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2011年9月16日金曜日

『鉄人を創る肥田式強健術 (ムー・スーパー・ミステリー・ブックス)』(高木一行、学研、1986)ー カラダを鍛えればココロもアタマも強くなる!


 わたしが20歳台にもっとも影響を受けた本の一冊を紹介します。『鉄人を創る肥田式強健術 (ムー・スーパー・ミステリー・ブックス)』(高木一行、学研、1986)です。

 表紙には、「潜在する超パワーを引き出し、真健康とすべての武道の奥義を獲得する究極の秘術を初公開!!」 とあります。

 学研で「ムー」とかいったら、いかにもあやしい(!)という印象があるかと思いますが、中身はいたってまともです。現在でも入手可能なロングセラーの名著です。

 肥田春充(ひだ・はるみち 1883~1956年)は、実在の人物です。子どもの頃は虚弱児で「茅棒」(かやぼう)とあだ名をつけられたほど、やせて貧弱なカラダで病気がちなためいつもいじめられていたそうですが、18歳のときに本人曰く「決死的発奮!」をして肉体を鍛えるための方法論を試行錯誤で発見したという人。

 床板を踏み抜いてしまったり、三つの大学の4学部を同時に卒業したり、軍隊ではあまりの気迫に上官は一度も手をだせなかったとか、まさに「鉄人」の名のとおりのエピソードも残していますが、それだけにとどまらず「哲人」の域をも超えた「超人」としかいいようがないエピソードの数々を残すまでに至ったそうです。

 残念ながら、わたしは「超能力」は身についていないですが、この本で紹介された「強健術」は「健康法」として実践する価値は大いにあります。

 とくに、肥田式強健術の極意といわれる 「聖十字架型操練法」 など、寝ながら(!)でもできる健康法もあるので、病弱や寝たきりの方にも実践可能。

 まずは、健全なカラダつくりから始めること。哲人よりも鉄人。

 肥田式強健術を一言でいえば「中心」つくり。「正中心」とか「聖中心」とか表現していますが、この「中心」を体得したことが「超能力」につながる道を切り開いたようです。別の表現を使えば、「軸」や「背骨」となりましょうか。しかし、肥田春充の「中心」というコトバは、日本の武道や芸道でつかう「臍下丹田」(せいかたんでん)に連なるものがあるようです。

 高木一行氏のまとめでは「正中心」は以下の4つに要約されます。

1. 腰を反って腰と腹に等分の力を入れる
2. 上体絶対柔軟
3. 重心を両足の中央に落とす
4. 上体垂直

 これが、肥田式強健術の最大条件であり、唯一の根底である、と。日本の武道や芸道のカラダそのものですね。

 写真でみる肥田春充のカラダは、見た目はポテっとしてますが、伝統芸能の「日本的身体」とまったく同じで、臍下丹田のチカラはものすごいものがあるわけです。呼吸法もふくめて、すべてに通じるものがあるといっていいでしょう。ボディービルのような、見た目はスゴクてもじつは脆い筋骨隆々のカラダではまったくありません。  

 肥田式強健術とは「中心」を鍛えるメソッドなのですね。余計なことをゴタゴタ書くよりも、目次を読んでいただけば、どういう内容の本かわかると思います。


目 次

第1章 肥田式強健術は鋼鉄の肉体と超人パワーを生み出す

 肥田式強健術は東洋古来の“丹田”を発展させた絶対健康の秘鍵だ!
 正中心をつくり中心力を得れば超人的潜在パワーは思いのままだ
 肥田式強健術は虚弱体を男性美あふれる鋼鉄の体に改造一変する!
 肥田式強健術を使えばあらゆる武術の修得がスピードアップする!
 肥田式強健術は70歳を超えてまでも体力、気力、精神力を豊かに保つ!
 肥田式強健術は頭脳を明晰にし、記憶力を高める!
 肥田式強健術の修練で演劇、舞踏の極意が体得できる!
 肥田式強健術は悪筆を直す!
 肥田式強健術は荒くれ者の口を封じるほどの雄弁の才を提供する!
 肥田式強健術の修練はノイローゼ、吃音症を治す!
 肥田式強健術で精神的悟りの境地に入れる!
 肥田式強健術で人生最高の聖境が体得できる!

