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2011年10月26日水曜日

スティーブ・ジョブズの「読書リスト」-ジョブズの「引き出し」の中身をのぞいてみよう!


 先日56歳の若さで亡くなったスティーブ・ジョブズ氏は、会社経営者ではありましたが、独創性のかたまりで、ある意味では「革命家」といってもよい存在でした。

 若き日にインドを放浪し、仏教徒になって禅仏教に傾倒していたことは、最近よく知られるようになってきたといってよいでしょう。

 では、ジョブズ(・・以下、敬称略)の「発想の源泉」は、ほかにはどんなところにあったのか? 手っ取り早く知るには、どんな本を読んでいたかをみるのが一番ですね。

 「蔵書をみれば、持ち主のアタマの中身がわかる」とはよく言われるところです。

 残念ながらジョブズの蔵書は公開されていませんし、「断捨離」の ZEN ライフを実践していたジョブズのことですから蔵書はもたない主義だったかもしれませんし、電子ブックとして iPad でしか読まなくなっていのかもしれません。したがって、詳細は現在のところわかりません。

 ただ、面白い記事がウェブ上に公開されてますので紹介したいと思います。

 The Steve Jobs Reading List: The Books And Artists That Made The Man というタイトルの記事です。日本語なら「ジョブズの読書リスト-この男をつくった本とアーチストたち」となるでしょうか。

 この記事の冒頭に引用されているジョブズのコトバ "I like living at the intersection of the humanities and technology."(人文科学とテクノロジーのインターセクションで暮らすのを好んでいる)に端的に表現されているように、ジョブズがテクノロジーと人文学の両分野で本を読み込んでいたことがよくわかる読書リストです。

 では、この記事にあげられている書名について、具体的に一冊一冊について見ていくこととしましょう。

●Clayton Christensen's "The Innovator's Dilemma
『イノベーションのジレンマ-技術革新が巨大企業を滅ぼすとき-(増補改訂版)』(クレイトン・クリステンセン、玉田 俊平太=監修、伊豆原 弓訳、 翔泳社、2001)
・・これは言うまでもなく、研究開発型企業の関係者の必読本。ジョブズはなんどもなんども読み込んでいたようです。

Ron Rosenbaum's 1971 Esquire article "Secrets of the Little Blue Box"
・・これはウェブ上にアップされていますので、http://www.lospadres.info/thorg/lbb.html から読むことができます。また、“Secrets of the Little Blue Box”The 1971 article about phone hacking that inspired Steve Jobs. という記事も参照。

英文学
ジョブズのコトバが引用されています。
"I started to listen to music a whole lot, and I started to read more outside of just science and technology -- Shakespeare, Plato. I loved King Lear,"Moby-Dick" and Dylan Thomas'."

「読書にかんしては、サイエンスとテクノロジー以外の世界-シェイクスピアプラトンも読んだ。『リア王』、『モビー・ディック(白鯨)』、それにディラン・トーマスの詩が好きだ」(ジョブズ)
・・シェイクスピアのなかでも『リア王』が好きだという人はあまり聞いたことがないですが、「追放された王」というリア王の物語は、なんだか意味深な感じもしないでもありません。


Shunryu Suzuki's "Zen Mind, Beginner's Mind"
『禅マインド ビギナーズ・マインド』(鈴木俊隆 、松永太郎訳、サンガ、2010)

・・2010年に日本語訳がでました。鈴木俊隆老(すずき・しゅんりゅう)師は、サンフランシスコ禅センターを中心に活動していました。ジョブズの禅の先生の一人ですね。


Chogyam Trungpa's "Cutting Through Spiritual Materialism"
『タントラへの道-精神の物質主義を断ち切って-』(チョギャム・トゥルンパ、めるくまーる、1981)

・・チベット仏教の僧侶による英語の説教。日本語訳は入手不能です。「読書リスト」にはチベット仏教の本もこの一冊あげられていますので、ジョブズはあえて禅仏教を選び取ったのだということがわかります。米国では禅仏教とチベット仏教が仏教では二大勢力。後者ではリチャード・ギアが有名です。 


Paramahansa Yogananda's "Autobiography of a Yogi"
『あるヨギの自叙伝』(パラマハンサ・ヨガナンダ、森北出版、1983)

・・とくにこの本は、ジョブズが生涯のあいだに、なんどもなんども読み返し読んだ本だそうです。iPad2 に唯一ダウンロードしていた本だとか。わたしは読んだことがありませんが、amazon のレビューでは高評価を得ていますね。


