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2012年3月21日水曜日

『新京成電鉄-駅と電車の半世紀-』(白土貞夫=編著、彩流社、2012)で、「戦後史」を振り返る


『新京成電鉄-駅と電車の半世紀-』(白土貞夫=編著、彩流社、2012)は、千葉県北西部を南北につなぐ新京成電鉄の歴史を豊富な写真資料をつじて「戦後史」を振り返ることのできる本だ。

たまたま新京成線の沿線にいま住んでいるので、こういう本が目に入ってくるのだが、熱心な鉄道ファンをのぞけば、そうでない人にとっては何の関心も呼び起こさないかもしれない。

この本じたい、松戸駅を起点に津田沼駅までの記述になっているのは、乗り入れ区間の京成線の千葉中央駅まで含んでいるからだと推察されるが、松戸にはほとんど縁のないわたしにとっては、反対向きにしてほしいという気持ちもある(笑)。

それはさておき、新京成電鉄にかんする本はひじょうにすくないので貴重な一冊であるといえよう。

『新京成電鉄沿線ガイド』(崙書房・竹島 盤=編、崙書房出版、1995)からはすでに17年もたっていたのである。ちなみに崙書房は流山市に本社のある千葉県の地方出版社である。

今回のものは、なんといっても写真集であるので、開業当時のレトロな昭和時代の風景がいい味だしているので見ているだけでも楽しいし、むかしの新京成については知らないわたしのような読者にとっては貴重な資料となっている。

すでにこのブログでも何度かこの沿線のことは取り上げているが、もともと新京成電鉄という名称は京成電鉄に「新」をつけたものである。とはいえ、京成電鉄が、成田詣での乗客目当てに、東「京」と「成」田を結ぶ目的でつくられた東西を結ぶ私鉄であるのに対し、「新」京成は千葉県北西部を南北に結ぶ路線である。

首都圏の鉄道網が東京環状線である山手線にある駅を起点として放射状に伸びていることから、千葉県内の鉄道も東京都と同じく東西方向が中心になっており、南北方向はあくまでも補助的な役割となっている。新京成と接続している路線は、JR総武本線、JR常磐線、JR武蔵野線、京成電鉄、東葉高速鉄道、東武野田線、北総線とじつに多い。

じっさい、津田沼から終点の松戸まで乗る乗客はあまり多くはないと思う。わたしも通しで乗ったのは一回限りである。それについては、"世界最小の大仏"を見に行ってきた・・そしてついでに新京成線全線踏破を実行  に書いた。

もともと新京成は、陸軍鉄道連隊の線路を、戦後に払い下げによって私鉄となったものである。「下野牧」の跡をたずねて(東葉健康ウォーク)に参加-習志野大地はかつて野馬の放牧地であった にも書いたが、習志野を中心とした下総は、もともと江戸幕府の馬の放牧場であったが、その広大な土地は明治になってからは陸軍の演習場となった。陸上自衛隊「習志野駐屯地夏祭り」2009に足を運んでみた を参照されたい。鉄道連隊もそこにおかれることになる。

鉄道連隊は、工兵隊のなかでも、占領地における鉄道の敷設と破壊を専門にした部隊で、かの有名な泰緬鉄道にもかかわっている。泰緬鉄道とは、泰(タイ)と緬(ビルマ)を結んだ鉄道で、『戦場にかける橋』で有名な鉄道だ。このほか、中国大陸や朝鮮半島だけでなく、日本内地でも訓練を兼ねて鉄道敷設を請け負っていたという。くわしくは『本当にあった陸自鉄道部隊-知られざる第101建設隊の活躍-』(伊藤東作、光人社NF文庫、2008)を参照されたい。

日本には、JR武蔵野線のように貨物路線として企画され建設されながらも、郊外人口の増大による旅客需要に対応するため進化したものもあるが、新京成は陸軍の鉄道連隊が旅客運搬に転じたものなのである。

沿線には、おもしろい駅名が多いのも新京成の特色である。

たとえば、鎌ヶ谷大仏駅。駅名に「大仏」が入るのは、日本全国でもこの駅だけだという。"世界最小の大仏"を見に行ってきた・・そしてついでに新京成線全線踏破を実行 ではじめて訪れてみた。

また、高根公団駅というのもめずらしいようだ。かつての住都公団が建築した高根公団の出入り口に建設された駅だが、新京成沿線にはこのほか住都公団による団地が多いのは、さきに見たように、陸軍の広大な演習地があったためである。さらにその前は馬の放牧場であった。本書には、それらの団地の昭和50年代の空中写真も収められている。

ことし2012年の正月には、御瀧不動尊にいってきたが、最寄り駅は滝不動駅という。駅じたいにはとくに風情はないが、東京都心にはないレトロな昭和時代をかもしだしている駅が新京成には多い。

わたしもいつまでこの地域にいるかはわからないが、もうすこし沿線を歩いてみたいと思っている。本書はその際のよいガイドとなるであろう。

もちろん大判なので、沿線歩きに持参はしないが。書斎で眺めるのにふさわしい一冊だ。








<ブログ内関連記事>

"世界最小の大仏"を見に行ってきた・・そしてついでに新京成線全線踏破を実行

書評 『京成電鉄-昭和の記憶-』(三好好三、彩流社、2012)-かつて京成には行商専用列車があった!

「下野牧」の跡をたずねて(東葉健康ウォーク)に参加-習志野大地はかつて野馬の放牧地であった

陸上自衛隊「習志野駐屯地夏祭り」2009に足を運んでみた

辰年(2012年)の初詣は御瀧不動尊(おたき・ふどうそん)にいってきた

映画 『レイルウェイ 運命の旅路』(オ-ストラリア・英国、2013)をみてきた-「泰緬鉄道」をめぐる元捕虜の英国将校と日本人通訳との「和解」を描いたヒューマンドラマは日本人必見!
・・鉄道連隊について触れておいた

書評 『鉄道王たちの近現代史』(小川裕夫、イースト新書、2014)-「社会インフラ」としての鉄道は日本近代化」の主導役を担ってきた

(2014年8月16日、2016年7月23日 情報追加)



(2012年7月3日発売の拙著です)









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