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2014年12月1日月曜日

書評 『実録 ドイツで決闘した日本人』(菅野瑞治也、集英社新書、2013)-「決闘する学生結社」という知られざるドイツのエリート育成の世界とは何か


日本の社会科学にもっとも大きな影響を与えてきたドイツの社会学者マックス・ウェーバーには、頬に傷跡がある。大学時代に、防具なしの「真剣」勝負で決闘した痕跡である。このように19世紀後半の話だけでなく、ドイツには決闘がいまでも生き残っているのだ。

本書は、決闘(=メンズーア Mensur)を軸に描いたドイツ文化史である。しかも、著者自身が決闘の体験者であるという点が、たんなる文化史の域を超えた体験記としての面白さを堪能させてくれる。

西欧世界での決闘というと、中世の騎士はさておき、19世紀においてはピストルでの撃ち合いを想起する。名誉と誇りをかけた決闘で、ロシアの詩人プーシキンやフランスの天才数学者ガロアなどは若くして決闘で命を落としている。

19世紀英国のサッカレーの原作で、キューブリック監督の映画『バリー・リンドン』では、映画の後半で主人公の成り上がり者バリーは足を撃たれて不具となる。ピストルによる決闘では、お互いに空に向けて撃つことで引き分けにするという象徴的なものも少なくなかったようだ。

西欧世界では決闘は衰退したが、ドイツでは現在に至るまで決闘が生き残っているドイツの決闘はフェンシングによるものである。フェンシングといっても防具なしの真剣勝負だ。もちろん命を狙うことはないが、剣先が頬をかすめれば傷痕が頬に残るのである。

著者の体験は1980年代のドイツ。留学先のマンハイム大学留学中に誘われて学生結社「コーア・レノ・ニカーリア」の正会員となった著者が決闘を体験したのである。決闘の体験者が語る体験記は迫真性のあるものでじつに興味深い。


「学生結社」というエリート集団における水平的な人間関係

決闘(=メンズーア)の実録もさることながら、学生結社内における人間関係のあり方におおいに興味を感じた。ドイツの大学というと、かつて日本でも一世風靡した『アルト・ハイデルベルグ』の甘くせつない世界を連想するが、それとは大違いの男たちだけの秘密結社的世界が存在するのである。

学生結社は、男だけのホモーソシャルな世界である。ドイツの学生結社における決闘は、若者を「男」にするための課外教育体系であり通過儀礼でもある。日本でいえば若衆組のようなものであろうか。

本書には、ドイツの男子学生の20人に1人が「決闘する学生結社」のメンバーと書いてあるが、そもそも職業キャリア選択においてはデュアル・システムであり、大学進学率の低いドイツならではの状況なのだろう。ドイツでは大学生であることじたいがエリートであり、「決闘する学生結社」のメンバーはエリートのなかのエリート、しかも決闘体験者は超エリートということになるのだろう。

ドイツの大学からフンボルト理念と教養主義、そしてゼミナール制度を輸入した日本の大学ではあるが(・・わたしの母校の一橋大学もそうである)、学生結社はなぜか輸入しなかったようだ。あるいは制度としては日本の大学には定着しなかったというべきか。

日本の大学の体育会も、ドイツの学生結社と似た性格をもつ存在であるが、先輩後輩関係は生涯死ぬまで続き、水平関係が成立するのは同じ学年のみである(・・わたしは体育会合気道部の出身である)。ドイツのエリート学生の学生結社においては、メンバーシップ意識は水平関係なのである。日本とドイツはその点においても似て非なる存在であることがわかる。

アメリカの大学は、日本と同様、政治的には後進国だが高等教育においての先進国であったドイツから大きな影響を受けているが、学生結社を輸入した点においてアメリカの大学と日本の大学の違いがあるといえる。アメリカの大学の学生結社は男子学生はフラタニティ、女子学生はソロリティという。

アメリカにおいても、学生結社メンバー間の人間関係は水平的であり、日本のような先輩後輩の上下関係はない。ドイツもアメリカも、カトリックの修道院における修道士(=ブラザー)や修道女(=シスター)の延長線にあるというべきか。絶対者の前では人間は平等であるという理念は、エリート集団という閉鎖集団ににおいては実現し可能なのである。

