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2014年10月18日土曜日

マンガ 『プロデューサーになりたい』(磯山晶、講談社、1995)-人気TVドラマを生み出してきた現役プロデューサーがみずから描いた仕事マンガ


プロデューサーとはどんな仕事か知りたいと思っても、意外なことに就活本などを除けば、そのものずばり語った本というのがあまりない。

ずいぶん前のことだが、大型書店の元祖である東京駅前の八重洲ブックセンターのアート関連コーナーで本をさがしていたときに、ここで取り上げる『プロデューサーになりたい』(磯山晶、講談社、2004)に出会った。

おお、これこそまさに現役のTVドラマのプロデューサー本人がみずから描いたマンガであった! わたしはこのマンガを読んで、はじめてプロデューサーの仕事がどういうものかよくわかった。

著者の磯山晶(いそやま・あき)氏は、『池袋ウエストゲートパーク』、『木更津キャッツアイ』、『マンハッタンラブストーリー』などの人気TVドラマをプロデューッサーとして関与してきた人である。2013年の国民的ドラマとなったNHKの朝のテレビ小説『あまちゃん』で知名度が全国レベルになった、いまをときめくドラマ脚本家の宮藤官九郎を世に知らしめた立役者でもある。

もともとは、小泉今日子にあやかったペンネームの小泉すみれ名義で1995年に出版されたもののようだ。冒頭に掲載したカバー画はわたしが入手した新版もので、2004年の新版では作者名は本名になっている。


■TVドラマのプロデューサーは番組制作というプロジェクトのマネージャー

マンガを本職としているわけではないが、その仕事のすみずみまで熟知している現役のプロデューサーがみずから描いたマンガである。

あえて取材したわけではなくても描ける世界。だが、仕事にコミットしながらも、同時に距離をおいて自分も相対化してしまうという視点ができないことだ。社会学や人類学でいう参与観察法を無意識のうちに実践しているといってもいいだろう。

わたしはこのマンガを読んで、はじめてプロデューサーの仕事がどういうものかよくわかった。プロデュースやプロデューサー、ディレクターというカタカナコトバは、日常的によくつかう割には、意外とその中身がよくわかってないものだ。

プロデュースとは、さまざまな分野の専門家をまとめたチームとして、プロジェクトチームとして仕事を遂行することを指している。このマンガの場合は、TV局に所属するプロデューサーがTVドラマを作成するのが仕事である。、

番組制作ごとにプロジェクトが組成され、完了すれば解散する「番組製作チーム」として仕事が行われる。プロデューサーとはある意味ではプロジェクト・マネージャーでもある。

プロデューサーは、出演タレントのキャスティング、資金調達と予算管理も行う。タレント事務所や個人事務所との折衝、事前の取材や番組制作協力の取り付け、ロケ地の選択と確保など、仕事はじつに多岐にわたっている。

制作サイドでは、プロデューサー、ディレクター、音声、撮影、録画、デザイナーなどなど。外部の独立した専門家である脚本家、演出家、メイクアップなどなど。できあがった作品を広告宣伝するマーケィングや営業、広告代理店などなど。それぞれ異なる知識とスキルをもった「専門家」をまとめて、プロジェクトをスムーズに進行させるのがプロデューサーの役割である。

いわば「異質性のマネジメント」が求められる仕事である。同質性が前提とされてきた日本型組織とは異なるのである。

もちろんTV局のプロデューサーと、番組製作会社のプロデューサーでは違いもある。番組制作会社は、外部の業務委託先(=サブコントラクター)の位置づけであり、TV局と製作会社の関係はゼネコンのビジネスモデルと似ているようだ。

プロデューサー自身が番組制作のことを「モノづくり」という表現をするように、映像作品もまた「モノ」と捉えると、プロジェクトで仕事をすることが求められる傾向が強まりつつ現在、TVの世界以外でも応用可能な面もあるだろう。


女性マンガ家による仕事マンガは面白い

雑誌編集者の世界を描いた『働きマン』(安野モヨコ、小学館、2004~2007)についてはすでにこのブログでも取り上げた。また、マンガ雑誌編集者の世界を描いた『重版出来』(松田奈緒子、小学館、2013~)も面白い。

ほかにも取り上げるべき仕事マンガは多々あるのだが、なぜか女性マンガ家の作品が大いにことに気がつく。書評 『仕事マンガ!-52作品から学ぶキャリアデザイン-』(梅崎 修、ナカニシヤ出版、2011)-映画や小説ではなくなぜ「仕事マンガ」にヒントがあるのか? が取り上げた作品以外にも、『お仕事です』(柴門ふみ)や『おたんこナース』(佐々木倫子)などの作品も面白い。

