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2013年3月21日木曜日

書評 『7大企業を動かす宗教哲学-名経営者、戦略の源-』(島田裕巳、角川ONEテーマ21、2013)-宗教や倫理が事業発展の原動力であった戦前派経営者たちの原点とは?



宗教学者の島田裕巳氏が、宗教教団分析の手法をつかって企業組織の分析を試みたという本。戦前派の創業社長たちにとって、宗教や倫理が事業発展の原動力であったという原点が確認できる内容だ。

宗教であれば開祖に該当するのが、企業の創業経営者である。開祖伝が面白いのと同様、創業経営者の伝記も面白い。創業経営者のなかでも、宗教的、倫理的な色彩の濃い人たちは、たしかに宗教教団と似たような手法で事業拡大を行っているケースも少なくない。

その典型的な例としては、本書の第1章の松下電器(現パナソニック)、第3章のトヨタ自動車、第4章のサントリーである。トヨタを除けば、パナソニックもサントリーも大阪が発祥の地である。

松下電器の松下幸之助は、まさに日本の神仏の加護をもとに事業経営を拡大した人といって過言ではない。天理教の本部でみたシーンにインスパイアされたという有名なエピソードのほか、真言密教の世界観を反映した考えをもっていたことも本書で知ることができる。サントリーもまた創業経営者の鳥井信治郎は、松下幸之助と同様の傾向をもっていた人であった。

トヨタの豊田佐吉とその息子の豊田喜一郎は、神仏というよりも、二宮尊徳の報徳思想の根強い土地柄で生まれ育った人であることが、トヨタの合理的な倹約志向の基礎になっているようだ。宗教というよりも倫理だろう

第2章のダイエーの中内功は、セツルメント運動を推進したキリスト教宣教師の賀川豊彦の影響を間接的に受けているが、とくにこれといった宗教はない。毛沢東思想の矛盾論の影響は大きく受けているが毛沢東主義者ではない。

宗教教団分析の手法をつかって企業組織の分析を試みるという切り口はよいのだが、残念ながらイマイチという感がなくもないのは、本書に取り上げられたのがなぜ「7大企業」なのかの説明はないからでもある。選択の基準が不明なのだ。

第5章の阪急電鉄は、宗教とはいっさい関係なし。
第6章のセゾングループは、元共産党員であった堤清二。
第7章のユニクロの柳井正は、団塊の世代特有の価値観の持ち主。

はっきりいって、第5章以下はあまり読む価値はないというのがわたしの個人的な評価だ。評価をするとすれば前半は星5つ、後半は星2つといったところだろう。

むしろ、戦前派の創業経営者と戦後派の創業経営者の違いを際立たせたほうが面白い読み物になったのではないかと思う。だから、すくなくとも前半だけなら読む価値はある。

宗教教団においては開祖のカリスマをそっくりそのまま継承できないことは常識であるが、企業経営においても創業経営者のカリスマは伝承できない。創業者の理念が時代の変遷にともなってどう変化したか、それは経営学や経営史の観点を踏まえなければ正確に把握できないためである。その観点を欠いた本書は、はたしてビジネスパーソンには物足りないと映るのではないだろうか。宗教学者の限界である。

わたしが同じ内容で本を書くなら、戦前派はキリスト教系であれば、グンゼの波多野鶴吉、クラボーの大原孫三郎と大原総一郎の親子、キリスト教伝道者の米国人ヴォーリズが創業した近江兄弟社、仏教系ではミツトヨの創業経営者で仏教伝道協会の創設者・沼田恵範、戦後派であれば、京セラの稲盛和夫、二黒土星ゆえ九頭龍信仰をもつ日本電産の創業経営者・永守重信などをとりあげるところだ。

重要なテーマなので、経営学者からのアプローチも、宗教学者からのアプローチも、その双方ともに今後は必要であろう。狭い意味の宗教よりも、ひろく「価値観と経営」という観点のほうが、ビジネスパーソンを中心とする読者にとっては実り多いものとなるだろう。





目 次

はじめに
 企業社会としての日本
 経営哲学や理念は共同体を動かす基本原理だ
 宗教教団と企業は同じ角度から分析できる
第1章 松下電器産業(現パナソニック)
第2章 ダイエー
第3章 トヨタ自動車
第4章 サントリー(サントリーホールディングス)
第5章 阪急電鉄(現阪急阪神ホールディングス)
第6章 セゾングループ・無印良品
第7章 ユニクロ(ファーストリテイリング)
おわりに

著者プロフィール  

島田裕巳(しまだ・ひろみ)
1953年東京生まれ。宗教学者、作家。1976年東京大学文学部宗教学科卒業。同大学大学院人文科学研究科修士課程修了。1984年同博士課程修了(宗教学専攻)。放送教育開発センター助教授、日本女子大学教授、東京大学先端科学技術研究センター特任研究員などを歴任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。


<関連サイト>

松下幸之助は「宗教」をみて「経営」を悟った どうして宗教は盛大で力強いのか (江口克彦 故・松下幸之助側近、東洋経済オンライン、2016年6月10日)

(2016年6月10日 項目新設)


<ブログ内関連記事>

「宗教と経済の関係」についての入門書でもある 『金融恐慌とユダヤ・キリスト教』(島田裕巳、文春新書、2009) を読む
・・このブログ記事の最後に「島田裕巳という生き方」という文章を書いておいた

「やってみなはれ」 と 「みとくんなはれ」 -いまの日本人に必要なのはこの精神なのとちゃうか?
・・サントリーの創業経営者・鳥井信治郎

グンゼ株式会社の創業者・波多野鶴吉について-キリスト教の理念によって創業したソーシャル・ビジネスがその原点にあった!

「信仰と商売の両立」の実践-”建築家” ヴォーリズ
・・メンタームの近江兄弟社の創業者でもある

クレド(Credo)とは
・・キリスト教のほうが「ミッション」という性格がつよいためか、事業経営との親和性は明瞭にあらわれる傾向があるように思う。

書評 『叙情と闘争-辻井喬*堤清二回顧録-』(辻井 喬、中央公論新社、2009)-経営者と詩人のあいだにある"職業と感性の同一性障害とでも指摘すべきズレ"
・・共産党も宗教教団と考えれば、元共産党員も元信者という観点で分析できるはずなのだが





(2012年7月3日発売の拙著です)





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