"Be Here Now"
『ビー・ヒア・ナウ―心の扉をひらく本-』(ラム・ダス、ラマ・ファウンデーション、吉福伸逸/スワミ・プレム・プラブッタ/上野圭一訳、平河出版社、1987)

・・「いま、ここに」というのは、刹那を重視する仏教の教えでもあります。ジョブズのマインドセットを規定していた思考がうかがえます。


"Diet for a Small Planet" by Frances Moore Lappe
『小惑星のためのダイエット』(フランセス・ムーア・ラッペ)
・・日本語訳はまだないようですが、英語版はすでに出版から20年以上たっているようですね。ぜひ読んでみたい本です。


Arnold Ehret's "Mucusless Diet Healing System"
『無粘液ダイエット・ヒーリング・システム』(アーノルド・エアレット)
・・この本も、日本語訳はまだないようですね。わたしも中身については知りません。断食好きなジョブズらしいチョイスです。


 「ジョブズの読書リスト」、みなさんはどんな感想をお持ちですか?

 正直いって、かなり異質な「変わり者」ではないかという印象を受けませんか?

 禅仏教の本やインド関係の本など、とともに、いかにも1960年代から1970年代の西海岸の影響のなかにどっぷりと浸かっていた人だなあという印象を持ちますね。断食やダイエット関係の本もその延長線上にありそうです。

 若い日の読書として、プラトンの対話編や、シェイクスピアの『リア王』やメルヴィルの『白鯨』などの英文学もあがっていますね。これらはみな若い頃の読書です。

 つまるところ、ジョブズの発想の源泉はビジネス書ではない、ということですね。

 ビジネス書だけ読んでるようじゃ、ジョブズみたいにはなれないということですね。すくなくともジョブズのような独創的な発想はでてこない。もちろん、ジョブズは経営者でありながら、ビジョナリー的要素の強い人であったわけですが。

 ビジネス書をいくら読んでも、人間の中身は形成されないということでしょう。ビジネス書は、あくまでも「術」を書いた本にすぎませんから。人間の生き方にかかわる「道」を説いた本は、ビジネス書にはあまりないといっても言い過ぎではないでしょう。すくなくともジョブズが読んでいたのは、いわゆる「自己啓発本」ではありません。もっと深いレベルの本です。

 誰もがジョブズになれるわけではありませんが、「人文科学とテクノロジーのインターセクション」というジョブズのコトバ、ぜひ若い人たちには味わってほしいものだと思います。豊かな体験や、人文的教養があってこそ、ビジネスの発想力も生まれてくるのです。

 それにくわえて、経営学をはじめとする「社会科学」が加わってきますが、ビジネス書も自己啓発書は別として、経営書のレベルまでいけば、立派な社会科学書ということができるでしょう。

 くれぐれも、ビジネス以外の本はまったく読んだことがないという「つまらない人」になってしまわないように! ちょっと変わっているくらいでいいのです。

 ジョブズがいう "Think different" という発言の背景に何があるのか、すこしでも参考になったのであれば幸いです。





<関連サイト>

日本人が知らないアメリカ起業哲学の源流 アイン・ランドは何を説いたのか (脇坂あゆみ :翻訳家、東洋経済オンライン、 2016年1月18日)
・・「スティーブは大きなことをして成功したいと思っていたし、ちゃんとした儲かる会社を興すことがそのための道だと考えていた。そしてそういう方向に進んでいった。彼という人物のなかでその部分はずっと変わらなかった。(・・中略・・) 彼は最終的に求めるものが違っていた。会社を興して成功したがっていた。指南書みたいな本も読んでいた。当時彼が話していたのは『肩をすくめるアトラス』とかだったかな。彼にとって本は世界で違いを生み出すためのガイドブックだった。で、それは会社を興すことから始まった。製品を作って利益を出す。その利益を投資してもっと利益を出す、さらにいい製品を作る。どれだけいい会社かは、利益によって測られるってね」、とアップル創業時の盟友ウォズニアックはジョブズの死に際して語っているという。
『肩をすくめるアトラス』は、アメリカの哲学小説家アイン・ランド(Ayn Rand)が1957年に発表した小説。ビジネス関係者や起業家に絶大な影響を与えてきたという。

(2016年1月18日 項目新設)


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書評 『インド 宗教の坩堝(るつぼ)』(武藤友治、勉誠出版、2005)-戦後インドについての「生き字引的」存在が宗教を軸に描く「分断と統一のインド」

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(2014年9月1日、2015年2月9日、9月5日 情報追加)




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