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2020年11月29日日曜日

書評『宇宙ビジネスの衝撃 ー 21世紀の黄金をめぐる新時代のゴールドラッシュ』(大貫美鈴、ダイヤモンド社、2018)ー 米国のネット大手が宇宙ビジネスに熱心な理由はなにか?



日本人宇宙飛行士の野口聡一氏を乗せた、民間宇宙ビジネス関連企業スペースX社の「クルードラゴン」の打ち上げ成功のニュースが流れたばかりだが、いまや宇宙開発は民間が主導する時代になっている。 

スペースX社は、テスラのイーロン・マスク氏のもう1つの主要テクノロジー・カンパニーだが、このほかアマゾンのベゾスのブルー・オリジンや、グーグルなどGAFAと総称される米国のネット企業大手がこぞって宇宙ビジネスに熱心なのはなぜか? 

この本をざっと読んで、その理由がわかった。答えはリモート・センシングにある。つまり、宇宙から地球をリモート・センシングしてビッグデータを収集したいのだ。そして、それを分析することで多様なビジネスにつながっていくのだ、と。 

なるほど、そういうことか。どうしても、宇宙ビジネスというと宇宙旅行とか火星開発に目が向かいがちだが、ビジネスとしての本質は別のところにあるのだな、と。 

ただし、この本はあくまでもビジネスの側面にのも注目しているので、軍事目的という視点はない。既存の航空宇宙産業は軍事と密着な関係があるだけに、物足りない思いをしたのも正直なところ。その関連でいえば、中国の宇宙開発の話が弱いのも残念な点であった。 

新型コロナウイルス感染症で身動きがとれない状態の関係者も少なくないが、さらに肥大化が進むGAFAが、さらに豊富な資金を投入して宇宙開発に邁進している。この事実を認識しておきたいものだ。 




目 次 
はじめに なぜITの巨人は宇宙に巨額投資するのか? グーグル、アマゾン、フェイスブック、マイクロソフト、アップル…… 
第1章 なぜ、IT企業の巨人は宇宙を目指すのか? BIG5が狙う「21世紀の黄金」
第2章 宇宙ビジネスは、私たちの生活をどう変えるのか? 「地球ビッグデータ」が産業革命を引き起こす
第3章 シリコンバレーが狙う新時代の金脈 開拓精神を受け継ぐベンチャー起業家たちの
第4章 宇宙旅行はいつ実現するのか? 圧倒的なコストダウンで実現間近の新経済圏
第5章 月と火星に人類は本当に住めるのか? もはやSFではない「火星移住計画」の実現性
第6章 宇宙という「未来産業」の幕開け デジタル化、IoT、AIへとつながる新市場の誕生
おわりに

著者プロフィール
大貫美鈴(おおぬき・みすず) 
宇宙ビジネスコンサルタント スペースアクセス株式会社 代表取締役 日本女子大学卒業後、清水建設株式会社の宇宙開発室で企画・調査・広報を担当。 世界数十か国から参加者が集まる宇宙専門の大学院大学「国際宇宙大学」の事務局スタッフを務める。その後、宇宙航空開発研究機構(JAXA)での勤務を経て独立。現在は宇宙ビジネスコンサルタントとして、アメリカやヨーロッパの宇宙企業のプロジェクトに参画するなど、国内外の商業宇宙開発の推進に取り組む。清水建設の宇宙ホテル構想提案以降、身近な宇宙を広めるためのプロジェクトへの参画はライフワークになっている。アメリカの宇宙企業100社以上が所属する「スペースフロンティアファンデーション」の、アジアリエゾン(大使)としても名を連ねる。新聞や雑誌、ネットでの取材多数。
   

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2019年1月21日月曜日

書評『「中国製造2025」の衝撃 ー 習近平はいま何を目論んでいるのか』(遠藤誉、PHP、2019)ー 中国共産党が注力しているのが「軍民融合」分野の半導体と宇宙開発だ


