(韓国映画『シルミド』の予告編からキャプチャした画像)
ここのところ緊張の度合いを増している北朝鮮情勢にかんして、「斬首作戦」の部隊編成を2017年12月1日までに行うと韓国軍部が表明しているが、これはまっとうな話だ。米軍の特殊部隊では北朝鮮侵入作戦は実行不可能。白人や黒人ではすぐにバレてしまう。
情報収集を含め作戦のコントロールは米軍が行うとしても、じっさいに北朝鮮内部に侵入して「斬首作戦」を実行するのは、韓国軍の特殊部隊になるのは当然だ。いわゆる実行部隊である。
韓国にとって「斬首作戦」は初めての作戦ではない。朴正熙(パク・チョンヒ)大統領時代の1971年には、特殊部隊による「金日成暗殺作戦」が実行寸前までいっている。金日成(キム・イルソン)はキム・ジョンウンの祖父。当時の最高指導者であった。
作戦のミッションは、「キム・イルソンの首を持って帰ること」(Our mission is to bring back the head of KIM Il-sung.)。ターゲットを暗殺して首を持ち帰ること、つまり「斬首作戦」ということになる。上掲のキャプチャ画像を参照。韓国の名優アン・ソンギが演じる特殊部隊の隊長のセリフである。
作戦そのものは直前に中止命令がでて未遂となったのではあるが、現代史の教科書には出てこない。この作戦は、その前に発生した1968年1月に発生した朴正煕(パク・チョンヒ)大統領暗殺未遂事件への報復を意図したものであった。
これは北朝鮮軍による首都ソウル侵入作戦であった。1968年1月21日、北朝鮮軍暗殺隊の31人の兵士が首都ソウルに潜入、韓国大統領府の「青瓦台」(チョンワデ)を囲むところまでいったが未然に発覚し、韓国側との激しい銃撃戦の末、29人が射殺され、1人が自爆したという事件である。
この語られることなく埋もれてた実話をもとに製作されたのが韓国映画の『シルミド』(2003年)。シルミドとは実尾島の韓国読み。この島で「キム・イルソン暗殺作戦」の過酷な訓練が行われていた。
この映画は、日本でも2004年に公開されている。もちろん映画なので事実そのものではなく脚色はあるが、この映画で「斬首作戦」にいたる過酷な訓練のプロセスをシミュレーションしてみるのもいいかもしれない。
映画の概要については、日本語字幕付きの予告編が YouTube で見当たらないので英語字幕付きの予告編でご覧いただきたい。「斬首作戦」からみの報道で、 『シルミド』について日本のニュース報道でまったく取り上げられないのが不思議だ。
現在の事象も過去の事例を参照すれば、よい広いパースペクティブからものを見ることが可能となる。韓国映画『シルミド』は、エンターテインメント作品として楽しんだらいいだろう。
<関連サイト>
米国が北朝鮮を攻撃できない「もう1つの理由」 米スパイが潜入不可能で、核・ミサイル施設の実態つかめず?(高濱賛、JBPress、2017年9月28日)
(2017年9月28日 項目新設)
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