2011年5月24日火曜日
イサーン料理について-タイのあれこれ(番外編)
イサーン地方は、タイの東北地方。現在のラオスから、タイ東北部、タイ北部にかけては、じつは同じラオ族の居住地域。同じタイといっても、そもそも微妙というか、かなり存在なのである。
タイという国は、じつは国名もそうであるが、じつは古くて新しい国である。もともとは暹羅(シャム)と自らのことを自称していた(・・正確にいうとサヤーム。日本人は Siam という英語つづりからシャムと誤解したようだ)。
自由を意味するタイという国名になったのは 1939年、まだ100年もたっていない。タイはまだまだ「国民形成途上」にある状態といっても言い過ぎではないだろう。明治維新以後の日本が、北海道を併合し、琉球王国(=沖縄)を併合し、「日本国民」を創り上げていったプロセスと似ている。
交通体系から何から何まで、首都のバンコクを中心に放射状に設計されているタイという中央集権国家においては、つねに「都市と地方の対立」がつきまとってきた。都市バンコクの中流階級は、露骨に地方を蔑視した視線を隠そうともしない。
この点は、いまでこそ東京一極集中が進んでいるものの、中心が複数あって楕円形の日本とは大きく異なる点である。日本でも地都市と地方の格差は狭まったかに見えて、またふたたび拡大しつつあるのだが。
バンコク市内で屋台で営業している人たち、バイク便の運転手、天秤棒をかついで農産物を商っている農民などは、みな東北地方から出稼ぎできているイサーンの人たちである。貧富の差が、日本とは比較にならにほど、目に見える形で明らかなのが、バンコクという都市の姿である。
■激辛のさらに激辛のイサーン料理は、バンコクでも定番に
そのくせ、バンコクではイサーン料理が流行している。イサーン料理を前面に打ち出している店もあるが、たいていの料理店では、もともとイサーン料理であったものがメニューに入っているのが当たり前になっている。
そもそも1980年代に日本でタイ料理店が激増した当時、タイ料理は辛い!というのが評判であった。韓国料理とならんで、唐辛子(プリッキーヌー)をたっぷりつかったタイ料理は、当時の「激辛ブーム」とあいまって、すっかり日本での市民権を得たものだが、イサーン料理はそのタイ料理よりも辛い。というより、タイ料理で辛いのは、イサーン料理起源であるものが少なくないようだ。
日本と比べれば、一年中、暑いといってもいいタイであるから、辛い料理が定着しているのは当然といえば当然だろう。だが、すべてが激辛というわけでもない。
わたしにとってのイサーン料理を紹介しておきたい。上掲の写真は典型的なイサーン料理。手前のビールに隠れていのが、独特のタレで焼いた焼き鳥のガイヤーン、左手には蒼いパパイヤをつかったサラダのソムタム、左手奥にはふかしたモチ米のカオニャオである。これが定番といったところだ。
ガイヤーン(焼き鳥)
ソムタム(青いパパイヤのサラダ)
ヤムウンセン(春雨サラダ)
ラープ(ブタ挽肉のサラダ)
じつは、ここに掲載した料理のすべてがイサーン料理ではなくラオス料理もふくまれている。
先にも書いたように、イサーン地方は、ラオスと同じくラオ族なのである! ラオス語の料理名は知らないが、タイ語とラオス語は言語的にかなり似ているので、料理名も似たようなものかもしれない。
ところで、イサーンといったら「虫料理」が有名。バンコクでも屋台で、虫の揚げ物をスナックとして売っている。これは東南アジアではどこでもあるので、イサーンに限った話ではないのだが・・・
以前、「今度むし料理を食べにいきましょう!」、といわれてゾっとした経験をもっている。
なぜ女性が虫料理なんか好きこのんで!と思ったが、よくよく考えてみたら、その頃はやりだした「蒸し料理」のことであった。ああ、まぎらわしい(笑)。
<関連サイト>
「バンコク騒乱」から1周年(2011年5月19日)-書評 『イサーン-目撃したバンコク解放区-』(三留理男、毎日新聞社、2010)
・・「バンコク騒乱」の赤服組は、タイ東北部や北部の農民が中心
仏歴2553年、「ラオス新年会」に参加してきた(2010年4月10日)-ビア・ラオとラオス料理を堪能
・・イサーン料理とラオス料理は基本的に共通しているが、コメからつくった麺の、いわゆる「ラオスそうめん」はタイで食べることはまずない
「ラオス・フェスティバル2010」 (東京・代々木公園)にいってきた
・・いわゆる「ラオスそうめん」
「ラオス・フェスティバル2014」 (東京・代々木公園)にいってきた(2014年5月24日)
・・ラオスのソーセージ
ラオスよいとこ一度はおいで!-ラオスへようこそ!
タイのあれこれ (2)-オースアン(タイ料理のひとつ)
タイのあれこれ (12) カオ・マン・ガイ(タイ料理) vs. 海南鶏飯(シンガポール料理)・・・
(2014年5月26日 情報追加)
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