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先日、バンコクに久々にいってまず感じたことは、新しい国際空港であるスワナンプーム空港の匂いについてだ。
その昔、ドンムアン空港がタイの玄関口だった頃、飛行機を降りて空港に入るやいなや鼻をつく、かびたような、饐(す)えた匂いが、まずバンコクにから受けた歓迎の挨拶だった。
2006年9月にスワンナプーム空港が開港して以降は、新しい空港設備なので匂いがないから、「ドンムアンが懐かしい」などと戯れに口にすることもあったのだが・・・。
こちらが心配するまでもなく、新しい空港にもタイ特有の匂いがつき始めていたのである。
タイだからナンプラー(魚醤)の匂いなのだろうか? 成分分析したわけではないので、正確にはわからないのだが。
韓国のソウル空港もそうだ。ここのところしばらく行っていないので、新しいインチョン(仁川)国際空港がどうなのか、はっきりしたことはいえないが、かつての空の玄関口ソウル空港の匂いは、まさに韓国といった匂いを充満させていたものだ。
人によっては唐辛子の匂いだというが、私は個人的には、朝鮮人参の粉末が空気中に充満した臭いだと考えている。
インド人はカレー臭いともいわれる。これはなんとなく理解できる話だ。
日本人はたくあん臭いとか、しょう油臭い、味噌臭い・・?
こんなことをよくいわれても、当の日本人にはよくわからない。そのようにいう外国人たちも、正確にしょう油や味噌の匂いを知っていていってるのかどうかも疑わしい。
五感のなかでもっとも原始的でかつ根源的な嗅覚は、もっと重視していい知覚である。どうしても視覚が中心に、このほか聴覚、触覚、味覚・・となるのだが。
子どもの頃に、光化学スモッグで鼻をダメにしてしまっている私でも、気づく匂いがある。異臭はもちろんのこと、香しい匂いもである。もっとも、香しい匂いも、異臭とは紙一重かもしれないが。
嗅覚を意識的に鍛えるには、ソムリエや香水師でも目指すのが一番だろうが、一般人にとっても簡単に鍛える方法はある。
もっとも簡単なのは、自ら「異臭」を求めて海外に旅をすることだ。
経営コンサルタントの大前研一とユニクロ会長の柳井正の共著タイトルではないが、私も「この国を出よ!」といっておいきたい。
外に出るだけで、五感を鍛えることができるわけだ。
とくに東南アジアや南アジアであれば、季節には関係ない。
そして五感をつうじた体験こそが、人生にとってはもっとも重要なことなのである。
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書評 『この国を出よ』(大前研一/柳井 正、小学館、2010)
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(2012年7月3日発売の拙著です)
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