米国で公開されてから40年目に初めて日本公開が実現したという、幻の映画『Mishima』(1985年、米国)をDVDでひさびさに視聴した(2025年11月23日)。11月25日は三島由紀夫が自決してから55年になる。
若き日のロバート・デニーロが主演したハリウッド映画『タクシードライバー』(1976年)の脚本を担当したポール・シュレーダーによる1985年度の作品。総指揮は、フランシス・コッポラとジョージ・ルーカス。
当時は右翼の反発を恐れて、日本での公開が行えなかったという、いわくつきの作品だ。
名のみ高くして見ることの叶わないこの作品をなんとかして見たいと思って、米国の amazon.com から取り寄せたのは、2000年代の半ばだったと思う。それから20年近くたつ。
原題を Mishima: A Life in Four Chapters という、三島の生涯を主要作品を軸に4部構成で描いたこの作品は、日本人俳優によるセリフはすべて日本語、三島の語りを活かしたナレーションは英語による。米国版のDVDでは日本語セリフに英語字幕がつく。
初めて視聴したときの印象は、やはりなんといっても豪華絢爛だが前衛的な舞台装置であった。とくに金閣寺の模型と、砂に埋まった鳥居はインパクトがあって、ずっと記憶に残っていた。 そして、若き日の沢田研二の妖しい魅力と、右翼学生を演じた永島敏行の存在感。三島を演じた緒形拳には、ちょっと違和感を感じたものだった。
だが、今回あらためて視聴してみて思うのは、この作品をすばらしいものとしたのは、緒形拳の迫真の演技があってこそ、ということだ。
4部構成の最後は「ペンと剣の調和」と題されており、三島最後の日を描いたものだ。1970年11月25日、つまり三島の自決後に「憂国忌」となった日のことである。文武両道の意味。美を守るための武。そして、美の象徴としての日本刀。
「盾の会」の制服を着用し、森田必勝を含む学生4人とともに、いとも簡単に東部総監室に入ることができた三島由紀夫たち。そして、バルコニーからの演説と失望、三島みずからが監督主演した映画『憂国』をなぞるように自決に到るシーン。 https://www.youtube.com/watch?v=UYjyKiAotkc
ラストは、義のために立ち上がり、美に殉じ、みずから死を選んでいった登場人物たちのシーンが走馬燈のように流れて行く。 このシーンを見ていながら、三島以前の日本の長い歴史、三島以後の短い歴史のなかで自刃した日本人たち(・・腹を切った男性たちが圧倒的多数だが、匕首で喉を突いた武家の女性たちもまた)を思い、熱いものがこみ上げてくるのを感じたのであった。
つい最近、なにかに導かれるように乃木大将が自刃した部屋の前に立ったことが、そんな感想を引き出したのかもしれない。
幻の映画『Mishima』は、今回40年目にして初めて映画祭での特別上映が実現したということだが、ぜひ一般公開すべきであろう。米国版のDVDなら現在でも入手可能だ。
ことし2025年は「昭和100年」であり、1970年11月25日に45歳で自決した三島由紀夫の死から55年になる。つまり「三島由紀夫生誕100年」になるわけだ。
「憂国忌」を前にして、あらためて三島由紀夫の自決の意味を考える今日この頃である。
(画像をクリック!)
<関連記事>
読売新聞オンライン: 映画「MISHIMA」ポール・シュレイダー監督に聞く…「三島由紀夫は三島由紀夫を創作した」
クーリエ・ジャポン: 映画『MISHIMA』のシュレイダー監督が米紙に明かした「日本での抵抗」
<ブログ内関連記事>
(2023年11月25日発売の拙著です 画像をクリック!)
(2022年12月23日発売の拙著です 画像をクリック!)
(2022年6月24日発売の拙著です 画像をクリック!)
(2021年11月19日発売の拙著です 画像をクリック!)
(2021年10月22日発売の拙著です 画像をクリック!)
(2020年12月18日発売の拙著です 画像をクリック!)
(2012年7月3日発売の拙著です 画像をクリック!)
end

.png)
.png)
.png)
.png)
.png)
.png)
.png)
.png)












