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2010年8月12日木曜日

書評 『帝国陸軍 見果てぬ「防共回廊」-機密公電が明かす、戦前日本のユーラシア戦略-』(関岡英之、祥伝社、2010)-戦前の日本人が描いて実行したこの大構想が実現していれば・・・




戦前の日本人は、これだけのスケールをもった大構想を描き、着々と実行していたのだ!

 「防共回廊」構想。戦前の日本人は、これだけのスケールをもった大構想を自ら描き、着々と実行していたのだ。

 構想が存在したということに対する驚き、しかしながらそれが最終的に実現しなかったことの無念さ。「見果てぬ夢」となったこの構想がもし実現していれば・・・。

 読者は著者とともに茫然と立ちつくす思いを抱くことになろう。

 チベット、モンゴル、回民(=回族、中国のムスリム)、ウイグル。いずれも大陸国家中国の辺境、あるいは内部にありながら、漢民族の中国ではない、さまざまな"少数民族"である。

 これらの諸民族がすべてつながったとき何が実現するのか。この大構想こそが「防共回廊」、すなわち帝国陸軍が構想した、新興ソ連の南下を防ぎ、共産主義に対抗するための大構想であった。そしてこの回廊はアフガニスタンにおいて完結し、アフガンでドイツの勢力圏とリンクするという大構想。これを知るとき、読者は唸らざるをえないだろう。

 戦後米国による冷戦構造が構築される以前、地政学の観点から、帝国陸軍主導で行われた構想である。日本の敗戦後、この構想にかかわった関係者を尋問し、米国が徹底研究したことは記憶されるべきことである。

 そしてなぜEUも米国もアフガンに派兵しているかについても、その意味を理解することができる。いち早くアフガンの地政学的重要性を指摘していたのは大川周明であった。


 本書の功績の一つは、林銑十郎に光をあてたことだろう。日本史の教科書ではボンクラ扱いされているこの人物が、実はドイツ駐在武官時代にいち早くイスラームの重要性について認識を深め、長文のレポートを作成していること、退役後は大日本回教協会の初代会長になっているのである。

 戦前の日本が、大陸政策をつうじて、いかにイスラーム世界とのかかわりを深めていたのか、すっかり忘却の彼方に追いやっていたのである。著者はこの林銑十郎につらなる人脈を掘り起こし、戦前のイスラーム政策の全体像を明らかにしようと試みている。これら戦前の事実が掘り起こされた意義はまことにもって大きい。

 ようやく日本でも、チベット問題やウイグル問題が大きく報道されるようになったが、かつて日本人たちが、たとえ国策の一環であろうと、少数民族の独立運動に深くコミットしていたこと。大川周明の大川塾から多くの志士たちが、大陸の奥深くへと工作の任務を担って潜入していたことは、記憶しておきたいことである。満洲国と同様の緩衝国家構想がウイグルにあった・・・


 ユーラシア大陸でひたすら膨張政策を続け、さらには海洋へと進出を図る中国の存在を考えるとき、この構想が実現していれば、大陸情勢が現在とは大きく異なるものであったに違いないと無念に思うのである。もしあと10年早くこの構想が国策として実行に移されていれば・・・。

 結果として、米国を中心とした連合軍との戦争に敗れ、大陸から尻尾を巻くように撤退した日本の責任は、きわめて大きいといわざるをえない。この大構想は、大東亜戦争が本格化する数年前から本腰をいれたに過ぎなかったのである。


 敗戦とともに記憶を封印し、知らぬふりをしてきた戦後日本。近代(モダン)が終焉し、パラダイムチェンジを迎えつつある現在、虚心坦懐に過去を見つめ直し、歴史の連続性を回復する試みが多く行われるようになってきたことはうれしいことだ。戦後の呪縛を解き放ち、世界史における日本史の意義を確認するためにも、大きな一歩となることだろう。

 この構想の全体像をあきらかにし、さまざまな一次史料を読み込むことによって掘り起こした関岡氏には感謝の意を表明したい。まさの渾身の一冊である。

 本書を原作にして、マンガにしてもらいたいものだ。間違いなく、安彦良和の『虹色のトロツキー』に匹敵する大作となるだろう。

 ぜひ期待したい。


<初出情報>

■bk1書評「戦前の日本人は、これだけのスケールをもった大構想を描き、着々と実行していたのだ!」投稿掲載(2010年6月28日)
■amazon書評「戦前の日本人は、これだけのスケールをもった大構想を描き、着々と実行していたのだ!」投稿掲載(2010年6月28日)





著者プロフィール

関岡英之(せきおか・ひでゆき)

1961年、東京都に生まれる。慶應義塾大学法学部卒業後、東京銀行(現・三菱東京UFJ銀行)に入行。証券投資部、北京駐在員事務所などを経て、約14年間の勤務の後に退職。1999年、早稲田大学大学院理工学研究科に入学。2001年、同修士課程を修了。2007年より、拓殖大学日本文化研究所客員教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)


