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2010年7月26日月曜日

書評 『お寺の経済学』(中島隆信、ちくま文庫、2010 単行本初版 2005)-経済学の立場からみた知的エンターテインメント




お寺の経営は今後も成り立つのか?-経済学の立場からみた知的エンターテインメント

 「檀家制度」に乗っかっただけの仏教寺院経営は今後はなり立たない、これが著者のメッセージである。

 著者はこの結論に到達するまでに、実に日本仏教の現状についてよく調べており、日本仏教の現状を経済学の観点から網羅的に過不足なく見ている

 しかも、叙述は淡々とした文体、批判や糾弾ではなく、冷静な分析に基づいた、けっして無理のない具体的な処方箋が提示されている。

 著者が分析対象である仏教に対して、本書を執筆するまでほとんど関心がなかったとあとがきに書いているが、変な先入観なしに対象と取り組んだのがよかったのかもしれない。

 仏教の立場からする「仏教の経済学」といえば、本書の第一章の内容のみがその対象となる。しかし、著者は仏教僧侶でも仏教研究者でもない。あくまでも、経済学者の立場から仏教にアプローチしており、しかも対象は日本仏教である。

 仏教信仰のなかみには過度に深入りせず、社会制度としての仏教を歴史的に概観し、市場経済外の範囲まで含めて、日本仏教が成り立っているメカニズムを経済学的に分析、本山と末寺という宗派の組織論から、個々の仏教寺院の経営数字を、収入から支出、宗教法人の非課税にまで踏み込んで分析しており、たいへん読み応えのある読み物となっている。

 また、日本内地の仏教の特徴を際立たせるために、沖縄の仏教事情について一章を割いているのも心憎い。タイ仏教についてはコラムだけにとどめているのは物足りない気もしないではないが、日本仏教とはあまりにも異なる上座仏教は比較対象としては、「檀家制度」を前提にした「葬式仏教」という、著者の関心からはあまり実り多いものではないからだろう。沖縄の仏教事情にうとい私には、非常に興味深い内容であっただけでなく、内地の仏教の未来図となっているのかもしれないという著者の指摘は傾聴に値すると思われた。

 キリスト教や新興宗教との比較があれば、さらに面白いものになったと思うが、それでは議論が拡散してしまったかもしれない。

 本書は、経済学を知っていればもちろんのこと、経済学の知識がなくても十二分に楽しめる知的エンターテインメントになっている。

 仏教者の立場から日本仏教の現状に警鐘を鳴らす本は少なくないが、これほど面白くためになる本もなかなかないのではないかと思う。とくに期待せずに読み始めたのだが、読んで正解であった。

 ぜひ多くの人に一読をすすめたい。


<初出情報>

■bk1書評「お寺の経営は今後も成り立つのか?-経済学の立場からみた知的エンターテインメント」投稿掲載(2010年7月25日)
■amazon書評「お寺の経営は今後も成り立つのか?-経済学の立場からみた知的エンターテインメント」投稿掲載(2010年7月25日)




目 次

序章 今なぜお寺なのか
第1章 仏教の経済学
第2章 すべては檀家制度からはじまった
第3章 お寺は仏さまのもの
第4章 お坊さんは気楽な稼業か
第5章 今どきのお寺は本末転倒
第6章 お寺はタックス・ヘイブンか
第7章 葬式仏教のカラクリ
第8章 沖縄のお寺に学ぶ
第9章 お寺に未来はあるか
文庫版補章 最近の動きなどを交えて


著者プロフィール

中島隆信(なかじま・たかのぶ)
1960年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。現在、慶應義塾大学商学部教授。商学博士。実証的な分析を行う一方で、従来の経済学ではなかなか扱われないできた事象を経済学で読み解く一連の仕事を続けている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)






<書評への付記>

 日本にあるお寺の総数は7万6千と、4万軒のコンビニよりも数が多いと著者はいっている。沖縄はたったの60(!)というのも、逆の意味で驚きではあるが。
 ちなみに、ちょっと調べてみたら、郵便局は約2万4千(2007年)、ガソリンスタンドは4万9千(2008年)である。

 お寺の数は、これらのいずれよりも多い! 

 むかし10年ほどだが、コンサルティング・ファーム時代に、石油流通の分野で調査に従事したことがあるが、その当時ガソリンスタンド数は激減するといわれながらも、現在でもなかなかしぶとく生き残っている。マクロ的な総需要と総供給の話と、個々の企業体の企業努力の話にはタイムラグが存在するのだ。

 お寺も人口減少の影響だけでなく、「葬式仏教離れ」で減少することは間違いない。しばらくは統廃合で漸減ではかなろうかと思うが、減るときは一気に雪崩を打ったように激減することも、可能性としてはなくはないだろう。  
 中小企業と同様、原因は総需要の縮小もさることながら、後継者不足が最大の要因となるだろう。後継者不足は寺院とその檀家の統廃合という形で顕在化するものと考えられる。

 いわゆる「仏教経済学」にかんしては、シューマッハーの『スモール・イズ・ビューティフル』(講談社学術文庫、1986)など多数ある。この分野については、ブログでも別途取り上げてみたいと考えている。
 日本仏教の現状に警鐘を鳴らし、新しい方向への示唆を語った本としては、『がんばれ仏教-お寺ルネッサンス-』(上田紀行、NHKブックス、2004)や、『前衛仏教論-<いのち>の宗教への復活-』(町田宗鳳、ちくま新書、2004)をあげておく。
 『葬式は、要らない』(島田裕巳、幻冬舎新書、2010)はベストセラーになっている。時代の変化を反映した内容だからであろう。


<ブログ内関連情報>

書評 『テレビ霊能者を斬る-メディアとスピリチュアルの蜜月-』(小池 靖、 ソフトバンク新書、2007)
・・・<書評への付記>として、「先祖供養」についてやや詳しく書いておいた。先祖供養は日本において、儒教から仏教に入り込んだものである。『お寺の経済学』の著者もこの考えを基本に置いて、いわゆる「葬式仏教」についての考察を行っている。