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2010年8月27日金曜日

猛暑の夏の自然観察 (1) セミの生態 (2010年8月の記録)




          
 「夏休みの自然観察」と書きたいところだが、いかんせん大人は夏休みではない。

 今年の猛暑が原因なのか、私がいま住んでいる千葉県船橋市では、ものすごい量のアブラゼミが発生していて連日鳴きちらしている。
 猛暑日が連続しているのとパラレルに、アブラゼミの鳴く日々も連日続いている今年の夏である。セミが鳴いていると余計暑さも感じられるので、疲労がさらに増す。
 東京都心と違って、ヒートアイランド現象はないようだが。

 お盆の頃がピークだったようで、これを書いている現在は、ツクツクボウシの鳴き声も混ざってきたためか、ピーク時のうだるような暑さと相乗効果になっていたアブラゼミの鳴き声も下火になりつつあるところだ。もちろん、まだまだセミの鳴き声はすさまじい。

 おかげで今年はセミの生態を、いあがおうでも観察する機会にめぐまれた。
 今回は、写真を中心に、セミの生態をアルバムにしておきたいと思う。つれづれなる随想もまじえながら。


空蝉(うつせみ)とはセミの抜け殻


 セミの抜け殻(cicada's shell)が建物の外壁に残っている。源氏物語にでてくる、空蝉(うつせみ)という古風な表現を思い出す。

 『源氏物語』第3帖「空蝉」。源氏と空蝉の歌のやりとりからきている。

空蝉(うつせみ)の身をかへてける木(こ)の下(もと)に 
 なほ人がらの なつかしきかな (光源氏)

空蝉(うつせみ)の羽(は)におく露(つゆ)の木(こ)がくれて
 しのびしのびに ぬるる袖(そで)かな (空蝉)


歌の大意(瀬戸内寂聴訳)

蝉が抜け殻だけを残し
去ってしまった木の下で
薄衣だけを脱ぎ残し
消えてしまったあなたを
忘れかねているこのわたし

薄い空蝉の羽に置く露の
木の間にかくれて見えないように
私も人にかくれて忍び忍んで
あなたへの恋の切なさに
ひとりないているものを

(出典:『源氏物語 巻一』(瀬戸内寂聴訳、講談社文庫、2007)

 源氏17歳、つれなくされた女との思い出である。

 東京の大塚には空蝉橋(うつせみばし)という橋がある。橋じたいは美しくも何ともないのだが、情緒のある命名である。


メタモルフォーシス(変態)

 セミは、バタフライ(蝶)と同様に、幼虫から蛹(さなぎ)を経て、脱皮して成虫になり空を飛ぶようになる。これをさして「変態」という。動物学の専門用語である。

 「変態」は、英語でいうと Metamorphosis である。ひらたくいえば transformation となる。ラテン語経由でギリシア語から入ったコトバである(< Gk metamórphōsis)。分解すれば、meta-、 -morphe、-osis となる。Morphe は形、形態。接尾語の -osis は、形成するという意味の接尾語。meta- はこの場合は after という意味か。もともとの意味は、形が作られたあと、となる。
 
 「メタモルフォーシス」といえば、古代ローマの詩人オウィディウス(Ovidius)の『変身物語』が有名である。原題は「メタモルフォーセス」でそのものずばり。「ナルキッソスとエコー」など変身(メタモルフォーシス)をモチーフとした神話が多数含まれるという意味と、ギリシア神話がローマに受け入れられて変容(メタモルフォーシス)という意味が掛け合わされている。

 フランツ・カフカの短編小説 Die Verwandlung は、日本語訳では『変身』となっている。ある朝、目が覚めたら虫になっていた男の話だが、さすがに「変態」と訳したら、動物学を知らない一般読者からは大いに誤解される可能性が高かったためであろう。ドイツ語の辞書を開いてもらえばわかるが、ちゃんと「変態」という訳が載っているはずだ。ほんとうはこの訳語のほうが。、意味としては正しい。

 カフカの小説においては、人間が甲虫に変態(変身)する。甲虫に変態(変身)した存在から振り返れば、外骨格をもたないので幼虫のような存在である。
 セミも、幼虫からさなぎを経て、外骨格をもつ甲虫としてのセミに変態(変身)する。

 セミは、幼虫として約3~11年間地中で過ごす(・・アブラゼミは6年間)。その前に、夏のあいだに枯れ木に生み付けられた卵は、翌年の梅雨時に孵化して地中に入る。気の長い話でありる。湿気がないとそのまま卵は死んでしまうらしい。


マオリ語でアブラゼミのことを「タタラキヒ」という!