目 次

第一章 防共回廊の源流-チベットとモンゴル

 破壊された仏像
 ダライ・ラマ十四世法王との会見
 十九世紀、英露の「グレート・ゲーム」と日本
 東條英機の密命-「西北シナに潜入せよ」
 帰還命令を無視した諜報員・西川一三の行動原理
 ラサで聞いた「日本全滅」
 GHQの出頭命令と、自ら遺した手記
 チベットに潜入した日本人諜報員は、なぜモンゴル人に偽装したのか
 満洲事変の背景にあった「防共」
 松室孝良大佐の「蒙古国」独立構想
 「大東亜政策を容易にす」-日本を中心とする「環状連盟」とは
 モンゴル自治運動の指導者、徳王
 インド人諜報員、コード名「満洲国ナイル」
 成立した蒙古連合自治政府 85
 なぜ林銑十郎は「赤化」に敏感だったのか
 防共回廊構想の思想的源流 95
 「活仏」に色めき立った関東軍

第二章 イスラームと帝国陸軍-回民(中国ムスリム)

 知られざるイスラーム系民族「回民」とは
 対ソ戦略から対中戦略へのシフト
 大川周明と日本の「イスラーム元年」
 大日本回教協会創立-防共回廊構想の「思想」と「企画」の結節
 日本人ムスリム諜報員、小村不二男
 諜報将校・茂川秀和の知られざる生涯
 中国を震撼させた日本のイスラーム工作
 極東と近東を結ぶ、壮大な世界戦略
 孫文から蒋介石へ連なる大漢民族主義
 毛沢東は回民にどう対処したか
 結ばれた線-子息が語る茂川秀和
 北京収容所
 覆った死刑判決
 茂川秀和の戦後

第三章 機密公電が明かす世界戦略-ウィグル

 たどり着けなかった地-東トルキスタン独立運動の源流
 オスマン朝末裔の擁立計画
 廣田弘毅外相宛-カブール発極秘公電
 「アジア人のアジア」-防共回廊の最適のパートナーとは
 幻の東トルキスタン独立計画
 大川周明が気づいていた、アフガニスタンの地政学的重要性
 防共回廊構想の全体像-「空のシルクロード」計画
 亡命ウィグル人の日本での足跡
 中国共産党支配下のウィグル抵抗運動をたどる
 漢人暴徒が繰り広げた野蛮な光景
 大アジア主義と防共回廊構想の現代的意味とは
 「愛する民族よ、過去から教訓を得よ」



<書評への付記>

 この話は非常に面白い。もう少しこの構想が早く動き出していれば、日本の敗戦がもう少し先の話であったなら・・これらはいずれも What-if(もし・・だったら)の話である。

 まことにもって残念な話であるが、歴史を含め人間世界というものは「複雑系」であり、単純な因果関係で論じることには限界がある。さらにまた違う道を進んでいた可能性すらあるからだ。


 しかし、日本はユーラシア大陸の内部に過剰に関与すべきではない、との思いは私には強い。

 日本は「海洋国家」であり、「大陸国家」ではない。この意味において、戦後日本の戦略は間違ってはいなかったと考える。


 戦前のイスラームへの関与が国策に沿うものであったにせよ、人的交流もふくめてきわめて活発なものであったことは、近年になって日本人イスラーム研究者たちも自覚的に意識し、発言をするようになってきている。

 本書でも詳しく扱われているように、大陸においては、モンゴル、中国、ウイグルに関与することでイスラームとムスリムの存在を知り、深く関与するようになったこと。

 本書の直接のテーマではないが、オランダ領東インド(現在のインドネシア)、英領マレーへの関与をつうじてイスラームとムスリムの存在を知り、深く関与するようになったこと。
 これらの事実については、われわれも深く自覚すべきことである。いずれも大川周明博士が関与していた。


 私自身は、高校二年のときに遭遇した、1979年のイラン・イスラム革命のインパクトがきわめて大きかった。私の世代でイスラーム研究を志した人たちはみな、同じ経験をもっているようだ、
 
 本書のような本が出版されるということは、いびつな「戦後」が終わりを告げつつある兆しである。
 この動き自体はたいへん好ましい。


<関連サイト>

大川周明とイスラム(一橋大学加藤博研究室)
・・「大川塾」出身者の回想録など貴重な資料のアーカイブ


<ブログ内関連記事>

書評 『ノモンハン戦争-モンゴルと満洲国-』(田中克彦、岩波新書、2009)-もうひとつの「ノモンハン」-ソ連崩壊後明らかになってきたモンゴル現代史の真相

書評 『日本文明圏の覚醒』(古田博司、筑摩書房、2010)

書評 『海洋国家日本の構想』(高坂正堯、中公クラシックス、2008)
・・海洋国家日本にとってユーラシア大陸進出は無理があったのではないか?

書評 『「海洋国家」日本の戦後史』(宮城大蔵、ちくま新書、2008)

本日よりイスラーム世界ではラマダーン(断食月)入り

書評 『回想のモンゴル』(梅棹忠夫、中公文庫、2011 初版 1991)-ウメサオタダオの原点はモンゴルにあった!

(2015年1月17日 情報追加)




(2012年7月3日発売の拙著です)












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