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2017年5月12日金曜日

書評『ゲゲゲのゲーテ ー 水木しげるが選んだ93の「賢者の言葉」』(水木しげる+水木プロダクション、双葉新書、2015)ー これぞホンモノの生きた「教養」だ!



『ゲゲゲのゲーテ』とは、もちろん出版社がつけたタイトルだが、『ゲゲゲの鬼太郎』の「ゲゲゲ」と、かの世界的大文豪の「ゲーテ」がなぜ、そしてどう結びつくのか、ピンとこない人が多いかもしれない。たんなる語呂合わせにしては、あまりにもかけ離れた存在ではないか、と。

だが、漫画家の水木しげる先生は、ゲーテによって「自己形成」した人なのである。つまり、ゲーテを徹底的に読み込んだ人なのである。帯には、「水木さんの人生は80%がゲーテです」とあるように、それは水木しげるにとっての「自己認識」であるのだ。

妖怪ものだけでなく、戦記ものでも多くの名作を残している水木しげるだが、戦記ものは徴兵されて兵士としてラバウル島での実体験がベースになっているものが多い。

水木しげる自身は、旧制高校から大学に進学して学徒動員されたわけではないが、当時の知識青年と同様に、生きるとは何か、死ぬとはどういうことかに煩悶し、自分なりの答えを得たいともがき苦しんでいた。大東亜戦争に突入していた日本は、「徴兵イコール戦死」が、規定コースとみなされていた状況であったのだ。

片っ端から哲学書を読みまくったという。当時は「教養主義」の時代であった。そんなかで出会い、自分にもっともあっていると感じたのがゲーテであり、とくにゲーテの言行録であるエッカーマンの『ゲーテとの対話』(岩波文庫)であったのだという。ほとんど暗記するまで読み込んだということだ。

岩波文庫の三冊本は、出征の際も背嚢(はいのう)に入れてもっていったという。戦地で読むことはなかったので、ある意味、お守りとしての意味があったようだ。戦争から復員してからも、30歳代までゲーテは何度も読み返していたそうだ。

水木しげるにとって、まさにゲーテが血肉と化したのである。これぞホンモノの「教養」というべきだろう。「教養主義」的な「教養」でもなく、飾り物でもなく、たんなる知識でもない。カルチャーとしての教養ではない、ホンモノの「教養」がそこにある。

「ゲーテはひとまわり人間が大きいから、読むと自分も大きくなった気がするんです」(水木しげる)。本書のためにおこなわれたインタビューで出てきた発言である。ゲーテと比べると、ニーチェやションペンハウアーは小さく見えるという発言には説得力がある。ゲーテは82歳まで生き抜いた人。水木しげるは、93歳まで生き抜いた。

本書に選択されているゲーテの名言で、わたしが気に入ったものをさらに精選してしておこう。なお、出典は水木しげるが読み込んだ岩波文庫の旧版ではなく、山下肇訳の岩波文庫の新版から。

「精神の意志の力で成功しないような場合には、好機の到来を待つほかない」

「大事なことは、すぐれた意志をもっているかどうか、そしてそれを成就するだけの技能と忍耐をもっているかどうかだよ」

「探求と過ちは結構なことだ。探求と過ちを通して人は学ぶのだからね」

「われわれはただ(・・中略・・)黙々と正しい道を歩みつづけ、他人は他人で勝手に歩かせておこう。それが一番いいことさ」

ゲーテというと「世界の大文豪」として、読まれないまま図書館の配置される存在になってしまいがちだが、それではもったいない。水木しげるのゲーテには違和感も感じる人がいるかもしれないが、それもまたもったいない。

『若きウェルテルの悩み』や『ファウスト』といった作品もさることながら、「ゲーテの言葉」に親しむための入門として格好の存在ではないだろうか。水木しげるファンであれば、なおさらうれしい「遺著」である。




目 次     

水木しげるインタビュー
第1章 ものを創り出すこと
第2章 働くこと・学ぶこと
第3章 生きることはたいへんです
第4章 死の先にあるもの
水木しげる×武良布枝インタビュー






PS 本書が出版されたとき、すでに水木しげる先生は亡くなっていた?

水木しげる先生が亡くなったのは、2015年11月30日。この本が出版されたのは、奥付によれば2015年12月20日。初版の年月日は、だいたい実際の年月日よりも先になっているので、この本が出版された時点では、まだご存命だったのかどうかわからないが、手元にある第2刷(2016年1月8日)時点では、プロフィールに加筆されていない。まあ、妖怪もの作家の水木さんのことだから、「こちら側」だろうが「あちら側」だろうが、あまり違いはないのかもしれないが・・・・



<ブログ内関連記事>

■水木しげる関連

水木しげる先生がついに「あちら側」の世界へ行ってしまった(2015年11月30日)

水木しげるの「戦記物マンガ」を読む(2010年8月15日)

マンガ 『ビビビの貧乏時代-いつもお腹をすかせてた!』(水木しげる、ホーム社漫画文庫、2010)-働けど働けど・・・

『水木しげるの古代出雲(怪BOOKS)』(水木しげる、角川書店、2012)は、待ちに待っていたマンガだ!


■ゲーテ関連

ルカ・パチョーリ、ゲーテ、与謝野鉄幹に共通するものとは?-共通するコンセプトを「見えざるつながり」として抽出する

銀杏と書いて「イチョウ」と読むか、「ギンナン」と読むか-強烈な匂いで知る日本の秋の風物詩
・・ゲーテの『西東詩集』より。イチョウの記事では意図したわけではないが、奇しくも与謝野鉄幹の配偶者であた与謝野晶子とゲーテを一緒に扱うことになった。

「ルドルフ・シュタイナー展 天使の国」(ワタリウム美術館)にいってきた(2014年4月10日)-「黒板絵」と「建築」に表現された「思考するアート」
・・ゲーテの圧倒的な影響を受け血肉化していたのは、ドイツ語圏の思想家ルドルフ・シュタイナー。「精神世界」の探求者であるシュタイナーは、水木しげるに似ている側面がある。水木しげるが『神秘家列伝』でゲーテその人を取り上げていないのは、あまりにも血肉化しているために、対象として設定することができなかったためかもしれない


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