昨年(2018年)12月1日に中国のグローバルIT企業のファーウェイ(というよりも、発音としては「ホァーウェイ」が原音に近いと著者は強く主張している。英語表記では F ではなく H で始まる Huawei)のCFO(最高財務責任者)の孟晩舟氏が、カナダで逮捕された。


それ以来、Huawei社が米国の制裁対象とみなされていることがクローズアップされ、現在に至っている。孟晩舟氏は創業社長の娘であり、しかもカナダで逮捕された理由が対イラン経済制裁に違反して金融機関を不正操作した容疑によるものであり、「ファイブ・アイズ」の一員であるカナダ政府に逮捕を要請したのが米国政府だからだ。


すでに米中経済戦争は冷戦状態といってよい。そんな状態において、Huawei社のCFO逮捕は、ホットイシューであり続けている。


この問題にかんして、世間一般で受け止められているのとは異なる視点を提供してくれているのが、中国共産党にかんしては独自でかつ正確な認識をもっている、本書の著者・遠藤誉氏だ。


遠藤氏は、Yahoo! の連載コラム(Newsweek日本版にも転載されている)で、Huawei社は、むしろ中国共産党とは一線を画してきた存在であること、国営企業ではない民間企業として中国人、とくに若年層からは圧倒的な支持を受けてきたことを指摘している。米国にとって都合のよい情報だけを鵜呑みにしていては、中国共産党の本当の意図を読み違える結果になりかねないことに警鐘を鳴らしている。


そんななかで出版された最新刊が『「中国製造2025」の衝撃-習近平はいま何を目論んでいるのか-』(遠藤誉、PHP、2019)。最新刊の本書では、Huaweiに代表される中国の民間IT企業の実態と、現在に至る中国のハイテク分野の発展について、歴史的経緯を踏まえて解説されている。中国共産党の内在的論理を熟知し、物理学で博士号をもつ経歴が説得力ある議論を展開している。


いまの中国で注意を向けなくてはならないのは、「軍民融合」の観点から、とくに半導体と宇宙開発といったハイテク分野である。なぜなら、米中貿易戦争や米中ハイテク戦争の根幹には「中国製造2025」があるからだ。トランプ政権は、この「中国製造2025」こそを恐れているのである。


「中国製造2025」とは、2015年5月に発表された中国の国家戦略だ。2025年までに中国は、半導体などハイテク製品のキー・デバイスの70%を「メイド・イン・チャイナ」にして自給自足すると宣言している。

現在は、クアルコムなど米国製の半導体を使用しているが、米中経済戦争の影響が中国のハイテク分野にもろに影響を与える状況を打破したいのだ。Huawei社には100%子会社の半導体設計メーカーのハイシリコン(HiSilicon)社があるが、Huawei以外には半導体を供給しないと明言している(いつまで維持できるかわからないが)こともあり、ハイスペック半導体を輸入に依存せず、自国で内製化することは中国共産党にとっては必達の課題なのである。

「中国製造2025」では、宇宙開発においても自国による推進を盛り込んでいる。有人宇宙ステーションの建設や月面探査プロジェクトなどは、すでに実行フェーズにある。つい先日も、月の裏側に月面探査船の着陸を成功させたばかりだ。


しかも、「量子暗号」に力を注いでいる。2016年には、「量子暗号」でコントロールする世界初の 量子通信衛星「墨子」の打ち上げに成功している。中国は半導体と宇宙開発そして量子暗号によって実現させる世界は民間ビジネスだけではない。当然のことながら軍事利用が想定されているのは言うまでもない。米中覇権競争に打ち勝ち、世界制覇を目指しているといっても過言ではないのだ。


だからこそ、トランプ政権が中国の動きを怖れているのである。「中国製造2025」によって中国がテクノロジーの分野で米国を追い抜くことは、軍事的脅威に身をさらし、戦争になった際には敗北すらありえることを意味するからだ。


