなくなり、スーパーなどの食肉店で入手可能なのは子ヒツジの肉であるラム肉に限られている。そのラム肉でさえ、牛豚鶏と比べればマージナル(=周辺的)な存在に過ぎない。

インテリアとして導入された羊毛つきの皮革であるムートンも、かつてほどポピュラーではなくなったようだ。日本人は畳の生活からフローリングという木の床の生活にライフスタイルを変えたが、床に敷いた絨毯に座る遊牧民スタイルは定着しなかった。朝鮮半島のオンドル部屋のような床暖房でもない限り、床の絨毯に直接座るのは子どもくらいなものだろう。

北海道はさておき、ヒツジは日本人の日常にはない。だから、どうしてもイメージというアタマのなかだけの観念的な存在であるのは仕方あるまい。


「西洋文明におけるヒツジのイメージ

「迷える羊」(=ストレイ・シープ)、「生贄のヒツジ」、「良き羊飼い」(=グッド・シェパード)、「神の子ヒツジ」(=アグネス・デイ)、など、ヒツジにまつわる表現やイメージは、日本の場合、もっぱら英語をつうじて日本語世界に入ってきたものが大半だ。キリスト教聖書の日本語訳をつうじて。

だが、ヒツジといっても、すくなくともヒツジ(sheep)と子ヒツジ(lamb)の区分は絶対に必要である。『羊たちの沈黙』というホラー映画があるが、原題は The Silence of the Lambs である。だから正確に訳せば「羊たち」ではなく「子羊たち」としなければ、この映画のタイトルが示唆するものを感じ取ることができないのである。

子ヒツジ(lamb)が成長すればヒツジ(sheep)となるのは、魚でいえばハマチが成長してブリになるのと似ている。日本人が厳密にハマチとブリを区別しているのと同様、西欧世界においては子ヒツジとヒツジは厳密に区別しなくてはならないのだ。

西欧世界においてヒツジがいかなるイメージとして捉えられてきたかを知るには、『イメージ・シンボル辞典』(アト・ド・フリース、山下圭一郎他訳、大修館書店、1984)の項目を調べてみるのがよい。オランダの英文学者が英語で執筆した辞典の日本語訳である。出版されてからすでに30年以上たっているが、内容的には古さはない。


ヒツジ関連の項目としては、「sheep」(ヒツジ)、「lamb」(仔ヒツジ)、「shepherd」(羊飼い)、「ram」(雄ヒツジ)の4つがとりわけ重要である。ヒツジが日常生活にない日本語人からすればヒツジでまとめてしまえばいいではないかという気もするが、それぞれ別個の項目として立てられていることに注意を払う必要があるのだ。

以下、それぞれの項目について、主要部分を抜き書きして引用しておこう。項目の説明は、キリスト教とギリシア・ローマ神話という西洋文明の基礎をなす二本柱にかかわるものである。エジプト神話への言及もあるのは、ギリシア世界の背後には地中海の対岸にあるエジプト文明があるからだ。

