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2015年2月21日土曜日

映画 『アメリカン・スナイパー』(アメリカ、2014年)を見てきた-「遠い国」で行われた「つい最近の過去」の戦争にアメリカの「いま」を見る


映画『アメリカン・スナイパー』(アメリカ、2014年)を、日本公開の初日の初回に見てきた(2015年2月21日)。原題は American Sniper、日本語版もそのままカタカナに置き換えた、余計な装飾語のないシンプルなタイトルだ。
 
米軍によるフセイン政権打倒後に治安が極度に悪化したイラク。駐留米軍によるテロリスト掃討作戦を描いた戦争映画である。この映画もまた、米海軍特殊部隊のネイビー・シールズものである。
  
米軍史上最強のスナイパー(=狙撃手)として「レジェンド」と讃えられる主人公クリス・カイル。この映画は、クリス・カイルの自伝をもとに製作されたドキュメンタリータッチの戦争映画であり、主人公とその家族、そして友人たちとの関係を軸にしたヒューマンドラマである。
 
クリス・カイル(1974~2013)は、志願して入隊してから除隊までの6年間の合計4回イラクの任務で、公式記録で合計160人を射殺した実在のスナイパーであった。味方からは「レジェンド」(=伝説)と呼ばれて絶大な信頼を受け、敵からは「悪魔」と呼ばれて、その首には高額の懸賞金がかけられていた。
  
ハリウッド映画をほとんど見なくなったわたしだが、それでも戦争映画は見る。現在84歳のクリント・イーストウッド監督の最新作だが、見に行ってきたのはそれだけが理由ではない。良質なアメリカの戦争映画には、アメリカ社会が抱える問題が集約的に表現されるからだ。生死にかかわるテーマには、アメリカ人の心の奥底も垣間見ることになる。


映画の大半はイラクにおける市街戦

映画がはじまると響き渡るのは、繰り返される「アッラー・アクバル」の音声。「神は偉大なり」を意味するアラビア語によるアザーンである。

そう、映画の舞台はサッダーム・フセイン政権崩壊後のイラクである。映画のほとんどがイラクにおける激しい銃撃戦のシーンである。ラマディ、ファルージャ、サドルシティといった、かつて日本でもテレビ報道をつうじて聞き慣れた地名が舞台である。

秩序がほぼ完全に崩壊し、治安が極度に悪したイラク。米軍が戦うのは正規軍ではない。政権崩壊後に跋扈(ばっこ)するテロリストである。その中心にいるのは、イラクのアルカーイダの指導者であったザルカーウィ。アメリカはこの男を最大の標的としていた。
   
海軍特殊部隊隊員の主人公のミッションは、スナイパーとして海兵隊による索敵作戦の援護射撃を行うことにある。だが、安全地帯から敵を狙撃することに飽き足りない主人公は、海兵隊員たちと行動をともにすることを志願する。海兵隊は、絶対に仲間を見捨てないというモットーがあるが、海軍特殊部隊のシールズもまた同じである。

市街におけるゲリラとの戦いにおいては、私服姿の一般市民がじつはテロリストの協力者ということが少なくない。つまり戦闘員と非戦闘員の識別がきわめて困難なのだ。

子どもや女性もまた、自爆テロ要員として味方の米軍を狙っていつ攻撃をしかけてくるかわからない。非戦闘員の一般市民を殺害すれば罪はきわめて重い。しかし基本的に一般市民の協力をとりつけないと治安維持の任務は遂行できない。

狙撃するか否かは基本的に隊長の判断にもとづくが、ギリギリの場面においてはスナイパー自身の判断にゆだねられる。ストレスのきわめて高い過酷な戦場は血圧を上昇させ、タフで屈強の兵士ですら精神的に極度に疲弊させ、蝕んでいく。

戦場で死傷しなくても精神の病を患うものが続出する。心を病んだまま、トラウマを抱えたままの帰還兵が少なくないのはベトナム戦争のときと変わらない。主人公クリス・カイルの悲劇的な最期もまた、そのことと無縁ではない。

(米国版ポスター)

「遠い国」で行われた「つい最近の過去」の戦争

クリス・カイルはテキサスの生まれ。マッチョな価値観が支配的な保守的な南部の出身である。

子どもの頃からライフル射撃を仕込まれた主人公は、こういう教えをたたき込まれて育っている。

世の中には3つのタイプの人間しかいない。ヒツジ(sheep)と、ヒツジを襲うオオカミ(wolf)と、ヒツジを守る番犬(sheep dog)である。男の子は、ヒツジを守る番犬になれ、と。

きわめて単純明快で、かつキリスト教的な色彩のつよい価値観である。アメリカ南部は「バイブル・ベルト」と呼ばれている地域である。

敵と味方をわける単純明快な価値観は、主人公の行動規範となる。もちろん、女性や子どもを撃つことにためらいがなくはない。だが、みずからのうちに体言化された価値観にもとづいてミッションを遂行する。

だが、世の中すべての人がこの価値観を共有しているわけではない

戦場の現実を知ろうともしない一般市民の無理解。「内向き志向」のつよまる祖国アメリカへのいらだち。日本人にとってだけでなく、アメリカ人にとってすら、出征兵士やその家族や友人を除いては、日常生活とは関係の薄い「遠い国の戦争」でしかないのだという苦い事実。