本書は、著者ならでは分析視角とは激しい危機感が背景にあってできあがった本だ。米国が流し、日本で流通しているニュースを鵜呑みにすることなく、中国が何を目指しているのか、そしてその実現可能性がどの程度あるかを知るために読むべき本なのである。


安全保障と経済とのあいだでねじれ現象が生じている現在、米中の狭間で股裂き状態になりつつある日本と日本企業は、はたしてどう動くべきか。悩みは深い。 








目 次 
まえがき-米中貿易戦争の根幹は「中国製造2025」  
第1章 中国製造2025」国家戦略を読み解く 
 1. 〔2025〕が生まれた社会背景に反日デモ 
 2. 〔2025〕への準備作業-一党支配体制への危機感 
 3. 新常態(ニューノーマル)は〔2025〕から生まれた 
 4. 〔2025〕、平易な言葉に隠された意図 
 第2章 世界トップに躍り出た中国半導体メーカー 
 1. 半導体産業に軍の影がちらつく理由 
 2. 世界トップ10にランクインした清華大学の紫光集団 
 3. もう一つのトップ10、華為(ホァーウェイ)の頭脳ハイシリコン 
 4. 半導体製造装置の国産化を見落とすな 
第3章 人材の坩堝に沸く中国
    1. 1964年、中国核実験を成功させたのは誰か?
 2. 1996年、地球を覆う中国人材市場 
 3. 2008年「千人計画」と2012年「万人計画」
   4. ハイレベル人材の自給自足:ボーン・イン・チャイナへ  
 5. 清華大学の顧問委員会に数十名の米財界CEO 
第4章 習近平の「宇宙支配」戦略
   1. 世界初の量子通信衛星打ち上げに成功 
 2. 世界初の量子暗号通信に成功-量子暗号を制する者が世界を制する
   3. 世界最大の量子コンピュータ建設 
 4. 中国独自の宇宙ステーション
   5. 「一帯一路」で宇宙を支配
第5章 習近平、世界制覇へのロードマップ
   1. 「BROCS+」27カ国で全人類の半分を掌握 
 2. 習近平、アフリカ53カ国をわが手に
    3. トランプとの戦い、日本への接近 
あとがき-「一帯一路一空一天」


著者プロフィール 
遠藤誉(えんどう・ほまれ) 
1941(昭和16)年中国吉林省長春市生まれ。国共内戦を決した「長春包囲戦」を経験し、1953年に帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授(元物理工学系所属)、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。 著書に、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』(岩波新書)、『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『チャイナ・セブン 〈紅い皇帝〉習近平』『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』(以上、朝日新聞出版)、『毛沢東 日本軍と共謀した男』(新潮新書)、『習近平 vs. トランプ 世界を制するのは誰か』(飛鳥新社)など多数。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。






<関連情報>

アントン・ツァイリンガー(Anton Zeilinger, 1945年5月20日 - )はオーストリアの量子物理学者・ウィーン大学の物理学教授である。量子情報の先駆者であり、光子の量子テレポーテーションの実現で知られる。 2010年にアラン・アスペ、ジョン・クラウザーとともウルフ賞物理学部門を受賞し[1]、2022年に3人はノーベル物理学賞を受賞。 中国が打ち上げた世界初の量子通信衛星「墨子号(英語版)」にも協力。(Wikipediaより)

Quantum Experiments at Space Scale (QUESS; Chinese: 量子科学实验卫星; pinyin: Liàngzǐ kēxué shíyàn wèixīng; lit. 'Quantum Science Experiment Satellite'), is a Chinese research project in the field of quantum physics. (Wikipedia英語版より)
・・こういう重要な実験にかんしてWikipedia日本語版がない、という悲しむべき事実(2022年12月21日現在)





(2021年5月7日 項目新設)
(2022年12月21日、2023年8月28日 情報追加)




<ブログ内関連記事>


書評 『習近平 vs. トランプ-世界を制するのは誰か-』(遠藤誉、飛鳥新社、2017)-「米中ビッグディール」という「密約」に警戒せよ!