sheep ヒツジ

1. 春を表す:雄ヒツジの角で表される白羊宮(物事の始まりと火を表す ⇒Aries)と関連する
2. 無垢、単純、上品、誠実を表す
 a アベルと関連する。遊牧民アベルのヒツジは農耕民カインに殺された
 b 最後の審判の日には、右手に置かれたヒツジは神の祝福を受け、左手に置かれたヤギは永遠の罰を受ける、とされる(『マタイ』25:33)
 c オオカミの反対物
3. 愛情、慈悲を表す: ヒツジは強者にその肉を与え、弱者にもその乳を与え、こごえる者にはその羊毛を与える
4. 生贄(いけにえ)として捧げられる
 a 白いヒツジ(ヒツジに限らず動物一般)は空の神々への生贄として祭壇に捧げられ、黒いヒツジは冥界の神々への生贄として側溝の中に捧げられる
 b 黒いヒツジは嵐の神に捧げられ、白いヒツジはおだやかで船旅にふさわしいゼピュルス(=西風)に捧げられた(『アエネイス』3:120)
 c キリスト教では、キリストを表す
5. 群居性、指導者への(盲目的な)追従を表す
6. 無力を表し、流浪するイスラエル人のたとえに使われる
7. 頑迷、愚昧であることはよく知られている
8. 踏み迷うことを表す
9. 雲を表す
10. 予言能力をもつ。占いと天候予知に使用された
11. 「高利貸し」Usuryの持ち物(イコン)
12. イブの持ち物。楽園追放後、イブはヒツジの毛を紡がなくてはならなかった」
13. 歯を表す
14. 羊毛の刈り込みは昔から重要な祭りである
15. ヒツジの皮
16. ヒツジの腸は、楽器の弦に使われることから(人の心をなごませる)音楽を表す
17. 【民間伝承】
 a 清浄(神聖)を表す:クリスマス(ときに復活祭)にヒツジは夜明けとともに起き、東に向かって3度頭をたれる
 b ヒツジの群れに出会うことは幸運のしるしであるが、人はその群れの中を通り抜けてはならない
 c 魔術に関連する。たとえば、小枝を突き刺したヒツジの乾いた心臓は、愛のまじないに使われる
 d 天気を予言する。ヒツジが落ち着きなくしきりに鳴くと、激しい雨が降る
 e ヒツジの体のいくつかの部分、たとえば頭部からとったT字形の小さな骨、ウマの首あてに吊される皮の小片などは、安全のお守りになる


lamb 仔ヒツジ

1. 可憐さ、寛大さ、従順さを表す
2. おとなしさ、弱さを表す
3. 無邪気さを表す
 a. オオカミとライオンの反対
 b. キリストを表す。『イザヤ』(53:7)では、キリストは毛を刈られるときにじっとおとなしくしている仔ヒツジにたとえられている。ヨハネは殉教に際し、キリストを「世の罪を取り除く神の仔ヒツジ」と述べている(『ヨハネ』1:29)。地下墓地では、キリストは12頭の仔ヒツジの使徒にとりかこまれている
4. 生贄(いけにえ)に供される。旧約では1日に2回供される。また復活祭用の仔ヒツジもある
5. 節制を表す
6. トラが神の怒りを表すのに対して神の愛を表す
7. 陽気さを表す
8. (ローマ神話の)ユノ、(白と黒の仔ヒツジを捧げられる)ヘカテ、またアフロディテのような太女神に捧げられる。水夫たちが海難に遭遇すると、白い仔ヒツジを生贄にする。すると、ゼウスの息子カストルとポリュデウケスが(海の女神アフロディテに捧げられた)スズメを連れ、水夫たちを救うために順風に乗ってやってくる
9. ヘルメスとディオニュソスに捧げられる。ディオニュソス祭ではディオニュソス(=豊穣)を解放するために冥界の神々に仔ヒツジが生贄として供される
10. 【紋章】 忍耐と温順を表す
11. 【民間伝承】 
 a 魔女や妖術師は仔ヒツジ(ないしはハト)には姿を変えることはできない
 b 復活祭の朝、日の出時に岡にのぼると、太陽の中に旗をもった仔ヒツジを見ることができる
 c 黒い仔ヒツジのいないヒツジの群れは繁殖しないだろう。しかし2頭以上いるのはよくない
 d 悪い前兆:仔ヒツジが異常に増えると、戦争の前兆となる 


