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2023年6月5日月曜日

近代経済学の両巨頭はおなじ6月5日に生まれていた!ー 本日(2023年6月5日)はアダム・スミス生誕300年、ケインズは生誕140年

 (wikipedia掲載の画像から作成 左がアダム・スミス、右はケインズ)


近代経済学の巨頭であるアダム・スミスとケインズの誕生日が同じだとは知らなかったな。本日6月5日はアダム・スミス生誕300年、ケインズは生誕140年だそうだ。

岩波書店の tweet ではじめて知った。以下にそれを再録しておこう。


今日はスコットランド生まれの経済学者アダム・スミスの生誕300年。『国富論』と『道徳感情論』が二大著作とされます。スミスといえば「見えざる手」という言葉が有名ですが、実は『国富論』には一度しか登場しないのだとか。



今日はイギリスの経済学者ケインズの生誕140年。通貨金融問題の権威。有効需要理論・乗数理論・流動性選好理論を柱とする主著などにより、ケインズ革命と呼ばれる独創的な経済理論を形成しました。
       https://twitter.com/Iwanamishoten/status/1665538991129755649



たまたまの偶然だが、たしかに wikipedia を検索してみると、それぞれ以下のようにある。

まずは、アダム・スミスから。

アダム・スミス(Adam Smith、1723年6月5日[注釈 1] - 1790年7月17日[1])は、イギリスの哲学者、倫理学者、経済学者である。「経済学の父」と呼ばれる[1]。スコットランド生まれ。主著に倫理学書『道徳感情論』(1759年)と経済学書『国富論』(1776年)[2][注釈 2]などがある。

つぎにケインズ。 

ジョン・メイナード・ケインズ(英: John Maynard Keynes、1883年6月5日 - 1946年4月21日)は、イギリスの経済学者、ジャーナリスト、投資家[2]。一代貴族[注釈 1]、バス勲章受章、イギリス学士院フェロー。イングランド、ケンブリッジ出身。20世紀における最重要人物の一人であり、経済学者の代表的存在である。


経済学史では、アダム・スミスは「古典派経済学」、ケインズは古典派に対する「ケインズ主義」とされる。この近代経済学の両巨頭がおなじ日に生まれていたとはまったく知らなかった。

生年は意識しても、誕生日まで意識することは、ふだんあまりない。たまたま偶然とはいえ、そんなトリビアな事実を知るのは面白いことだ。

ただし、アダム・スミスのほんとうの生誕日はわからないようだ。wikipedia で Adam Smith を検索したら、以下のような注釈が見つかった。

Adam Smith's exact date of birth is unknown, but he was baptised on 5 June 1723.
(私訳:アダム・スミスの正確な生誕日はわからないが、1723年6月5日に洗礼を受けている)

つまり、洗礼日をもって生誕日としているのである。したがって、アダム・スミスとケインズが、まったく同じ日に生まれたのかどうかは定かではないというのが、ほんとうのところなのだ。

だが、まあいいではないか。近代経済学の両巨頭はおなじ6月5日に生まれていた、としておこう。そのほうが話としては面白い。有効需要ではないが、有効としていおこう。


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2022年11月12日土曜日

書評『世界インフレの謎』(渡辺努、講談社現代新書、2022)-この本はまさにいま知りたいことに答えてくれる!

 
「円安」が止まらないのは、日米の金利差が拡大しているからだが、米国が金利を上げ続けているのは、激しいインフレを沈静化するためだ。

では、なぜ日本を除いた先進各国で激しいインフレとなっているのか? これこそ、まさにいま知りたいことだ。この疑問に答えてくれるのがこの本。

『世界インフレの謎』(渡辺努、講談社現代新書、2022)。つい最近、リアル書店で知った。ことしの10月の新刊のようだ。  

米英を中心とした西欧各国で激しいインフレが発生している理由は、ウクライナ戦争ではない。戦争は、増幅させているだけだ。 

結論をいってしまえば、パンデミックが原因なのだ。世界で同時に発生したパンデミックが原因の「供給不足」がインフレを招いている。モノ不足の背景にある労働力不足。サービス経済化の終わり。 

ほぼすべての経済学者も政策担当者も想定もしなかった事態が発生している。だから、事前に予測できなかったし、対応も後手後手になっているのだ。米国の金融当局は金利を上げるしかなすすべがない・・ 