第2章 正中心をきわめる秘伝強健術を創始した超人・肥田春充

 虚弱体を恥じ18歳で決死的発奮をする
 完全なる理想的人体を得るシステムとはなにか?
 猛練習を通じて西欧の体操法に日本武道の精華を折り込む
 鍛え上げられた春充の肉体は軍隊の上官さえも畏怖させた
 円満無限の聖なる力を体得、杉の八分板を軽く踏み抜く!
 強健術を志して22年、40歳にして心身修養の妙諦“正中心”を体得する!
 「満身これ肝」春充の大喝が極右極左を平伏させた!
 まさに割腹寸前“正中心の宗教真理を書き遺せ”の天啓が下る!
 62歳から10年間、宇宙大学と称する実践研究に没入する
 正中心の体得はついに春充に超能力を与えた!
 超能力と天真療法で病の床に臥す人々を救う!
 前人未到の大悟の極致に達したとき、春充は決然として死を選択した

第3章 肥田式強健術修得の伝法

 肥田式強健術の練磨は1日わずか10分で十分!
 正中心とはなにか?
 肥田春充教示事項
 純自然体休養姿勢
 正中心鍛練の型
 腹胸式呼吸法
 (甲)腹式
 (乙)胸式
 簡易強健術
 正中心腰腹練修法
 聖十字架操練法

第4章 真食養と天真療法で虚弱体質が、メキメキ治る!

 低劣な人間の栄養知識を排し、生命力あふれる自然を食べよ
 真食養の第1要件=質の完全
 真食養の第2要件=分量の適度
 真食養の第3要件=摂取方法
 純健康の3大要素とはなにか?


著者プロフィール

高木一行(たかぎ・かずゆき)

様々な瞑想法、健康法、能力開発法、武術等について、約30年に渡り深く研鑽を積み、かつては雑誌への寄稿、単行本の出版、不特定多数の人々を対象としたセミナー等を通じての啓蒙活動に従事。その後世間との接触を断ち、心身錬磨のトレーニングと並行して、長短の断食を行ない、シャーマニックな修業を試み、深山にこもり、あるいは南海の珊瑚礁や国内外各地の聖地に身をおいて感覚を開放するなど、豊かな心身修養ライフを楽しみつつ今日に至る。ヒーリング・ネットワークというヴィジョンの元、いやしのアートを分かち合う活動を2009年より開始。広島県在住。(http://www.healing-network.com/hn_con より引用)。


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<書評への付記>

肥田春充の思想的・精神的バックボーンと日本型キリスト教関係者たち

 『メイド・イン・ジャパンのキリスト教』(マーク・マリンズ、高崎恵訳、トランスビュー、2005)の「第5章 自己修養の道」の「2. 川合信水と基督心宗教団」で取り上げられた川合信水(かわい・しんすい 1867~1962)は、肥田春充の実兄である。

 この本には肥田春充にかんする記述はいっさないのが残念だが、肥田春充がなぜ郡是製絲株式会社(=現在のグンゼ株式会社)で強健術の指導を行うことになったのかを考えるヒントにはなる。それは、キリスト教指導者であった川合信水が、郡是製絲株式会社から請われて教育部長として着任し、女工を中心とする労働者の指導にあたっていたことからだろう。

 そもそも郡是製絲株式会社は、グンゼ株式会社の社史によれば、創業者・波多野鶴吉(1858~1918)が地域産業振興を目的に京都府何鹿郡(現京都府綾部市)に設立した会社だ。わたしの生まれた舞鶴にも近いので親近感を感じる。

 波多野鶴吉は、キリスト教の理念で会社経営を行った経営者である。この意味において、鐘紡(=現在のカネボウ)の武藤山治や倉敷紡績(=現在のクラボウ)の大原孫三郎ほど有名ではないが、もっと知られてしかるべき存在かもしれない。