西欧精神の根源としての騎士道にもつながる、勇気と誇りを若者に刻印するエリート養成の知られざるシステムがドイツの決闘(=メンズーア)であり、決闘する学生結社なのである。

知られざる世界を垣間見せてくれるだけでなく、西欧精神の根源について考えるうえでも貴重なドキュメントであるといえよう。






目 次

プロローグ
第1章 ドイツの決闘
 1. 学生の決闘 「メンズーア」とは
 2. 顔と頭の刀傷=シュミス
 3. 学生結社とは
 4. 決闘する学生結社と決闘をしない学生結社
 5. 昔の学生の決闘のきっかけは何だったのか
 6. 今日の学生の決闘はどのようにして決定するか
 7. ドイツの学生の決闘は法に触れないのか
第2章 決闘の掟
 1. 「男」になるための試練
 2. 騎士道精神
 3. 決闘のルールを定めたメンズーア規定
 4. 決闘を行う際の構成メンバー
 5. メンズーアの会場と見物人
 6. 決闘に至るまでの経緯
 7. 最初の決闘
 8. 実際の決闘の流れ
 9. 決闘に用いる剣
第3章 学生結社の日常
 1. 学生結社はどのような組織になっているのか
 2. 処罰規定
 3. 決闘の練習
 4. 剣術師範
 5. 親分と子分=ライププルシュとライプフクス
 6. 親友会員フクス時代
 7. 正会員としての入会を許可する儀式=レツェプツィオーン
 8. 正会員として活動する時代
 9. 酒宴(クナイペ)=学生結社の伝統的な飲み会
 10. 現役引退
 11. OB会員になること
 12. 戦いと絆の証し
第4章 伝承と継承-高貴なる野蛮
 1. 国民団(ナツィオーン)とは何か
 2. 新入生いじめの儀式と学生同郷人会ランツマンシャフト
 3. エリート養成機関-ドイツの学生結社とアメリカの学生クラブ「フラタニティ」
 4. ドイツの大学とアメリカの学生結社(クラブ)
 5. 結社(クラブ)ハウス
 6. 謎めいた入会の儀式や集会-そのルーツは
 7. 学生結社・学生秘密結社・秘密会に共通するものは何か
 8. ドイツの学生結社の特徴=高貴なる野蛮
エピローグ
あとがき


著者プロフィール

菅野瑞治也(すがの・みちなり)
富山県生まれ。京都外国語大学教授。文学博士。専門はドイツ文化史、ドイツ文学。ドイツのマンハイム大学留学中に学生結社「コーア・レノ・ニカーリア」の正会員となり、現在はOB会員。著書に『ブルシェンシャフト成立史-ドイツ「学生結社」の歴史と意義-』(春風社、2012)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。



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・・「新興国ドイツ」が人材育成の中核においたのが「大学」という制度であった。いわゆる「フンボルト型大学」という理想型である。これがその後の世界の大学のモデルとなる。「新興国アメリカ」もそうであり、「新興国日本」もまたそのモデルを採用した。「新興国ドイツ」モデルは、同じく西欧世界の「新興国アメリカ」にとっても、非西欧世界の「新興国日本」にとっても魅力的だったということだろう」

キング牧師の "I have a dream"(わたしには夢がある)から50年-ビジョンをコトバで語るということ
・・「米国ではどこの大学にもフラタニティー(fraternity・・女子はソロリティ sorority)という親睦組織がありますが、は中世ヨーロッパのフラテルニタス(=兄弟団)に由来するものです。ΦΒΚ(ファイ・ベータ・カッパ)など、ギリシア語の大文字3語で表記されていますが、秘密結社の名残でしょう。 フランス革命の理念である「自由・平等・博愛」の『博愛」は「友愛」ともいいますが、フランス語でフラテルニテ(fraternite)といいます。ラテン語のフラテルニタスからきたものです」

映画 『ソーシャル・ネットワーク』 を日本公開初日(2011年1月15日)の初回に見てきた
・・映画の中心になっているのは、クラブやフラタニティといったキャンパスでの社交(ソーシャルライフ)と学生の大半が暮らしている学生寮(ドミトリー)。

書評  『エリートの条件-世界の学校・教育最新事情-』(河添恵子、学研新書、2009)-世界の「エリート教育」について考えてみよう!





(2012年7月3日発売の拙著です)













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