shepherd 羊飼い

1. 羊飼いであるか、羊飼いにたとえられる神々:アヌビス(エジプト)、アッティス(フリュギア)、パリス、タンウーズとマルドゥック(バビロニア)、ヘルメス(ギリシア)、アポロ、ヤハウェ(『イザヤ』40:11を参照)
2. 捨てられた神々や英雄たちは羊飼いによって発見されたり、育てられたりした。たとえば、(一説によればイダ山の羊飼いったいに育てられた)ゼウス、ロムルス、キュロス、キリスト、(彼が石=ほら穴から生まれたとき羊飼いが見守っていたといわれる)ミトラ
3. 遊牧民のあいだでは羊飼いの長は、王にして聖職者である。たとえば、ダビデ、モアブの王メシア(『列王記 下』3:4)、ヨセフ(選ばれた者であることを示す色彩豊かなマントをまとっている)など、そのためフブライ人にとっては、一般に羊飼いは指導者を表すようになった。たとえば、モーセ、ダビデ、キュロス、メシア、羊飼いと隠者は同じような服装をしていた
4. ヒツジを連れた神々:牧神パン、ヘルメス(「雄ヒツジを連れた者」)、エンディミオン、アリスタイオス、キリスト
5. 昔から知恵の守護者とされた。羊飼いがデルフォイの最初の神託を聞いた(プルタルコス『神託の衰退』)
7. 霊魂の導師、すなわちヒツジの魂を死者の国に送る案内人を表す。ヘルメスもキリストも霊魂導師の役割をはたす
8. 田園詩にでてくる(とくに一目惚れをする)木訥な恋人
9. (省略)
10. (省略)
11. 【連結語句】 
 a 「羊飼いの杖」:エジプトでは(王の)権力を表す。キリスト降誕のエンブレム。また、司教のもつ牧杖との関連から、精神的導師のエンブレム
 b 「羊飼いの娘」:ジャンウ・ダルクがそうである
 c 「羊飼いの祭典」:(バビロンでは)春分に行われる
 d 「羊飼いの笛」:牧神パンの笛のことで、風を表す
 e 「羊飼いの星」:金星


ram 雄ヒツジ

1. 聖(太陽)王または神のエンブレムで豊穣、復活を表す。雄ウシの神々は雄ヒツジの神々とも重なる傾向がある
 a 元来、太陽王は羊皮を身にまとっていることが多かった。のちには雄ヒツジをもって白羊宮の支配(=春)を表すようになった
 b 祭司には白く、犠牲者には黒かった「羊毛」が、ゼウスの手では金色に変わった。「金羊毛」
 c ディオニュソスはヘラの怒りを逃れて雄ヒツジに変身した
 d 春になって美の三女神(=豊穣)をほら穴(=地下界、冬のすまい)から連れ出すヘルメスは雄ヒツジをともなう姿で描かれることが多い
 e ヤヌス神はときに(たとえばローマでは)羊頭で、1つの角が前方に他の角が後方に向いている
 f ポセイドンおよびエロースへの供え物
 g アブラハムとイサクの物語では太陽英雄(イサク)の身代わりの生贄となる
 h 「ヒツジの群れ」の「導き手」であるとともに、生贄のヒツジでもあるキリストを表す(中世ではヒツジの角が「荊冠」の表象であると信じられた)
2. エジプトなどでは一角獣の異形として魂を表す
3. 創造神のエンブレムで、猛々しく道を切り開くものを表す
4. 風を表す:エジプトでは風は羊頭または羊身で描かれた
5. 犠牲に供されるものとして平和を、またその猛々しさからは戦いを表す
6. 牡牛座の雄ヒツジとしてペルシアの象徴
7. エジプトでは湾曲した角をもつヒツジはアモン、波形の角のヒツジはクヌム、ヘルシェフ、またはアルサベスを表す
8. 天敵はゾウ
9. 【紋章】
 a 忍耐、節制、和解を表す
 b ヒツジを飼う権利を表す
 c 指導者を表し、公爵のエンブレム
10. 「雄ヒツジの角」にかんしては shofar を見よ
11. 【民間伝承】 魔女に関連:雄ヒツジは(ヤギと同様)「悪魔」の化身であるので、しばしば魔女がこれに乗っている
12. 【童謡】 (省略)