詳しくはぜひ読むことを勧めたい。じつにわかりやすく書かれているので、日頃に見聞きしている経済ニュースの背景がよく理解できることだろう。  



目次
第1章 なぜ世界はインフレになったのか―大きな誤解と2つの謎 
第2章 ウイルスはいかにして世界経済と経済学者を翻弄したか 
第3章 「後遺症」としての世界インフレ 
第4章 日本だけが苦しむ「2つの病」―デフレという慢性病と急性インフレ 
第5章 世界はインフレとどう闘うのか


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2021年5月15日土曜日

書評『竹中平蔵 市場と権力 -「改革」に憑かれた経済学者の肖像』(佐々木実、講談社文庫、2020)-「経済学者」を自称するこの男にはアンビバレントな感情を抱かざるを得ない・・



『竹中平蔵 市場と権力-「改革」に憑かれた経済学者の肖像』(佐々木実、講談社文庫、2020)を読んだ(*)。面白いので、ついつい最後まで読みたくなる本だ。 

(*)読んでこの書評を書いたのは2020年12月のことだが、このブログへの投稿は半年後の5月になった。

竹中平蔵という「経済学者」の評価は、完全に二つに分かれるだろう。「経済学者」とカッコ書きで書いたのは、この人は、狭い意味での経済学者とはとても言えないからだ。 

博士号取得にまつわる話や、「構造改革」の仕掛け人であることをつうじて富を築いてきた履歴を読み進めてくと、ヨコ文字をタテにしているだけじゃないのか、学者というよりもフィクサーではないのか。そういう気持ちにさせられる。 

1991年から日経記者を5年経験しているにもかかわらず(いや、だからというべきか)、基本的に著者の立場は、竹中平蔵という人物に対しては批判的である。だが、膨大な取材によって固められた周辺情報が、人物評価の是非は別にして読みごたえがある本にしている。

「ああ、あれはそういうことだったのか」、という納得感を得られる記述が多いのだ。 

竹中平蔵という男に対して、私自身がアンビバレントな感情を抱くのは、おなじ大学の出身で、しかもおなじく金融業界にいたからである。

この本に出てくる有象無象の人物たちの多くが、おなじ金融世界の住人だ。間接的にいろいろ悪評は耳にしていたし、バブル期とバブル崩壊後の「空気」が手に取るようにわかるのも、読んでいて面白いと思った理由だ。 

竹中氏の功罪に対しては、是々非々の観点から、評価すべき点は評価すべきであろう。とはいいながらも、この人物には、胡散臭さがつきまとうのも否定できない好きかと言われれば、はっきりいって好きではない正直いって共感しにくい人物である。 

竹中氏が国会議員に立候補した際には、大学の同窓会をつうじて「竹中平蔵君をお願いします」というハガキが来ていたが、黙殺したことをここに書いておこう(笑)

「グローバリゼーション」という名の「アメリカナイゼーション」の旗振り役を演じ、「アメリカの代理人」として生きてきたこの人物が果たしてきた罪は大きい。「改革」の代償に目を向けるべきだろう。いったい誰のための「改革」だったのか、と。 

単行本がでたのは2013年だが、文庫化には結局7年もかかってしまった。ようやく文庫化されたのだが、タイミング的には絶妙だ。またぞろ、菅(スガ)政権の誕生とともに復活の兆候があらわれているからだ。その意味では、いまこの本を読む意味は少なくない。 

バブル崩壊後の1990年以降の日本現代史を考える上でも、避けて通れないテーマである。これ以上、日本崩壊を防ぐためにも、この人物の動向から、目は離せないのである。 


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目 次
はじめに 「改革」のメンター 
第1章 和歌山から東京へ
第2章 不意の転機
第3章 アメリカに学ぶ
第4章 仮面の野望
第5章 アメリカの友人
第6章 スケープゴート
第7章 郵政民営化
第8章 インサイド・ジョブ
おわりに ホモ・エコノミカスたちの革命
あとがき
文庫版のためのあとがき
参考文献一覧 

著者プロフィール
佐々木実(ささき・みのる)
1966年大阪府出身。大阪大学経済学部を卒業後、1991年に日本経済新聞社に入社。東京本社経済部、名古屋支社に勤務。1995年に退社し、フリーランスのジャーナリストとして活動している。2013年に出版した『市場と権力 「改革」に憑かれた経済学者の肖像』(講談社)で第45回大宅壮一ノンフィクションと第12回新潮ドキュメント賞をダブル受賞。社会的共通資本の経済学を提唱した宇沢弘文に師事し、彼の生涯を描いた『資本主義と闘った男 宇沢弘文と経済学の世界』(小社刊)で第6回城山三郎賞と第19回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞をダブル受賞した。



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2021年4月11日日曜日

書評『フォン・ノイマンの哲学 ― 人間のフリをした悪魔』(高橋昌一郎、講談社現代新書、2021)― 20世紀を代表する超天才を根底で支えていた「哲学」とは?



