1911年10月10日、革命家・孫文たちによる 「辛亥革命」(しんがい・かくめい)が始まった。いまからちょうど 100年前のきょうだ。
この日から約2ヶ月後に清朝は滅亡し、翌年 1912年1月1日に、孫文を臨時大総統(・・大統領ではない、"大総統")にして中華民国が成立することになる。
これを記念して、ちょうど100作目となる映画『1911』を製作・監督したのがジャッキー・チェン(李成龍)だ。カンフー映画でも、アクション映画でもなく、歴史、しかも中国現代史を描いた超大作である。100作目の映画が、ちょうど革命から100年目というキリのいい数字と重なる。
構想10年、総製作費30億円という歴史エンターテインメント超大作 は、中華圏ではすでに9月29日(木)から公開されている。
ところが、日本公開は、11月5日(土)までおあずけ。なんてバカなことをしているのだ、日本の興行界は!?
革命記念日である10月10日にあわせて公開しなくちゃダメじゃないか! 10月10日は、台湾(=中華民国)では「双十節」という国慶日(=建国記念日)で、しかも今年は「中華民国建国百年」あるから、中国共産党に配慮したということだろうか? 憶測は意味はないことだが。
日本版の予告編と中文版の予告編を比較してみると、日本版の予告編は、あいもかわらぬ情緒的、感傷的な日本人向けコピーに充ち満ちている。「歴史に残らなかった<命>の物語」だそうだ。映画の宣伝プロモーションにはその市場向けのローカライズが必要とはいえ、なんだかよくわからないコピーである。
中国では、歴史イコール政治、政治イコール命がけ、ということがどこまでわかっているのだろうか? 映画の見方は一つだけではないのだが、それにしてもこのコピーでは、さらなる誤解を日中間で再生産するだけなのではないだろうか?
とにかく、予告編を比較してみておくことをお奨めしたい。以下に列挙しておいた。
◆日本版予告編(YouTube映像)
◆外国版予告編(英文・中文字幕)(YouTube映像)
◆香港版(中文字幕)(YouTube映像)
基本的に歴史エンターテイメント作品なので、見るのを楽しみにしているのだが、この作品を見ることによって、製作・監督にあたった香港人ジャッキー・チェンの歴史観・政治観を知ることもできるだろう。
「辛亥革命」以後の100年とは中国現代史であるとともに、日中関係の歴史でもある。
そして、孫文と辛亥革命というシンボルは、現在台湾にある中国国民党にとっても、中国本土を統治する中国共産党にとっても、共通のシンボルである。事の是非は別にして、「国共合作」というコンセプトの根拠ともなりうるシンボルなのだ。
歴史を知らないで現代を語るのはきわめて危険である。繰り返すが、現代中国史とは日中関係の歴史でもあり、近現代の中国史は、日本人にとってはけっして無縁なものではない。
革命にために膨大な軍資金を提供した実業家・梅屋庄吉をはじめ、玄洋社の頭山満(とうやま・みつる)や宮崎滔天(みやざき・とうてん)など、多くの日本人が直接かかわった「辛亥革命」。1911年は明治44年である。
「辛亥革命」への日本人のかかわりが、ジャッキー・チェンの映画ではどう描かれているのかいないのか、香港・日本の合作映画 『宋家の三姉妹』(1997) との違いはなど、気になるところだ。
とりあえずは、一ヶ月後の 11月5日の日本公開を待つこととしよう。
<関連サイト>
宗家の三姉妹(宗家皇朝 The Soong Sisters)
SOONG SISTERS_Trailer
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(2016年7月27日 情報追加)
(2012年7月3日発売の拙著です)
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