日本人宇宙飛行士の野口聡一氏を乗せた、民間宇宙ビジネス関連企業スペースX社の「クルードラゴン」の打ち上げ成功のニュースが流れたばかりだが、いまや宇宙開発は民間が主導する時代になっている。
スペースX社は、テスラのイーロン・マスク氏のもう1つの主要テクノロジー・カンパニーだが、このほかアマゾンのベゾスのブルー・オリジンや、グーグルなどGAFAと総称される米国のネット企業大手がこぞって宇宙ビジネスに熱心なのはなぜか?
この本をざっと読んで、その理由がわかった。答えはリモート・センシングにある。つまり、宇宙から地球をリモート・センシングしてビッグデータを収集したいのだ。そして、それを分析することで多様なビジネスにつながっていくのだ、と。
なるほど、そういうことか。どうしても、宇宙ビジネスというと宇宙旅行とか火星開発に目が向かいがちだが、ビジネスとしての本質は別のところにあるのだな、と。
ただし、この本はあくまでもビジネスの側面にのも注目しているので、軍事目的という視点はない。既存の航空宇宙産業は軍事と密着な関係があるだけに、物足りない思いをしたのも正直なところ。その関連でいえば、中国の宇宙開発の話が弱いのも残念な点であった。
新型コロナウイルス感染症で身動きがとれない状態の関係者も少なくないが、さらに肥大化が進むGAFAが、さらに豊富な資金を投入して宇宙開発に邁進している。この事実を認識しておきたいものだ。
目 次はじめに なぜITの巨人は宇宙に巨額投資するのか? グーグル、アマゾン、フェイスブック、マイクロソフト、アップル……第1章 なぜ、IT企業の巨人は宇宙を目指すのか? BIG5が狙う「21世紀の黄金」第2章 宇宙ビジネスは、私たちの生活をどう変えるのか? 「地球ビッグデータ」が産業革命を引き起こす第3章 シリコンバレーが狙う新時代の金脈 開拓精神を受け継ぐベンチャー起業家たちの第4章 宇宙旅行はいつ実現するのか? 圧倒的なコストダウンで実現間近の新経済圏第5章 月と火星に人類は本当に住めるのか? もはやSFではない「火星移住計画」の実現性第6章 宇宙という「未来産業」の幕開け デジタル化、IoT、AIへとつながる新市場の誕生おわりに
著者プロフィール大貫美鈴(おおぬき・みすず)宇宙ビジネスコンサルタント スペースアクセス株式会社 代表取締役 日本女子大学卒業後、清水建設株式会社の宇宙開発室で企画・調査・広報を担当。 世界数十か国から参加者が集まる宇宙専門の大学院大学「国際宇宙大学」の事務局スタッフを務める。その後、宇宙航空開発研究機構(JAXA)での勤務を経て独立。現在は宇宙ビジネスコンサルタントとして、アメリカやヨーロッパの宇宙企業のプロジェクトに参画するなど、国内外の商業宇宙開発の推進に取り組む。清水建設の宇宙ホテル構想提案以降、身近な宇宙を広めるためのプロジェクトへの参画はライフワークになっている。アメリカの宇宙企業100社以上が所属する「スペースフロンティアファンデーション」の、アジアリエゾン(大使)としても名を連ねる。新聞や雑誌、ネットでの取材多数。
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