書評 『中国人が選んだワースト中国人番付-やはり紅い中国は腐敗で滅ぶ-』(遠藤誉、小学館新書、2014)-中国国民の腐敗への怒りが臨界点を超えたとき中国は崩壊する

書評 『チャイナ・セブン-<紅い皇帝>習近平-』(遠藤誉、朝日新聞出版社、2014)-"第2の毛沢東" 習近平の「最後の戦い」を内在的に理解する


書評 『チャイナ・ギャップ-噛み合わない日中の歯車-』(遠藤誉、朝日新聞社出版、2013)-中国近現代史のなかに日中関係、米中関係を位置づけると見えてくるものとは?


書評 『完全解読 「中国外交戦略」の狙い』(遠藤誉、WAC、2013)-中国と中国共産党を熟知しているからこそ書ける中国の外交戦略の原理原則


書評 『中国動漫新人類-日本のアニメと漫画が中国を動かす-』(遠藤 誉、日経BP社、2008)-中国に関する固定観念を一変させる可能性のある本



書評 『米中戦争前夜-新旧両大国を衝突させる歴史の法則と回避のシナリオ-』(グレアム・アリソン、藤原朝子訳、ダイヤモンド社、2017)-「応用歴史学」で覇権交代の過去500年の事例に探った「トゥキディデスの罠」


「意図せざる結果」という認識をつねに考慮に入れておくことが必要だ
・・米国の政策が「意図せざる効果」を生み出し、「逆効果」になる可能性がある

(2019年2月22日 情報追加)


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2017年10月9日月曜日

映画『ドリーム』(2016年、米国)を見てきた(2017年10月9日)ー 米ソ冷戦時代の熾烈な宇宙開発競争という「非常時」のなか、「知られざる黒人女性たち」が突破口を開いた!


映画 『ドリーム』(2016年、米国)をTOHOシネマズで見てきた(2017年10月9日)。原題は、Hidden Figures(=知られざる人たち)

米ソ冷戦時代の熾烈な宇宙開発競争という「非常時」のなか、NASA(アメリカ航空宇宙局)の有人宇宙ロケット打ち上げミッションを支えた「知られざる黒人女性たち」の実話にもとづいた作品だ(Based on the true events)。

日本語版の『ドリーム』というのは、ちょっといただけない。日本語でいえば、「縁の下の力持ち」というべきであろう。


■「人種の壁」と「男女の壁」に風穴を開けた黒人女性たち

映画の舞台である NASAのラングレー研究所は、南部のヴァージニア州にある。

 「公民権法」(1964年)が施行される前のアメリカ南部では、「人種隔離政策」(=セグレゲーション)が公然と実施されていた。黒人は公然と差別されていたのだ。

「ホワイト」(=白人)と「カラード」(=有色人種)で完全に区分されていたのはバスの座席だけではない。トイレも、図書館も、その他すべての公共施設が厳密に「区分」されていた。する側の白人からみたら「区分」であっても、される側の黒人にとっては「差別」以外の何物でもないという現実。

NASAの開発プロジェクトもまた、白人男性の科学者やエンジニアが支配的地位にある世界。そんな状況のなか、ロケットの軌道計算に従事していた黒人女性たちが、「人種の壁」と「男女の壁」に突破口を開くことに成功したのはなぜか?

1961年当時の冷戦時代の米国は、宇宙開発競争でソ連に遅れをとっていたのだ。「地球は青かった」という名セリフをクチにしたのはソ連のガガーリン大佐である。

追い詰められるNASAの開発陣。そんな「非常時」ともいうべき状況においては、モノを言うのは実力だ。人種の違いも男女の違いも関係ない。結果を出すことで実力が認められていったのだ。

コメディタッチのヒューマンドラマだが、最後まで見たらかならず感動するのは間違いない。いい映画だった。



■「プログレス」(=進歩)の時代がもたらしたもの

1960年代というプログレス(=進歩)の時代、飛躍的に進歩したのはテクノロジーだけでない。人種差別と男女差別にかんしても進歩が実現した。

「冷戦」とはいえ、まさに「有事」であり「非常時」であったからこそ、開発競争において背に腹は代えられなかったのだ。そんな状況であったからこそ、白人男性が支配する科学技術の世界で、黒人女性科学者とエンジニアたちの道が開かれたのであった。チャンスをつかんだのである。