こうやって見てくると、キリスト教以前にギリシア・ローマ神話があり、さらにその前にはエジプト神話があって、ヒツジのイメージが西欧世界で形成されていったことがわかる。基本的に遊牧とヒツジに依存した経済構造が共通していたわけであるが、東洋世界とは異なるイメージが西欧で発展したいったのは、ギリシア文明とキリスト教の融合に求めることができるだろう。

(牧神としてのヘルメス ギリシア神話からキリスト教へ wikipediaより)



西欧世界におけるヒツジは「牧畜段階」と対応

西欧思想史を、メタファーとしての動物イメージで解説したのが、 『思想としての動物と植物』(山下正男、八坂書房、1994 原著 1974・1976) である。このブログでもすでに取り上げたが、とくにヒツジの位置づけを知るために、再度取り上げてみたい。

メタファーとしての動物イメージは、①シカ、②ヒツジ、③ウマ(あるいはウシ)で表現される。それぞれ意味するところは以下のとおりである。

①シカ: 人類の「狩猟段階」における動物シンボル
②ヒツジ: 「牧畜段階」における動物シンボル
③ウマ(あるいはウシ): 「農業段階」における動物シンボル

ヒツジは、家畜化された動物の代表であり、群れの存在のヒツジと羊飼いのイメージが、キリスト教のもとにおいては聖界と俗界の両面にわたっての支配のメタファーとして機能したのである。「良き羊飼い」とはキリストのことを意味するようになった。

このメタファーは、旧約聖書と新約聖書のヘブライ的世界観だけでなく、古代ギリシアの世界観と共通するものであった。羊と羊飼いのメタファーにおいて、ヘブライズムとヘレニズムが融合しているのである。ヘブライズムはヘブライ語の旧約聖書、ヘレニズムは古代ギリシアをベースにしたギリシア語の新約聖書に代表される世界である。

初期キリスト教の「ヒツジと羊飼い」のメタファーから、「ブドウ栽培」という耕作メタファーに移行することによって、ヨーロッパでのキリスト教布教がスムーズに進んだことが『思想としての動物と植物』で説明されている。


以上、西欧文明におけるヒツジのイメージについてざっと整理しておいた。だが、ヒツジは西洋だけでなく、中東から中国大陸に至るユーラシア大陸全体で飼育されてきた存在である。

まずは、西欧文明におけるヒツジのイメージを把握してくことは、「近代化=西欧化」を経験した日本人にとっては、必要不可欠の「教養」といっていいかもしれない。

そのうえで、漢字に表現されたヒツジ(=羊)の意味を知ることが、西洋世界と東洋世界をともに把握することにつながるのである。





<関連サイト>
 
・・『新共同訳聖書』でも『口語訳聖書』でも語句検索が可能





<ブログ内関連記事>

西欧文明とヒツジ

西欧文明の根幹をなすキリスト教とヒツジの関係を考えるには、まずは『コンコルダンス』を開いてみることだ

書評 『思想としての動物と植物』(山下正男、八坂書房、1994 原著 1974・1976)-具体的な動植物イメージに即して「西欧文明」と「西欧文化」の違いに注目する「教養」読み物
・・西欧文明におけるヒツジのイメージについて。家畜化された動物の代表として羊。群れとしての存在の羊と羊飼いのイメージが、キリスト教のもとにおいては聖界と俗界の両面にわたっての支配のメタファーとして機能

フランスの童謡 「雨が降ってるよ、羊飼いさん!」(Il pleut, Il pleut, bergère)を知ってますか?


ギリシア神話

ヘルメスの杖にからまる二匹の蛇-知恵の象徴としての蛇は西洋世界に生き続けている


食肉としてのヒツジ

サッポロビール園の「ジンギスカン」を船橋で堪能する-ジンギスカンの起源は中国回族の清真料理!?

書評 『食べてはいけない!(地球のカタチ)』(森枝卓士、白水社、2007)-「食文化」の観点からみた「食べてはいけない!」
・・羊と羊肉についての記述がこの本にはある





(2012年7月3日発売の拙著です)












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