つい最近まで知らなかったが、2014年7月31日に「成田とウラジオストクの直行便」が開設されたらしい。木曜出発の週一便ではあるが、成田空港と極東ロシアのウラジオストを結ぶ定期便である。このポスターは、上野から成田空港までむすぶ京成電鉄の駅の構内で見かけたものだ。
だいぶ以前のことになるが、かつて出張でウラジオストクに行ったときは、わざわざ新幹線で東京駅から新潟駅までいって、新潟空港からウラジオストクまで飛んだものだった。帰国はハバロフスクから富山空港に戻った。富山からは羽田まで ANA の国内便である。
国際便が成田空港から羽田空港にシフトしつつあるなか、成田空港はLCC(ローコストキャリア)の誘致を積極的に進めているという報道がなされているが、ウラジオストク直行便の開設は成田空港の発着枠に空きがでたためだろうか? 成田とウラジオストク直行便は事業収支の点からいっていつまでつづくかわからないが、日露のビジネスと人的交流のうえでは喜ばしいことである。
オーロラ航空と表記されているが、よりロシア語っぽくいえば「アヴローラ」に近い。ウラジオストクも「ヴラヂヴォストーク」。もちろん、カタカナではロシア語の音は再現できない。
「ヴラヂヴォストーク」は、東方(=ヴォストーク)を征服せよ(=ヴラヂ)という意味なので、「東方を征服せよ」という意味になる。日本人にとってはあまり好ましい地名ではないが・・・。
ウラジオストクには「金角湾」がある。黒海の出口にあるイスタンブールの金角湾から名前を借りたものだ。「金角」とは黄金の角(つの)のことで、ロシア語でいえば「ザラトイ・ローク」、英語ならゴールデン・ホーン(Golden Horn)である。
下図に示したのは、ウラジオストックで買ったウォッカの銘柄。シカの黄金の角が図案化されている。
(ロシア・ウォッカ 「ゴールデンホーン」(金角)
というわけで、当方も 「飛んでイスタンブール」をもじって、このブログ記事のタイトルを「飛んでウラジオストク」とした次第。「飛んでイスタンブール」は、1978年の庄野真代のヒット曲。
わたしはイスタンブールは2回、ウラジオストクは1回、両方とも自分の足で歩いて自分の目で見ているので、金角湾をつうじて両者につながりがあると言えるわけだ。
ウラジオストクは、ソ連時代は外国人立ち入り禁止都市であった。ソ連崩壊のおかげで、ソ連時代の潜水艦が一般公開されており、なかに入ることもできる。わたしもウラジオストク湾に係留されている潜水艦のなかに入った。
ソ連崩壊後の現在では、帝政時代の首都であったサンクトペテルブルク港に係留された軍艦も見学が可能だ。運河網の発達したサンクトペテルブルクは、「北のベニス」とも呼ばれていた。サンクトペテルブルクというは聖ペテロの町を意味するドイツ語である。
日本と同様、「近代化」が遅れて開始された「後進国ロシア」においては、「金角湾」も「北のベニス」も、「先進国」に対応するものをもってきて「ロシアの○○」と形容したものだ。「日本の○○」と命名したがる日本人と同様、後進国意識の表れかもしれない。
ウラジオストクの「金角湾」はイスタンブールの「金角湾」から来ているわけだが、19世紀当時のトルコはオスマントルコ帝国であったが、ロシアよりも先進地帯であったことはアタマのなかに入れておく必要がある。
百聞は一見にしかず。機会をつくってウラジオストクを訪問してみることをおすすめしますよ。ただし、治安はかならずしも良くないので要注意!
<関連サイト>
オーロラ航空 公式ウェブサイト(日本語)
オーロラ (航空会社) (wikipedia日本語版)
・・「2013年11月8日、サハリン航空とウラジオストク航空の合併により設立された[1]。社名は、投票で選ばれた「タイガ」に決まっていた。潜在的需要の見込まれる日本、韓国、中国では「シベリア」をイメージされることから、「オーロラ」という名称に改称した」。
飛んでイスタンブール 庄野真代 - YouTube
・・1978年のヒット曲
日本に一番近いヨーロッパ「ウラジオストク」の意外な素顔(FORBES日本語版、2017年9月6日)
・・「今年に入って、ウラジオストクを訪れる日本人渡航者が急増中だ。例年ビジネス関係者らなど年間5000人程度だったものが、今年上半期(1月~6月)すでに7000人を超え、年間で2万人を超えそうな勢いだ。背景には、今年8月にロシアが実施したビザ緩和がある。ネット申請による空港でのアライバルビザ取得(8日間滞在)が可能となったのだが、それを踏まえ、4月末から成田─ウラジオストク便は毎日、関空からも週2便の定期運航が始まった。新潟や福岡などの地方空港からのチャーター便も増えている。」
(2017年9月9日 情報追加)
<ブログ内関連記事>
■シベリアとロシア
書評 『「シベリアに独立を!」-諸民族の祖国(パトリ)をとりもどす-』(田中克彦、岩波現代全書、2013)-ナショナリズムとパトリオティズムの違いに敏感になることが重要だ
書評 『女三人のシベリア鉄道』(森まゆみ、集英社文庫 、2012、単行本初版 2009)-シベリア鉄道を女流文学者たちによる文学紀行で実体験する
『ピコラエヴィッチ紙幣-日本人が発行したルーブル札の謎-』(熊谷敬太郎、ダイヤモンド社、2009)-ロシア革命後の「シベリア出兵」において発生した「尼港事件」に題材をとった経済小説
(書評再録) 『プリンス近衛殺人事件』(V.A. アルハンゲリスキー、滝澤一郎訳、新潮社、2000年)-「ミステリー小説か?」と思って書店で手に取ったら…
ブランデーで有名なアルメニアはコーカサスのキリスト教国-「2014年ソチ冬季オリンピック」を機会に知っておこう!
書評 『ろくでなしのロシア-プーチンとロシア正教-』(中村逸郎、講談社、2013)-「聖なるロシア」と「ろくでなしのロシア」は表裏一体の存在である
■地名を取ってきた先の先進地帯
・・「北のベニス」はロシア帝国の首都であったサンクトペテルブルク
書評 『チューリップ・バブル-人間を狂わせた花の物語』(マイク・ダッシュ、明石三世訳、文春文庫、2000)-バブルは過ぎ去った過去の物語ではない!
・・先進国であったオスマントルコ
「自分の庭を耕やせ」と 18世紀フランスの啓蒙思想家ヴォルテールは言った-『カンディード』 を読む
・・主人公カンディードたちは最終的にイスタンブール近郊に落ち着くことになる
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