「私には夢がある」(I have a dream)と語ったキング牧師のような活動家たちだけが「黒人解放」を推進したのではない。この映画の主人公たちのような「知られざる人物たち」がいたのだ。

個人的な話になるが、わが母校のレンセラー工科大学(RPI)の現在の学長のシャーリー・アン・ジャクスンは黒人女性の科学者だ。MITで博士号を取得した米国初の黒人女性で、物理学での博士号取得は黒人女性では米国で二番目に当たる。RPIの学長職で黒人女性は初めてのことになる。2014年には、オバマ前大統領から「アメリカ国家科学賞」(National Medal of Science)を授与されている。

シャーリー・ジャクスン氏は1946年生まれ。この映画の主人公たちがNASAでミッションに従事していた頃はまだ15歳だったことになる。彼女たちが切り開いた道に続いていった世代の人だ。

そういう自分にとっては、この映画が描いている世界は、じつに感慨深いのである。





■「プログレス」は諸刃の剣

映画のなかでケビン・コスナー演じる開発部長が口にするセリフに、「プログレスは諸刃の剣」(Progress is double-edged sword)というものがある。「進歩」は人類社会にベネフィットをもたらす、一方、技術の陳腐化をもたらし、仕事がなくしてしまうことにもつながる。

追い込まれた宇宙開発プロジェクトの開発責任者は、IBMのメインフレームコンピュータを導入することで、一気に計算時間を短縮することにする。だがこのために、「縁の下の力持ち」であった黒人女性たちが従事していた計算係という職業があっというまにお払い箱になってしまう。

そんな状況を見越して、職場でプログラムの勉強会を開始する先見の明をもった黒人女性のリーダーシップも印象に残る。

技術の進歩は現在でも止まることなく続いている。だがそれを「プログレス」とは言わなくなったような気もする。「プログレス」といいうと、資本主義であれ社会主義であれ、あの時代のバズワードであった。ソ連的な響きでもあり、アメリカ的な響きでもあった。

ともに未来志向の人工国家であったソ連と米国。この二大超大国が熾烈な競争を行っていた時代こそ、プログレスといえるようなプログレスが存在したのではないか?

退歩や後退といった側面さえ見られなくない2010年代の現在からみると、1960年代はきわめて多くの問題を抱えながらも、希望に満ちた時代であった気がしなくもないのである。

その意味では日本語版のタイトル『ドリーム』は、あながち的外れではないのかもしれない。過ぎ去った過去の時代に生きた人たちを描くのにあたって。






<関連サイト>

映画『ドリーム』 公式サイト(日本版)

映画『ドリーム』は、ついにNASAの「隠れたヒーロー」を描き出すことに成功した (WIRED日本版、2017年9月28日)

The Remarkable Career of Shirley Ann Jackson(MIT Technology Review, December 19, 2017)
・・RPIのシャーリー・アン・ジャクソン学長はこの映画Hidden Figures(=知られざる人たち)の後続世代の黒人女性エンジニア・彼女のまた多様性をもたらしたパイオニアの一人。Shirley Ann Jackson worked to help bring about more diversity at MIT, where she was the first African-American woman to earn a doctorate. She then applied her mix of vision and pragmatism in the lab, in Washington, and at the helm of a major research university.

