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2010年11月16日火曜日

書評 『仕事ができる人の心得』(小山昇、阪急コミュニケーションズ、2001)




空理空論がいっさいない、著者の実践から生まれた「実践経営語録」

 自社の社員向けに作られた「経営用語解説」を、著者自ら編集したものだという。

 著者は現役の中小企業オーナー経営者、中小企業の経営者教育の分野でも有名な実践派である。いわば「小山昇経営語録」を、辞書のように「あいうえお順」に並べ替えたものだ。
 ただ、タイトルはもっと工夫したほうが、さらに多くの人が手にとるのではないか、とも思う。おそらく研修用テキストだから、書店で手にとって購入する人はそう多くないからかもしれない。

 この本を、もし私が新入社員の頃に上司や経営者から読めといわれても、「読んでも意味がよくわからないし、あまり面白くない本だ」と思って、うち捨てたままにしておいただろう。20歳台のビジネスパーソンにとっては、この本は「自己啓発本」ではないかもしれない。地味な装丁で、内容も地味な小型の本で、これといったキャッチがいっさいないからだ。
 ビジネスマンになってからすでに25年、中小企業の経営にも携わった経験をもつ私からみれば、「当たり前のことが当たり前にかいてある」と思いながらも、「いや、これだけ含蓄のある、しかもストレートなコトバを吐ける社長って、なかなかいないんじゃないか?」とも思うのである。
 「当たり前のことを当たり前にやる」ことの難しさと、しかもそれを実行したときにあらわれるスゴイ効果については、私自身も自分のビジネス上の実体験からも断言できる。

 実は、この本の存在はまったく知らなかたのだが、最初のページから最後のページまで、すべて通読してみて思ったのは、「しまった、もっと早く知っていれば、自社内の社員研修に使えたのに・・・」という後悔とも、賞賛ともつかない思いだった。
 何気ないコトバは著者の体験から生み出されてものばかりであり、読んでいてハッとしたり、ギクっとすることも多い。机上の空論がいっさいない、すべて著者の実践から生まれたコトバばかりである。一つ一つナルホドとうなづきながら読んでいたら、けっこう時間がかかってしまった。

 この本は、オーナー経営者自身が、日頃なにを思っているかを、エッセンスをすべてさらけだした本であり、また経営者自身が自らを戒める本でもある。
 そして、著者自身が「正しい使用法」として推奨しているように、社内研修で使用すべきテキストである。仕事経験の短い若者には、かつての私ではないが、おそらく読んでもピンとこないだろうし、一人でひそかに読んで効果がでてくるような内容の本でもない。
 コトバの意味を、浅い深いはあろうが、それぞれの仕事上の具体的な経験、シチュエーションに会わせて、複数の人間のあいだで読み合わせていくことが、一番の近道であるはずだ。

 もちろん自分用に一冊手元において、折に触れパラパラとめくったページにでてきたコトバをじっくり読んでみることも大きな効果がある。かならずや、「気づき」と「自戒」の思いを抱くはずだろう。そしてその地道な一歩一歩の積み重ねの結果、「仕事ができる人」になっていくのである。
 「仕事ができる人」は成長しつづける人のことでもある。あくまでも仕事をつうじてPDCAのサイクルをまわしていくことだ。このC(=チェック)において、この本が役にたつことだろう。

 「仕事ができる人」になりたい人は、どの年齢層の、どの階層の人でも、かならず一冊手元においておきたい本だ。とくに中堅中小のオーナー企業に勤務する人にとっては必携だろう。
 これで一冊で1,000円(+消費税)とは驚きの価格設定だ。それだけ中身の濃い本である。


<初出情報>

■bk1書評「空理空論がいっさいない、著者の実践から生まれた「経営語録」」投稿掲載(2010年4月20日)
■amazon書評「空理空論がいっさいない、著者の実践から生まれた「経営語録」」投稿掲載(2010年4月20日)

*再録にあたって一部加筆修正。




著者プロフィール

小山昇(こやま・のぼる)

1948年、山梨県出身。株式会社武蔵野代表取締役社長。情報ツールを活用した独自の経営革命によって飛躍的な業績向上を実現、経営者・管理職を中心に注目を集めている。1999年「日本メッセージング協議会会長賞」、2000年「経営品質賞」受賞。『強い会社をつくりなさい』(阪急コミュニケーションズ、2006)、『社長儲けたいなら数字はココを見なくっちゃ!』(すばる舎、2007)など著書多数。