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2011年1月10日月曜日

書評 『ハーバードの「世界を動かす授業」-ビジネスエリートが学ぶグローバル経済の読み解き方-』(リチャード・ヴィートー / 仲條亮子=共著、 徳間書店、2010)




ハーバード・ビジネス・スクール(HBS)における、国際ビジネスをめぐる政治経済についてのディスカッション用ケーススタディ

 本書はハーバード・ビジネス・スクール(HBS)の看板教授リチャード・ヴィートーの授業を AMP で受講した日本人女性エグゼクティブとの共著になるものである。

 AMP とは Advanced Management Program の略、日本語で言えば「上級マネジメントプログラム」となる。

 M.B.A.は基本的にフルタイムの学生を対象にした修士号のコースであるが、AMP はエグゼクティブ向けの 9週間という、比較的短期間の集中コースである。

 とくに HBS の AMP は世界最高峰にあるもので、米国だけでなく世界中の大企業を中心に、140名の経営幹部が送られてくる。世界中のエグゼクティブやその候補者たちが切磋琢磨する場なのである。なんせ学費は一人あたり 6万4千米ドルと半端じゃない。

 本書は、共著とはいっても、ベースはHBSの必須講義、ヴィートー教授の BGIE(Business, Government and International Economy:ビジネス、政府と国際経済)を日本人向けにやさしく紹介したものである。

 内容については「目次」を参照していただきたいが、「ジャパン・ミラクル」(=日本の奇跡)というケーススタディから本書が始まるのは、現在に生きる日本人ビジネスパーソンにとっては実に新鮮に写る。

 なぜかというと、「ジャパン・ミラクル」とは、1954から1971年までの17年間も続いた、年率10%以上の高度成長期のことだが、これをただ単に手垢のついた「高度成長」と表現してしまったのでは、ああその話ですかと黙殺されてしまう可能性が高い。

 しかし、これがヴィートー教授の手にかかると、現在の国際ビジネスを取り巻く環境を理解するための出発点になるのだ。

 なぜなら、これだけの長きにわたる高度成長は空前絶後であり、これほど国情と国家戦略がフィットして機能した例は他にないからだ。

 この「日本モデル」とその応用発展系である「シンガポール・モデル」を押さえて進める議論は、すんなりとアタマに入りやすい。

 いまやシンガポールの一人あたりGDPは日本を越えている

 この議論を皮切りに、アジアからは中国とインド、資源国からはサウジアラビア(および中東産油国)とロシア、そして欧州連合、最後に日本と米国について論じられる。

 「第6章 巨大債務に悩む富裕国」として、日本と米国が同じカテゴリーに分類されているが、この2カ国の共通点と相違点については、これは直接読んでじっくり考えてみるとよい。

 本書は、あくまでもディスカションの素材として捉えるべきものだ。あるいはたたき台といったほうが適切だろうか。

 AMP も含めたビジネススクールの授業とは、教授の講義をありがたく拝聴するのではなく、教授が挑発し、授業参加者の発言の応酬と教授のファシリテーションぶりにこそ意味があるからだ。

 残念ながらこの本は、サンデル教授による正義をめぐる「ハーバード白熱教室」のようなライブそのものではなく、それを再現するための工夫が足りないのが本書の弱点である。

 とはいえ、ビジネススクールの授業で使用するケーススタディの素材そのものは、日本語にしてしまえばこんなものだ、ということを知る意味では読む価値があるといえよう。
 だが、これを英語で(!)ディスカッションするのは、フツーの日本人にとっては、きわめて大変な苦行ではあることは確かなことだ。自分が教授の授業に参加した日本人エグゼクティブになったと仮定して読んでみるといい。

 自問自答しながら読み、著者の見解を鵜呑みにせず、仮説として批判的に読めば、「世界の読み方」の一つとして、得るところはきわめて大きいものがあるだろう。


<初出情報>

■bk1書評「ハーバード・ビジネス・スクール(HBS)における、国際ビジネスをめぐる政治経済についてのディスカッション用ケーススタディ」投稿掲載(2010年10月11日)

*再録にあたって大幅に加筆修正を行った。




目 次

序 世界の動きをいかに読み解くか
第1章 国が発展するための8つの軌道
第2章 アジアの高度成長
 1. 日本ミラクル 2. シンガポール
 3. 中国 4. インド
第3章 挟まって身動きがとれない国々
 1. メキシコ 2. 南アフリカ共和国
第4章 資源に依存する国々
 1. サウジアラビア/イスラム 2. ロシア
第5章 欧州連合という試み
第6章 巨大債務に悩む富裕国
 1. 日本 2. 米国
第7章 国の競争力とは何か
第8章 私たちのミッション
あとがき 世界の真の現状に触れながら学ぶ国際経済



著者プロフィール

リチャード・ヴィートー(Richard H.K. Vietor)

ハーバード・ビジネス・スクール(HBS)教授。アジア・イニシアティブにおけるシニア・アソシエイト・ディーン職も務める。1978年の就任以来、必須科目 BGIE(Business,Government & the International Economy)で国際政治、経済、企業間の役割について教鞭をとる。また、環境管理においても数多くのケースを手がける。受講者からは数多くの経営者や政府要人を輩出している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。

