◆イラン(2009年)カラー106分
◆監督:バフマン・ゴバディ
◆出演:ネガル・シャガギ、アシュカン・クーシャンネジャード、ハメッド・ベーダード
映画 『ペルシャ猫を誰も知らない』(2009、イラン)を見てきた。場所は、東京・渋谷のユーロスペース。
閉塞感の強い現代のイランの首都テヘラン。
何よりも自由を求める若者たちは、とくにミュージシャンやアーチストは、とにかく自由に表現したい、それが可能でないのなら海外にでたい、という強い思いを抱いて日々を過ごしている。
この映画は、2009年現在のイランのミュージシャンたちの思いをそのまま映像作品にした、ドキュメンタリータッチの「音楽映画」である
最初から最後まで、さまざまなジャンルの音楽が演奏される。インディー・ロックからヘヴィメタ、そしてなんとラップまで。伝統音楽のシーンもでてくる。
無許可でゲリラ撮影されたという映像をみながらテヘランの若者たちのことを考えつつ、ひたすら彼らが作り出す音の世界に浸ることになる。
ストーリーは、ロンドンで公演することを夢見る、インディー・ロック系のカップルが、バンドのメンバーを求めて、コネが豊富な便利屋の若者が紹介してくれるミュージシャンたちに次から次へと会ってゆく形で進行する。この便利屋の若者には、偽造パスポートとビザの作成の仲介も依頼している。
バンドのメンバーは集まったが、なんせ練習する場所を確保するのもままならない。カネが問題なのではない、当局の許可が下りない音楽表現行為は取り締まり対象であり、すぐに有無をいわせず逮捕されてしまうからだ。
息の詰まる世界。閉塞した現状。鬱積したエネルギーを発散させるため、非合法の「パーティ」に没入する若者たち・・・。痛切なまでの自由への憧れ。
1979年の「イラン・イスラーム革命」からすでに30年。10年が一昔前ならすでに、30年といえばジェネレーションに該当する。ここに登場する若者たちはみなおそらく30歳以下だろう。革命以後に生まれた世代であり、革命を知らないどころか、イランの閉塞状況からなんとかして脱出したいという気持ちは、ダイレクトに伝わってくる。
1979年にイラン革命が勃発したとき高校二年生だった私には、きわめて衝撃的な事件であった。あれから30年、日本は急上昇して急降下するというジェットコースターのような30年であった。
ではイランどうか。この国も激しい動乱をくぐり抜けてきた30年であったことは確かだ。
雪解けしたかにみえたイランの政治状況も、現在はまた閉ざされたまま、西洋世界を敵に回した孤立路線を邁進している・・・
この映画を撮影した4時間後に監督は出国し、主演の二人も出国したという。ディアスポーラになる覚悟のもとに。
私は、イランには行きたい行きたいと思っているが、いまだに実現していない。
閉塞感が強いとはいえ、その意思さえあれば自由に海外渡航できる自由な日本、パスポートを取得すること自体が困難なイラン。
どちら国にも、生きているのはフツーの人間である。
違うのはただ・・・
日本語版公式サイト(トレーラーあり)
http://persian-neko.com/index.html
No One Knows About Persian Cats - Official Trailer
(YouTube 英語字幕つきトレーラー)
end