 短い命を燃焼させるかのように、セミが鳴きまくっている。

 セミは英語で cicada (シカーダ)というと高校時代に習った。母音で終わる、スペイン語かイタリア語っぽい響きのコトバですね。英国みたいに寒い地域ではセミもいないはずだ。今年の日本は温帯というより亜熱帯だな。



 Wikipedia の記述によれば、「日本(北海道から九州、屋久島)、朝鮮半島、中国北部に分布し、人里から山地まで幅広く生息し、都市部や果樹園でも多く見ることができる」とある。千葉県の船橋市や鎌ヶ谷市は、梨の一大産地で果樹園が多いから、樹液を好むアブラゼミが多数生息しているのだろうか。

 しかし、アブラゼミの生息域がだんだんクマゼミやミンミンゼミにとってかわられているという。

アブラゼミは幼虫・成虫とも、クマゼミやミンミンゼミと比べると湿度のやや高い環境を好むという仮説がある。このため、都市化の進んだ地域ではヒートアイランド現象による乾燥化によってアブラゼミにとっては非常に生息しにくい環境となっており、乾燥に強い種類のセミが優勢となっている。東京都心部ではミンミンゼミに、大阪市などの西日本ではクマゼミにほぼ完全に置き換わっている

 もちろん例外もあるというが、いま私がいる地域は、その意味ではまだ都市化が進んでいないということうか。たしかにまだまだ畑も多く、土地が乾燥しているといった感じではない。

 また、セミと温暖化の関係については、地面の温度が関係しているという説がある。夏の暑さが厳しい地域はアブラゼミが生息しやすいらしい。

 ところで、wikipedia のアブラゼミの記述は、日本語版のほかは、現在のところ、英語とマオリ語(!)のみがwikipediaがある。生息域には朝鮮半島や中国北部も入っているのに、韓国人や中国人はなぜアブラゼミについて書かないのか不思議である。
 日本人は右脳で虫の鳴き声を聞いているという仮説が、かつては話題になっていたが、韓国人や中国人はセミの鳴き声をどうとらえているのか。いまはなき博品社から出版された『中国セミ考』という本をもっていたはずだが、どこにいったのかわからないので、参照できないのは残念。

 アブラゼミの翅(はね)は茶褐色で、木に止まっているアブラゼミはよく注意して観察しないと、識別しにくい。つまりはこの翅(はね)は保護色だということなのだ。



 参考のために、マオリ語のアブラゼミの記述を掲載しておこう。マオリ語とは、ニュージーランドの先住民マオリ族の言語である。そう、アブラゼミは南半球のニュージーランドにも生息しており、マオリ族はアブラゼミをさすコトバをもっているのだ!

>Tatarakihi
Nō Wikipedia Māori 

kua he species o Graptopsaltria te tatarakihi.

 マオリ語の文章なんて初めて見たが、アブラゼミのことは「タタラキヒ」というそうだ。
 説明文はこれだけだが、また、これを知ったところでどうなるということもないが、なんだかうれしい。

 英語版の記述は短いので一緒に紹介しておこう。アブラゼミは large brown cicada という。特定のコトバがないので、セミ(cicada)を形態模写しただけの表現である。

Graptopsaltria nigrofuscata

The large brown cicada is a species of cicada in the genus Graptopsaltria of the family Cicadidae found across East Asia, including Japan, the Korean Peninsula, and China, as well as in New Zealand. They are called aburazemi (アブラゼミ) in Japanese, and tatarakihi in Māori. The males make a loud chirping that ends with a click caused by a flick of the wings.

Description
Large brown cicadae are usually about 55 to 60 mm long, having a wingspan of roughly 75 mm.


 これにくらべれば日本語の記述はさすがに充実している。

 アブラゼミに限らず、セミの生態は実はよくわかっていないらしい。なにせ地中生活が6年以上と長く、観察もきわめて困難である。成虫になってからも、寿命が短い。



命短し恋せよ乙女、もとい、命短しセミよ鳴け?

 やたらセミの死骸が落ちている。踏みそうになった。



 それにしても不思議なのは、セミは死ぬと手足を折りたたんで仰向けになって斃れていることだ。まるで、エジプトのミイラのように、胸の前で両手をクロスさせている。
 死ぬ間際のセミは、仰向けになって手足を折ったり伸ばしたりしているが、徐々にチカラが尽きて死んで行く。



 アリの一群がセミの死骸を運ぼうとしているシーンに遭遇する。立ち止まって腰をおろして観察していると、セミの大きさに比べてアリのなんと小さいことよ。チームワークを発揮してなんとか運ぼうとしているのをみると、お疲れさんという気分になる。君たちのおかげで処理してくれるわけだ。

 アリの処理能力にも限界か、手つかずのままのセミの死骸があちらこちらに放置されたままになっている。
 いずれ風化され、バラバラになり、バクテリアが分解して再び土に戻っていくのである。
 土から這い出て、また土に還る。
 個体は死んでも、次世代への連続は確保され、種としては残る。

 すでに8月も下旬になるのに、鳴いてるセミはアブラゼミばかり。そろそろツクツクボウシが鳴いてもいい頃だと思うのだが・・・

 
 ところで、日曜日午後7時半からの番組、NHK「ダーウィンが来た-生き物新伝説-」を毎週楽しみにしているが、ほんとうに面白い知的エンターテインメント番組だ。そうとうなカネと時間をかけて作成している番組で、世界中の自然の驚異をお茶の間で見ることのできる知的エンターテインメントになっている。

 そこまでいかなくても、自然はごく身近で観察すればカネはかからない最高のエンターテインメントだ。
 夏場のセミも然り。今年の夏のセミは、いやがおうでも意識せざるを得ないほどの大量発生であったように思う。

 さて、古い殻を脱ぎ捨てて、次のステージに進まねばならないか。




 次回は、(2) ノラネコ の観察につづく



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