 労農派の経済学者で経済史家であった土屋喬雄の名著 『日本経営理念史(新装復刻版)』(土屋喬雄、麗澤大学出版会、2002 原著 1964・1967)の「第三部 キリスト教倫理を基本とする経営理念」の「第二章 波多野鶴吉の経営理念」によれば、会社設立の6年前からすでに同志社の伝道でキリスト教徒となっていた波多野鶴吉は、明治42年(1909年)に東京で独立伝道をしていた川合信水牧師を職工教師として招聘しただけでなく、みずからも川合信水の教えを受けて自己の修養に努めたらしい。

 招聘されてはじめて面談したとき、川合信水は波多野鶴吉にこう言ったという。「職工を善くしたいと思うなら先ずあなたご自身がよくならなければなりません」。その結果、社長以下すべての従業員の修養団体のようになったという。「女子寮」というコトバと実体をつくったのも波多野鶴吉が初めてのようだ。「模範工場」としても知られていた。

 かの有名な『女工哀史』(細井和喜蔵、岩波文庫、1954 改版 1980)が最初に単行本として改造社から出版されたのが 1925年(大正14年)のことであるから、波多野鶴吉のキリスト教理念を徹底した工場経営がいかに時代をはるか先にいくものであったかが理解できるだろう。波多野鶴吉の「模範工場」は、同じく紡績工場を舞台にした『あゝ野麦峠』(山本茂実、1968)が描いた時代よりもあとの時代になる。

 「肥田式強健術」の極意の型といわれるものに「聖十字架操練法」という技法があり、また「聖中心」というターミノロジーの点からいっても、日本型の「精神修養」をバックボーンとしてもちながらも、実兄の影響でキリスト教の影響も受けていたといえるのではないだろうか?

 『メイド・イン・ジャパンのキリスト教』にはこういう記述がある。

宣教師が日本の宗教性を否定して喧伝した排除型神学とはまったく対照的に、川合は、儒教や仏教の伝統には、キリスト教徒の生活に取り入れることのできる高い価値があると訴えた。基督心宗教団で、瞑想と強健術(瞑想と並んで重要な身体訓練と修行の形態)が霊的成長の重要な方途となったのはそれゆえである。(P.115) (*太字ゴリックは引用者=わたしによる)

 なお、『メイド・イン・ジャパンのキリスト教』には、東京・小石川の「学生修道院」で強健術の早朝修行を行う学生(1925年)という写真が挿入されている(P.116)。「学生修道院」」で肥田春充が指導している別の写真は『鉄人を創る肥田式強健術』にも挿入されている。

 『鉄人を創る肥田式強健術』の P.43 には、押川方義(おしかわ・まさよし)を間に春充と実兄の川合信水という写真が挿入されている。 押川方義(1852~1928)もまた日本型キリスト教を代表する人物の一人である。

 肥田春充の信仰は正確にはわからないが、こういった点からいっても、実兄の川合信水の影響はきわめて濃厚なものであったことが推測されるのである。

 神道系でも、仏教系でもないところが興味深い。





<関連サイト>

ヒーリング・ネットワーク・・本書の著者・高木一行氏が主催する心身修養の活動。なお、「ヒーリング・ムービー」と題したビデオ映像には、No.8 に肥田式強健術のものがある

「聖中心道 肥田式強健術」(YouTube映像 音声なし モノクロ映像 昭和11年 1936年 54歳)
・・郡是製絲株式会社(=現在のグンゼ株式会社)にて



<ブログ内関連記事>

書評 『メイド・イン・ジャパンのキリスト教』(マーク・マリンズ、高崎恵訳、トランスビュー、2005)
・・「第5章 自己修養の道」の「2. 川合信水と基督心宗教団」で取り上げられた川合信水は、肥田春充の実兄である。この本には肥田春充にかんする記述はいっさいないのが残念だが、強健術の精神的背景を知る上では必読であろう

「プリンシプルは何と訳してよいか知らない。原則とでもいうのか」-白洲次郎の「プリンシプル」について
・・中心、軸、背骨、プリンシプル...

グンゼ株式会社の創業者・波多野鶴吉について-キリスト教の理念によって創業したソーシャル・ビジネスがその原点にあった!
・・この記事をもとに経営理念の側面に焦点をあてて波多野鶴吉の理念について書いたもの


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