(2017年12月23日 情報追加)


<ブログ内関連記事>

宇宙関連

「地球は青かった」(ガガーリン)-いまから55年前の本日、世界初の有人宇宙飛行に成功(2016年4月12日)

日本人が旧ソ連の宇宙飛行船「ソユーズ」で宇宙ステーションに行く時代

映画 『オデッセイ』(2015年、米国)を見てきた(2016年2月7日)-火星にたった一人取り残された主人公は「意思のチカラ」と「アタマの引き出し」でサバイバルする


冷戦構造と航空宇宙開発の劇的な進歩

書評 『ランド-世界を支配した研究所-』(アレックス・アペラ、牧野洋訳、文藝春秋、2008)-第二次大戦後の米国を設計したシンクタンクの実態を余すところなく描き切ったノンフィクション

レンセラー工科大学(RPI : Rensselaer Polytechnic Institute)を卒業して20年(2012年5月23日)


数学とコンピュータ

月刊誌 「クーリエ・ジャポン COURRiER Japon」 (講談社)2013年11月号の 「特集 そして、「理系」が世界を支配する。」は必読!-数学を中心とした「文理融合」の時代なのだ

書評 『コンピュータが仕事を奪う』(新井紀子、日本経済新聞出版社、2010)-現代社会になぜ数学が不可欠かを説明してくれる本


■人種間の壁を破った人たち

キング牧師の "I have a dream"(わたしには夢がある)から50年-ビジョンをコトバで語るということ
・・非暴力主義のキング牧師

追悼 エルヴィス逝って40年(2017年8月16日)-「ゴスペルを愛してやまなかったエルヴィスの内奥を本当に理解しない限り、エルヴィスをありのまま愛することはできない・・・・」
・・「南部のバイブルベルトに生まれ育ち、黒人音楽と白人音楽を一身において融合したという、音楽の分野でエルヴィスがアメリカ文化でやり遂げたこと」


■非常時が促進した女性の社会進出

「昭和の働く女性-夢と希望と困難と-」(昭和館・東京九段下)は、見る価値ある企画展-「昭和」に限定されているのがちょっと残念だが・・
・・戦争と社会進出


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2009年12月23日水曜日

日本人が旧ソ連の宇宙飛行船「ソユーズ」で宇宙ステーションに行く時代




(宇宙飛行士ガガーリン像の前に立つ筆者 極東ロシアにて)

 ここのところ、TVのニュース番組では、ソユーズ、ソユーズと連呼している。宇宙飛行士の野口聡一さんが、今回は米国のスペースシャトルではなく、ロシアの宇宙飛行船「ソユーズ」(!)を使って、国際宇宙ステーションに向かったためだ。

 報道によれば、本日ソユーズは国際宇宙ステーションとのドッキング(・・なつかしい響きだ!スカイラブを思い出す)に成功し、野口さんは国際宇宙ステーションに移動したとのことである。サンタクロース姿の野口さんが地球にメッセージを送っていた。

 まずは目出度いことである。何よりも安全に飛行できたことは目出度いことだ。これから五ヶ月間の宇宙滞在、本人にとってはこのミッションは楽しいかもしれないが、関係者や地球上の家族を含め、ご苦労なことである。

 宇宙空間(・・この「宇宙空間」という漢字熟語はまったくのトートロジー(同語反復)だな、英語だと宇宙も、空間も space だ)での時間感覚は、いったいどのようなものなのだろうか。

 来年以降周航するという、英国のリチャード・ブランソン率いるバージン・グループによる宇宙旅行(Virgin Galactic)、日本人でも金持ちが搭乗するようだが、どのような感想を述べるのか、楽しみである。

 私が宇宙にいくことは、カネのない私には、まず無理だろうから。子供の頃は21世紀になったら自由に宇宙旅行にいけるようになる(!)なんていう未来予測があったのだが、大幅に遅れているなあ。

 日本人が「ソユーズ」という宇宙飛行船、実はロシア語では「サユース」という。サヴィエツカヤ・サユース、これはソ連という意味だが、そのサユースである。ロシア語では Союс、おそらくローマ字で Soyuz と音を転写したので、そのまま文字通りローマ字読みで「ソユーズ」となて今日に至るのだろう。ロシア語では語頭にくる o のは a と発音することが大半だ。

 今回、野口飛行士が「ソユーズ」で行く理由が、米国のスペースシャトルが来年退役という理由のほかに、「ソユーズ」がこの38年間無事故だから今回搭乗した、というのも驚きだ。

