How Starbucks Saved My Life (=スターバックスはいかに私の人生を救ったか)という本が面白いので一気に読んでしまった。
アメリカでベストセラーになっているというので取り寄せて読み始めたのが2009年、途中まで読んでそのままになっていたものだ。すでに6年もたっているので、あらためて最初のページから読み始めたのだが、これがじつに読ませる内容なのだ。
著者の Michael Gates Gill (マイケル・ゲイツ・ギル)という人は、世界的な広告会社でエグゼクティブだったが、財務重視の英国企業に買収されたため、未成年の子供も含めて家族を抱えて50歳台前半でリストラされてしまった人。家柄も学歴も申し分ないという、古きよき時代のエリートビジネスマンであった人だ。
リストラ後、一人でコンサルタントをやっていたが、約10年後の64歳になって二進(にっち)も三進(さっち)もいかなくなる。そして、偶然のことからスターバックスの店舗で働くことになる。64歳の元エリートの白人男性チャンスをくれたのは、自分より36歳も年下の28歳の黒人女性であった。
現場の仕事をつうじて自分の人生を取り戻していくという内容の実話をベースにしたパーソナル・ライフストーリー。
構成が巧みで文章もうまいので、あたかも物語を読むかのように、ついつい引き込まれて最後まで読んでしまったという次第。いわゆる「スタバ本」であるが、下手な宣伝よりも、はるかにスターバックスの広報になっているのではないかな。
テーマは、仕事をつうじて人間の尊厳を取り戻すこと。ある意味では成長物語だが、青少年のものではなく、挫折からの復活をなしとげたシニア世代の成長物語だ。人間はいつでも、いつまでも仕事をつうじて成長できる(!)ということを身をもって示しているわけだ。
人間は自分語りのストーリーをもたなくては生きていけないとはよくいわれることだが、とくに失敗からの人間性回復において、ストーリーのもつ力は自己治癒力そのものだといってよいのだろう。
全体の5分の4くらい読んでから調べてみたら、すでに5年前の2010年に日本語訳が出版されていたことを知った。『ラテに感謝! How Starbucks Saved My Life-転落エリートの私を救った世界最高の仕事』(マイケル・ゲイツ・ギル、ダイヤモンド社、2010)。うかつなことに(?)、またく知らなかった。
日本語訳の出来については知りませんが、もしまだ読んでなかったら、読んでみたらいいと思いますよ。あるいは英語版で。
「人生において仕事することの意味」を考えるヒントになるかもしれませんね。
目 次 (日本語版)
1 ラテを飲む側からだす側になるまで
2 知らなかった現実がいっぱい
3 たった一言で人生が変わった
4 カウンターに立つ準備はOK?
5 いい笑顔を見せよう、ここはブロードウェイだ
6 百万ドルのパンチ
7 勝者と敗者の分かれ目
8 クビになるかもしれない
9 バーの仕事に挑戦しよう
10 人生を変えてくれた店との別れ
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・・「理屈をこねずに働こう」と、マルチンが言った。「人生を耐えられるものにする手立ては、これしかありません」など、働くことの意味についての名言のかずかず
コンラッド『闇の奥』(Heart of Darkness)より、「仕事」について
・・・そして「地獄の黙示録」、旧「ベルギー領コンゴ」(ザイール) ・・「ただ僕にはね、仕事のなかにあるもの--つまり、自分というものを発見するチャンスだな、それが好きなんだよ」(『闇の奥』の主人公のセリフ)
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