仲條亮子(なかじょう・りょうこ)

早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。米国シカゴ大学ブース・ビジネス・スクールにて MBA を取得。また米国ハーバード・ビジネス・スクールにて60年の歴史のあるAMP(Advanced Management Program)を日本人女性3人目として卒業。テレビ東京、テレビ朝日、CNN等で番組制作に携わった後、1996年からブルームバーグ情報テレビジョン株式会社に入社。1997年より同社代表取締役社長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。



<関連サイト>

HBS AMP

Richard H.K. Vietor(HBS Faculty & Research)・・教員紹介サイト

Business, Government & the International Economy・・コース紹介

ハーバード・ビジネス・スクールの 徹底した「ケース原理主義」の実態とは? (ダイヤモンドオンライン、2016年8月23日)
・・簡潔によくまとめられている

(2016年8月23日 情報追加)



<書評への付記>

amazonレビューのみで判断することはきわめて危険

 本書の amazonレビューをご覧になったらわかることだが、おしなべて否定的なものが多い。しかし、実際に書店の店頭でこの本を手にとってみると、すでに第三刷以上に達している。リアル世界では売れているということだ。それは本を直接手にとって中身を読めばわかることだ。

 この点からも、ネットでの評価とリアル世界での評価に大きな乖離(ギャップ)があることがわかる。私のこの書評も含めて、ネット世界での評価を鵜呑みにすることは危険である。

 amazonでの評価については、掲載されているレビューを読んでいると、いかに日本人の多くが、最初から与えられた答えを前提にした存在になってしまっているかがよくわかる。これはビジネスにおけるカスタマイゼーションの弊害ともいえるだろう。
 なんでもかゆいところまで手が届くようなサービスが施されていないとすぐに不平不満をもらす性癖。日本以外ではこんな手厚いサービスなど存在しない。このようなマインドセットでは、先進国の米国や欧州を含めて、国際ビジネスなどほど遠い。

 同じハーバード大学の授業といっても、学部生向けのサンデル教授の「白熱授業」と、大人しかもエグゼクティブが中心のヴィートー教授の授業が根本的に違うのは当然だろう。AMP が対象とするのはあくまでも大人のビジネス・エグゼクティブ、学部が対象とするのは20歳前後の経験の少ない学生である。

 そもそも、大学院のビジネススクールは、学部のハーバード・カレッジとは川を挟んで対岸にあり、まったくの別世界である。HBS はハーバード大学のなかでも異質な存在である。

 だいたい、活字本という形で活発な授業を再現するなど、たとえビジュアルを加えたとしても限りなく不可能に近い。

 授業風景を収めたビデオなら、雰囲気の一端は知り得ることもできるだろう。だが授業の本質はライブ性にある。講師もさることながら、参加者の顔ぶれと授業での貢献具合によって、授業が活発になるかどうかは大きく左右される。

 しかも、ケーススタディによる授業とは、授業に参加する前に、限られた時間のなかで事前にケースをしっかり読んでおくことが求められる

 何よりも本の形なのだから、ケースを読むという忍耐強い訓練をしなければならないのだ。
 そして可能であれば、少人数のスタディ・グループをつくってディスカッションしてみることだ。

 これこそが、エグセクティブに求めれれることなのであり、これに不平を漏らしているようでは、しょせんエグセクティブなどまったく手の届かない存在であろう。必要なのは忍耐力でもある。

 私が本書に目を通した限りでは、本書はあくまでもクラス・ディスカッション用のマテリアルとして読むべきものなのだ。共著者である仲條氏には、本書の使い方について、この点をもっと詳細に書いてもらうべきであった。これは出版社サイドの編集の問題でもある。

 結論:amazon のランキングやレビューは、冷静な眼でもって見るべし。けっして鵜呑みにしないこと!

 カール・マルクスのモットーではないが、「何ごとも疑え!」、だ。



<ブログ内関連記事>

「ハーバード白熱教室」(NHK ETV)・・・自分のアタマでものを考えさせるための授業とは

ハーバード・ディヴィニティ・スクールって?-Ari L. Goldman, The Search for God at Harvard, Ballantine Books, 1992
・・「教師の役割は、ソクラテスの産婆術に擬して語られることも多く、ケースメソッドは別名 Socratic method ともいわる。 この教育メソッドのキモは、ビジネスには唯一の解答というものはありえない、ということを学生に体得させることにある」

『ガラパゴス化する日本』(吉川尚宏、講談社現代新書、2010)を俎上に乗せて、「ガラパゴス化」の是非について考えてみる
・・「内向きのガラパゴス」日本、「外向きのガラパゴス」米国 という対比で考えてみる


「ジャパン・ミラクル」(=日本の奇跡)=「高度成長」

書評 『高度成長-日本を変えた6000日-』(吉川洋、中公文庫、2012 初版単行本 1997)-1960年代の「高度成長」を境に日本は根底から変化した


「日本モデル」の応用発展系である「シンガポール・モデル」

巨星墜つ リー・クアンユー氏逝く(2015年3月23日)-「シンガポール建国の父」は「アジアの賢人」でもあった

(2016年1月15日 情報追加)




(2012年7月3日発売の拙著です)







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