 なぜかといって、ほぼすべてが理科少年であった、われわれの小学生時代、「実はソユーズでひとが死んでるんだぜ!」というウワサが広がっていたからだ。ソ連時代のことゆえ情報開示はなく、真相は不明のままだった。現在では死亡事故の存在は明らかになっている。
 こういう不幸な事故から得た教訓で、以後38年間(!)「ソユーズ」は無事故だという。ロシアの底力を見せられる思いである。

 また、「ソユーズ」搭乗のため、野口さんはロシア語を特訓したというのもすごい。目的遂行のためには、人間はなんでもできるものなのだ!必要がなければロシア語をやる人間はあまりいないだろう。 

 しかし、あの風貌でロシア語をしゃべったら、打ち上げ基地バイコヌールのあるカザフスタンなら、キルギス人と間違われるだろう。モスクワにいたらブリヤート・モンゴル人と間違われるだろうなあ。


 「地球は青かった」という名言をのこしたガガーリン少佐
 「私はかもめ」(ヤー・チャイカ)というコトバを残した女性宇宙飛行士テレシコワ

 月面着陸に成功し、月の石を持ち帰ったアポロ計画と併走していたソ連の宇宙開発。

 高校生になってからは、米ソによる宇宙開発は実は軍拡競争だったのだと知ったが、小学生時代はそんなことはつゆ知らず興奮して少年たちは語り合っていたものだ。

 そんな時代の少年であった私は、出張で1998年極東ロシアのコムソモリスク=ナ=アムーレという、ソ連時代に開発された都市にいったとき、案内してくれたロシア人の説明で、ガガーリン少佐の巨大銅像があることを知り、実際に見てさわることができてうれしかった。

 写真はそのとき撮影したものである。日本風に銅像にまたがって写真を撮ってもらおうとしたら、ロシア人からはえらくたしなめられた。ソ連崩壊から何年もたっても、ガガーリン少佐はソ連の英雄だったためなのだろうか。それとも単なるマナー違反だったのか。

 コムソモリスクはコムソモール(共産主義青年団)からきたコトバだからだろうか、戦闘機スホーイの工場のあるその都市は、ソ連時代の生きた化石のような町であった。


 ひさびさに少年時代の夢と興奮を思い出させた、日本人・野口飛行士の「ソユーズ」による、国際宇宙ステーション行きであった。

 日本人が「ソユーズ」で何人も宇宙にゆくようになる時代、これは米国べったりの時代が続いてきたこの30年間、まったく想像することさえできないことであった。
              




<ブログ内関連記事>

映画 「百合子、ダスヴィダーニヤ」(ユーロスペース)をみてきた-ロシア文学者・湯浅芳子という生き方

書評 『高度成長-日本を変えた6000日-』(吉川洋、中公文庫、2012 初版単行本 1997)-1960年代の「高度成長」を境に日本は根底から変化した

書評 『革新幻想の戦後史』(竹内洋、中央公論新社、2011)-教育社会学者が「自分史」として語る「革新幻想」時代の「戦後日本」論

書評 『ソ連史』(松戸清裕、ちくま新書、2011)-ソ連崩壊から20年! なぜ実験国家ソ連は失敗したのか?

『ソビエト帝国の崩壊』の登場から30年、1991年のソ連崩壊から20年目の本日、この場を借りて今年逝去された小室直樹氏の死をあらためて悼む

飛んでウラジオストク!-成田とウラジオストクの直行便が2014年7月31日に開設

書評 『女三人のシベリア鉄道』(森まゆみ、集英社文庫 、2012、単行本初版 2009)-シベリア鉄道を女流文学者たちによる文学紀行で実体験する

書評 『ろくでなしのロシア-プーチンとロシア正教-』(中村逸郎、講談社、2013)-「聖なるロシア」と「ろくでなしのロシア」は表裏一体の存在である

(2014年10月30日 項目新設)


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