スナイパーとしてのミッションを完璧に遂行できなかったという不完全燃焼感戦場で仲間たちを助けられなかったという悔恨の念。良き夫であり良き父であろうとするが、「心ここにあらず」と妻のいらだちを誘発してしまう。

使用された音楽はきわめて少なく、映画のかなりの場面でマシンガンの射撃音が響き渡る。音楽はエンドロールの直前で終わる。沈黙のなか流れるエンドロール。クレジットに並んだ人名を見ていると、墓碑銘を読んでいるような気がしてきた。

現在84歳のクリント・イーストウッド監督は、第二次世界大戦も、ベトナム戦争もみな同時代としてリアルタイム見てきた世代である。

クリント・イーストウッド監督には、日米が全面的に戦った太平洋戦争を日米双方の視点で描いた二部作がある。日本側の視点で描いた『硫黄島からの手紙』と、アメリカの少数民族の視点で描いた『父親たちの星条旗』である。いずれも良質な戦争映画である。

『アメリカン・スナイパー』はまた違った余韻が残る。「遠い過去」ではなく、「つい最近の過去」を描いたものだからでもあるだろう。戦争映画ではアメリカ史上最高の興行収入をあげたという。
 
アメリカ人にとってすら、当事者と関係者以外には「遠い国の戦争」であったイラク戦争アメリカの「いま」と、アメリカ人の心の奥底にあるものを知る上でも必見だと思う。





PS 『アメリカン・スナイパー』 は、2014年度の作品への第87回アカデミー賞で「音響編集賞」を受賞した。アカデミー音響編集賞(wikipedia)を参照。音楽をミニマムに、臨場感を出すための効果音の効果が最大限に引き出されたことが評価されたのだろう。(2015年2月26日 記す)




<関連サイト>

映画 『アメリカン・スナイパー』(日本版 公式サイト)

American Sniper - Official Trailer [HD] (オフィシャル・トレーラー)

「史上最強の狙撃手」、イラク帰還兵に射殺される (米テキサス)(AFP、 2013年2月4日)

「アメリカン・スナイパー」モデルを射殺した男が終身刑 (Reuters、2015年2月25日)
・・「米テキサス州の裁判所は24日、米海軍特殊部隊「ネイビー・シールズ」の元狙撃手、クリス・カイルさんを射殺したとして、エディー・レイ・ルース被告(27)に仮釈放なしの終身刑を言い渡した。

(2015年2月25日 情報追加)


<ブログ内関連記事>

ネイビー・シールズもの

映画 『ローン・サバイバー』(2013年、アメリカ)を初日にみてきた(2014年3月21日)-戦争映画の歴史に、またあらたな名作が加わった
・・米海軍特殊部隊ネイビー・シールズが1962年に創設されて以来、最悪の惨事となった「レッド・ウィング作戦」(Operation Redwing)

映画 『ゼロ・ダーク・サーティ』をみてきた-アカデミー賞は残念ながら逃したが、実話に基づいたオリジナルなストーリーがすばらしい
・・パキスタン国土内に潜伏するウサーマ・ビン・ラディン殺害計画に動員されたのは米海軍特殊部隊SEALSであった!

映画 『キャプテン・フィリップス』(米国、2013)をみてきた-海賊問題は、「いま、そこにある危機」なのだ!
・・救出作戦を実行し成功したのは米海軍特殊部隊SEALS


イラク戦争とその後の情勢

書評 『イラク建国-「不可能な国家」の原点-』(阿部重夫、中公新書、2004)-「人工国家」イラクもまた大英帝国の「負の遺産」

本年度アカデミー賞6部門受賞作 『ハート・ロッカー』をみてきた-「現場の下士官と兵の視線」からみたイラク戦争

映画 『ルート・アイリッシュ』(2011年製作)を見てきた-近代世界の終焉と「傭兵」の復活について考える ② ・・これもイラク戦争もの

「イスラーム国」登場の意味について考えるために-2015年1月に出版された日本人の池内恵氏とイタリア人のナポリオーニ氏の著作を読む

書評 『イスラム国-テロリストが国家をつくる時-』(ロレッタ・ナポリオーニ、村井章子訳、文藝春秋、2015)-キーワードは「近代国家」志向と組織の「近代性」にある


戦闘員と非戦闘員が入り乱れる市街戦

書評 『松井石根と南京事件の真実』(早坂 隆、文春新書、2011)-「A級戦犯」として東京裁判で死刑を宣告された「悲劇の将軍」は、じつは帝国陸軍きっての中国通で日中友好論者だった
・・南京攻略作戦は日本軍にとっては戦闘員と非戦闘員の識別が困難な市街戦であった


戦場におけるチームワーク

映画 『加藤隼戦闘隊』(1944年)にみる現場リーダーとチームワーク、そして糸川英夫博士
・・「過ぎし幾多の 空中戦/銃弾うなる その中で/必ず勝つの 信念と/死なば共にと 団結の/心で握る 操縦桿」(主題歌より)


アメリカの保守主義

書評 『追跡・アメリカの思想家たち』(会田弘継、新潮選書、2008)-アメリカの知られざる「政治思想家」たち
・・会田弘継氏作成の「地域別に見たアメリカの思想傾向」の地図を参照


■クリント・イーストウッド監督作品

映画 『インビクタス / 負けざる者たち』(米国、2009)は、真のリーダーシップとは何かを教えてくれる味わい深い人間ドラマだ

(2015年6月14日 情報追加)




(2012年7月3日発売の拙著です)










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