フォン・ノイマンといえば、ありとあらゆる分野に名前を残している「超天才」である。ノイマン型コンピュータ、原爆などの工学分野だけでなく、経済学の分野でもゲーム理論で知られている。 

52年の生涯で150編の論文を発表、その範囲は論理学・数学・物理学・化学・計算機科学・情報工学・生物学・気象学・経済学・心理学・社会学・政治学に及んでいる。常人の常識を超えた怪物としかいいようがない。

最近でたばかりの『フォン・ノイマンの哲学-人間のフリをした悪魔』(高橋昌一郎、講談社現代新書、2021)は、そんなフォン・ノイマンの「哲学」を、知られざる豊富なエピソードをまじえながら、その人生をたどりながら跡づけようとしたものだ。  

オーストリア=ハンガリー二重帝国(いわゆるハプスブルク帝国)のブダペストに生まれたユダヤ系のジョン・フォン・ノイマン(1903~1953)は、マッドサイエンティスト的匂いをプンプンさせているにもかかわらず、意外なことに、いわゆる奇人変人タイプの科学者ではなかった。愛情たっぷりの家庭環境で育ち、豊かな教養を身につけた社交家でもあった。 

フォン・ノイマンの「哲学」といっても、ここでいう「哲学」は、哲学者が扱う哲学といいうよりも、言動を根底で支えている「思想」といったようなものだ。経営者の「哲学」とか、職人の「人生哲学」のようなものだと考えればいい。 

「科学優先主義」「非人道主義」「虚無主義」。この3つが著者が取り出した「フォン・ノイマンの哲学」だ。 

科学で可能なことは徹底的に突き詰めるべきであり、目的のためなら原爆のような非人道的兵器でも許され、この世界には普遍的な責任や道徳など存在しない。 

彼をモデルにしたとされるキューブリック監督の『ドクター・ストレンジラブ』に登場するマッド・サイエンティストそのものである。あるいは、第1次世界大戦時のドイツで毒ガス開発に従事したユダヤ系の化学者のフリッツ・ハーバーを想起させるものがある。 

こんな人物が、第2次世界大戦での米国の勝利に多大な貢献をなしたのである。「戦後」の米国を支配した「合理主義信仰」の権化のような存在であった。 

数学で天才ぶりを発揮したが、「純粋数学」の分野はゲーデルに譲り、もっぱら実際的な問題解決に資する「応用数学」に注力した。限りなく工学分野に近い数学である。その天才的知性は、とてつもない記憶力をフルに活用した産物である。1日4時間睡眠でも可能だったのだ。 

原爆開発中に浴びた放射能が原因でガンになり、52年というけっして長くない人生を閉じたフォン・ノイマンだが、肉体的な苦しみについては伝わっていても、闘病生活と早すぎる死をどう内面的に捉えていたのかが、まったくわからない。少なくともこの本には書かれていない。おそらくフォン・ノイマン自身もなにも語っていないのでろう。

徹底的な虚無主義だったのだろうか? ほとんど共感というものを感じさせない「人間のフリをした悪魔」であった人物だが、現代に生きるわれわれはフォン・ノイマンの発明の恩恵を多大に受けているのである。 そのことは、けっして忘れてはならないことだ。

あらためてフォン・ノイマンという超天才の生涯をたどってみるのも意味あることだろう。少なくとも、わたしはひじょうに楽しみながらこの本を読んだ。 


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目 次
はじめに-人間のフリをした悪魔 
第1章 数学の天才 
第2章 ヒルベルト学派の旗手 
第3章 プリンストン高等研究所 
第4章 私生活 
第5章 第2次大戦と原子爆弾 
第6章 コンピュータの父 
第7章 フォン・ノイマン委員会 
おわりに 

著者プロフィール 
高橋昌一郎(たかはし・しょういちろう)
1959九年生まれ。ミシガン大学大学院哲学研究科修了。現在は、國學院大學教授。専門は、論理学・科学哲学。主要著書に『理性の限界』『知性の限界』『感性の限界』『ゲーデルの哲学』『自己分析論』『反オカルト論』『愛の論理学』『東大生の論理』『小林秀雄の哲学』『哲学ディベート』『ノイマン・ゲーデル・チューリング』『科学哲学のすすめ』などがある。


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