男性よりも女性のほうが、働くということの意味について深く考える立ち位置にいるためだろうか。それとも仕事にコミットしながらも、のめり込みしすぎずに同時に周囲を観察することに長けているためだろうか。

男脳と女脳の話に還元してしまうのはあまりにも陳腐だが、主体的にコミットしつつ、自分からも距離をおいて冷めた観察を行うという参与観察法は、男性よりも女性のほうが得意なのかもしれない。すくなくとも女性は無意識にいつも実行しているのではなかろうか。

マンガとは直接関係ないが、そんなことも考えてみる。




著者プロフィール

磯山晶(いそやま・あき)
1967年10月7日東京生まれ。フェリス女学院高校を卒業後、1986年上智大学文学部新聞学科入学。1990年TBSテレビ入社。現在、TBSエンタテインメントに在籍中。プロデューサーとしては、’96年『Campus Note』を皮切りに、’97年には、自作漫画『プロデューサーになりたい』を自らプロデュースし、ギャラクシー賞を受賞。その後も、『池袋ウエストゲートパーク』『木更津キャッツアイ』『マンハッタンラブストーリー』などの人気ドラマを手掛ける。また、“小泉すみれ”のペンネームで漫画家としても活躍中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。



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プロデューサー関連

書評 『起承転々 怒っている人、集まれ!-オペラ&バレエ・プロデューサーの紙つぶて156- 』(佐々木忠次、新書館、2009)-バブル期から20年間の流れを「日本のディアギレフ」が綴った感想は日本の文化政策の欠如を語ってやむことがない

映画 『最後のマイ・ウェイ』(2011年、フランス)をみてきた-いまここによみがえるフランスの国民歌手クロード・フランソワ
・・音楽産業とプロデューサーとの関係

書評 『世界の子供たちに夢を-タツノコプロ創始者 天才・吉田竜夫の軌跡-』(但馬オサム、メディアックス、2013)-タツノコプロのアニメ作品を見て育ったすべての「子供たち」は必読!
・・アニメ作家とプロデューサー

書評 『世界一の映画館と日本一のフランス料理店を山形県酒田につくった男はなぜ忘れ去られたのか』(岡田芳郎、講談社文庫、2010 単行本 2008)
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ミッション(=仕事の目的)が明確なプロジェクトチーム型の仕事

「サッカー日本代表チーム」を「プロジェクト・チーム」として考えてみる

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書評 『飛雄馬、インドの星になれ!-インド版アニメ 『巨人の星』 誕生秘話-』(古賀義章、講談社、2013)-リメイクによって名作アニメを現代インドで再生!


「仕事マンガ」関連

書評 『仕事マンガ!-52作品から学ぶキャリアデザイン-』(梅崎 修、ナカニシヤ出版、2011)-映画や小説ではなくなぜ「仕事マンガ」にヒントがあるのか?

働くということは人生にとってどういう意味を もつのか?-『働きマン』 ①~④(安野モヨコ、講談社、2004~2007)

書評 『サラリーマン漫画の戦後史』(真実一郎、洋泉社新書y、2010)-その時代のマンガに自己投影して読める、読者一人一人にとっての「自分史」

働くということは人生にとってどういう意味を もつのか?-『働きマン』 ①~④(安野モヨコ、講談社、2004~2007)

『重版出来!①』(松田奈緒子、小学館、2013)は、面白くて読めば元気になるマンガだ!


参与観察法

書評 『村から工場へ-東南アジア女性の近代化経験-』(平井京之介、NTT出版、2011)-タイ北部の工業団地でのフィールドワークの記録が面白い

書評 『搾取される若者たち-バイク便ライダーは見た!-』(阿部真大、集英社新書、2006)-バイク便ライダーとして参与観察したフィールドワークによる労働社会学

マンガ 『アル中病棟(失踪日記2)』(吾妻ひでお、イーストプレス、2013)は、図らずもアル中病棟で参与観察型のフィールドワークを行うことになったマンガ家によるノンフィクション


その他

書評 『ゼロ年代の想像力』(宇野常寛、ハヤカワ文庫、2010 単行本初版 2008)-「アフター1995」の世界を知るために
・・「第7章 宮藤官九郎はなぜ「地名」にこだわるのか-<郊外型>中間共同体の再構成」が面白い。NHK連続テレビ小説『あまちゃん』の舞台は岩手県久慈市



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